セミナー http://clinic-kuda.com/ ja-JP 2024-04-28T14:34:00+09:00 21 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0115 21 21<br />『 脳梗塞予防の原点 』<br />令和元年7月20日(土)<br />脳梗塞は、人口10万人に対して年間100人程度が発症していると推定されています。死亡率は、年間10万人対50人前後で、少しずつ低下する傾向にあります。しかし、後遺症を残してしまう事を多く、脳梗塞の発症をいかに抑えるかが重要になっています。<br><br><h2>脳梗塞の病型</h2><ol><li>アテローム血栓性脳梗塞</li><li>心原性脳塞栓</li><li>ラクナ梗塞</li><li>その他</li></ol><img src="img/20190902-01.png" class="mx-auto img-fluid d-block" alt="脳梗塞"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞は、その原因によって大きく3つに分類されます。動脈硬化を主な原因とするアテローム血栓性脳梗塞。心臓に原因がある心原性脳梗栓。脳内の小血管閉塞が原因のラクナ梗塞です。その他、脳静脈血栓、動脈解離、頸部の外傷、頚椎疾患、遺伝性疾患などが原因となる事があります。</div><br><br><br><h2>アテローム血栓性脳梗塞</h2>動脈硬化により、脳血管が狭窄あるいは閉塞する事で生じる脳梗塞。<br>発生機序には<br><ol><li>脳血栓</li><li>動脈・動脈塞栓症</li><li>血行力学的虚血</li></ol>がある。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />アテローム血栓性脳梗塞は、動脈硬化により生じた血管狭窄部に血栓が形成される事が原因の脳梗塞です。発生機序には、大きく分けて3タイプあり、閉塞した血管が血液を供給する領域に一致した部位に脳梗塞を生じる脳血栓。動脈にできた脳血栓が剥がれて下流の動脈を閉塞して生じる動脈・動脈塞栓症。脳内主幹動脈に高度狭窄や閉塞があり、脱水や血圧低下が加わる事で供給血液量が減少し<!--する事で-->生じる血行力学的虚血があります。</div><br><br><br><h2>心原性脳塞栓</h2>何らかの原因で心臓内に生じた血栓が剥がれて、脳血管を閉塞することで生じる。<br />原因疾患としては、心房細動などの不整脈・僧帽弁疾患・心筋梗塞などがある。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />心原性脳塞栓は、何らかの原因で生じた心臓内血栓が血流に乗って脳内血管に流れ、動脈を閉塞する事で生じる脳梗塞です。原因疾患としては、心房細動などの不整脈、僧帽弁疾患、心筋梗塞などがあります。</div><br><br><br><h2>ラクナ梗塞</h2>脳内主幹動脈から枝分かれした小血管が閉塞することで生じる脳梗塞。<br>脳深部に2〜15mm程度の大きさの病変が形成される。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />ラクナ梗塞は、脳内主幹動脈から枝分かれした小動脈が閉塞する事で生じる脳梗塞で、脳深部に2〜15mm程度の範囲の病変が形成されます。脳梗塞の範囲が狭いため、過去に一度も症状出現のない無症候性脳梗塞として見つかる事が多いのも、このタイプです。</div><br><br><br><h2>急性期治療</h2><ol><li><b>血栓溶解療法</b><br />発症4.5時間以内であれば、ヒト特異的組織プラスミノーゲン賦活体(rt-PA)静脈投与が実施される。</li><li><b>機械的血栓回収術</b><br />経皮的に動脈内にカテーテルを挿入し、特殊なデバイスで血栓を回収する。</li><li><b>抗血小板療法</b></li><li><strong>その他</strong></li></ol><img src="img/20190902-02.png" class="mx-auto img-fluid d-block" alt="急性期治療"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞急性期治療は、ここ10年で大きく変わってきました。まず、脳梗塞発症後、4.5時間以内で、一定の条件を満たす症例では、ヒト特異的組織プラスミノーゲン賦活体(rt-PA)静注療法が実施されます。また、発症後8時間以内であれば、特殊なデバイスを使用した血栓回収術が実施される事があります。閉塞した動脈が再開通すれば、神経症状が劇的に改善します。一方、途絶した血流が急激に再開する事で、その末梢に出血を生じてしまう事もあります(出血性脳梗塞)。抗血小板剤の投与(アスピリンやシロスタゾールの経口投与・オザグレルナトリウムの点滴静注)は、脳梗塞発症48時間以内であれば、後遺症の低減に役立つとされています。その他、抗凝固剤の投与、抗脳浮腫剤の点滴静注、脳保護剤の投与が実施される事もあります。</div><br><br><br><h2>慢性期治療</h2><br><ol><li>頚部頸動脈狭窄症に対する血行再建術<br />a.頸動脈内膜剥離術(CEA)<br />b.頚部頸動脈ステント留置術(CAS)</li><li>抗血小板療法</li><li>抗凝固療法</li><li>その他</li></ol><img src="img/20190902-04.png" class="mx-auto img-fluid d-block" alt="慢性期治療"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞慢性期には、再発予防のため、色々な治療があります。頸部内頚動脈狭窄は、アテローム血栓性脳梗塞の主要な原因のひとつです。一過性脳虚血発作や脳梗塞の原因となっている高度狭窄(70〜99%)では、血行再建術が実施される事があります。その手技として、外科的に血管内にできた肥厚内膜(アテローマ、プラーク)を摘出する頚動脈内膜剥離術(CEA)と血管内に留置したカテーテルを用いてステントを留置する頚動脈ステント留置術(CAS)があります。心原性脳梗塞を除く脳梗塞では、再発予防目的で、アスピリン・シロスタゾール・チクロピジンなどの抗血小板剤の内服が使用されます。心原性脳梗塞では、ワーファリンや新規経口抗凝固薬(NOAC)が有効です。その他、EPA製剤、脳循環代謝改善薬が使用される事もあります。</div><br><br><br><h2>健常者でのMRIの意義</h2><ol><li><strong>無症候性脳病変の検出</strong><br />ラクナ梗塞や中等度以上の大脳白質病変を有する人は、脳卒中(脳梗塞および脳出血)の発生率が3〜4倍になる。</li><li><strong>頚部頸動脈および脳内主幹動脈の閉塞・狭窄性病変の検出</strong></li></ol><img src="img/20190902-03.png" class="mx-auto img-fluid d-block" alt="MRI"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞の既往がない健常者でも、高齢になると、無症候性病変が多く見られるようになります。MRI検査で、ラクナ梗塞や中等度以上の大脳白質病変を持つ人では、脳卒中(脳出血や脳梗塞)を発症する危険性が、そうでない人の3〜4倍になるとされています。これらの異常は、加齢に加えて高血圧や糖尿病が主要因の脳内の小血管病変が原因と考えられています。また、脳内主幹動脈や頸部頚動脈の閉塞や狭窄性病変を見つける事ができます。これら血管の動脈硬化性変化は、アテローム血栓性脳梗塞の原因となる場合があります。</div><br><br><br><br><h2>脳梗塞予防の原点</h2><ol><li><strong>アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞</strong><br />●高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・メタボリック症候群では、動脈硬化が進行しやすい<br />●高血圧・糖尿病は、脳小血管病変の主要因と考えられている<br />●脱水の予防<br />●適量の飲酒<li><strong>心原性脳塞栓</strong><br />●原因となる心疾患の治療・血栓形成予防</li><li><strong>頭部MRI検査で見つかった異常への対応</strong><br />●抗血小板剤の投与など</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞の予防について原因別に整理すると、アテローム血栓性脳梗塞では、動脈硬化の予防が最も大切です。動脈硬化を促進する危険因子である高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・メタボリック症候群などの治療が第一になります。ラクナ梗塞でも、小血管病変の原因と考えられている高血圧・糖尿病の治療が基本になります。これらに加えて脱水があると、血液が濃くなり血栓を形成しやすくなるので、特に高齢者では適切な水分補給が重要です。さらに多量飲酒(300g/週以上)の習慣があると、脱水や血小板凝集促進(血液が固まりやすくなる)が起こり易く、脳梗塞を発症しやすいと言われています。心原性脳塞栓症では、原因となる心臓疾患を早期に見つけ、治療することが大切です。その他、MRI検査で見つかった異常に対して、抗血小板剤の投与が脳梗塞予防に役立つ場合があります。<br></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 20 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0110 20 20<br />『 認知症とまぎらわしい脳の病気 』<br />平成30年10月13日(土)<br />認知症の有病率は7〜10%と言われています。<br>特に、85歳では30%、それ以上では40%以上になると言われています。一方、認知症と似かよった症状となる病気もあり注意が必要です。<br>今回は、それらのうち、代表的な脳の病気について解説します。<br><br><br><h2>認知症とは?</h2><br><div class="row"><div class="col-lg-4"><img src="img/vol20img01.gif" class="mx-auto img-fluid" alt="認知症とは?"></div><div class="col-lg-8">脳疾患による症候群であり、通常は慢性あるいは進行性である。<br /><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />認知症は、生後いったん正常に発達した種々の精神機能が、慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態と定義されています。<br>具体的には、記憶力低下・見当識障害・理解力低下などの症状が出現します。</div></div></div><br><br><h2>認知症の疾患別内訳</h2><br><div class="row"><div class="col-lg-5"><br><table class="table table-responsive table-hover"><tr><td>アルツハイマー型認知症<td>50〜65%<tr><td>血管性認知症<td>10〜20%<tr><td>Lewy 小体型認知症<td>4〜15%<tr><td>前頭葉側頭葉変性症<td>1〜2.5%<tr><td>混合型<td>5〜10%</table></div><div class="col-lg-7"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />認知症の原因となる疾患は、多い順に、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レヴィー小体型認知症、前頭葉・側頭葉変性症、それらの混合型になります。 [red]<b>アルツハイマー型認知症</b>[/red]では、何らかの原因で神経細胞内にアミロイドβ-蛋白が蓄積し、神経細胞が傷害されて、発症してきます。<br>[red]<b>血管性認知症</b>[/red]では、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳血管障害を原因として、認知機能が低下してきます。基本的には、脳の広い範囲が障害されるか、認知機能に重要な役割をもつ脳部位が障害されることで生じてきます。<br>[red]<b>レヴィー小体型認知症</b>[/red]では、認知機能低下に加えて、早い時期から幻視や歩行障害や手足のふるえなどのパーキンソン症状を合併する疾患です。<br>[red]<b>前頭葉側頭葉変性症</b>[/red]は、前頭葉・側頭葉の委縮により、精神症状を主体として認知機能障害が出現してきます。</div></div></div><br><br><h2>認知症とまぎらわしい脳疾患、あるいは、治療により症状が回復する可能性がある脳疾患</h2><br><img src="img/vol20img02.gif" class="mx-auto img-fluid d-block" alt="脳疾患"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />認知症と紛らわしい疾患は色々ありますが、一般的に多くみられる脳の病気をあげると、慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症・脳梗塞・脳出血をあげることができます。<br>[red]慢性硬膜下血腫と正常圧水頭症[/red]は、伴に認知機能障害と歩行障害を周囲に指摘されて、来院することが多い疾患です。<br>[red]脳梗塞や脳出血[/red]では、一般的には、明らかな脳局所症状(手足の麻痺や言語障害)出現があり、数日〜数週かけて認知機能低下が明らかになってきます。しかし、脳局所症状がなく、数時間〜数日かけて、認知機能低下のみが出現してくる場合があり、注意が必要です。</div><br><br><h2>慢性硬膜下血腫</h2>軽微な頭部外傷後に、数週間かけて硬膜下に血液が貯留した状態。<br>脳が圧迫されることにより症状が出現するが、認知機能の低下のみが目立ち、認知症と間違われる事がある。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />慢性硬膜下血腫では、本人が覚えていない程度の軽微な頭部打撲後でも、徐々に硬膜下に血腫が形成され、脳が圧迫されることにより、頭痛・手足の麻痺が出現してきます。しかし高齢者では、認知機能低下のみが目立ち、手足の麻痺は周囲の人から見れば軽度の歩行障害があると認識される程度の事が多く見られます。手術治療により、90%以上の確率で発症前の状態に戻ります。</div><br><br><h2>正常圧水頭症</h2>髄液の正常な流れが阻害され、脳室内に過剰な髄液が貯留した状態。<br>脳腫瘍や出血などが原因の場合と違い、脳室内圧は正常である。周囲脳の圧迫により、歩行障害・認知障害・排尿障害を生じる。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />正常圧水頭症は、歩行障害・認知機能障害・排尿障害の順に症状が出現してきますが、何らかの原因で歩行に障害がある場合、数ヶ月かけて出現してくる認知機能低下が主症状の事があります。脳内に過剰に貯留した脳脊髄液を腹腔内に流れるようにする手術(シャント手術)で、程度の差はありますが、症状は改善します。</div><br><br><h2>脳梗塞</h2>認知機能に関連する部分の脳梗塞により、急性に認知機能障害が生じてくる事がある。<br>治療により、ある程度回復するが、次第に認知症に移行していく事が多い。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />認知機能に重要な働きがある脳部位に脳梗塞を生じると、急性に認知機能障害が生じてきます。特に、視床や角回などが有名で、これらの部位の脳梗塞では治療により、ある程度の回復はするものの、認知機能障害が残存する確率が高くなります。しかし、これらとは別の部位の脳梗塞で、脳局所症状を伴わない脳梗塞もあり、注意が必要です。このような部位では治療により、かなりの確率で症状は改善しますが、治療開始が遅れると、脳梗塞が進行して他の症状まで出現してしまう事があり、注意が必要です。</div><br><br><h2>脳出血</h2>脳出血では、通常、頭痛・片麻痺などの症状があり、その後、数週から数ヵ月後に認知機能低下が目立つようになる。<br>しかし、言葉に関連した部位に出血が生じた場合、認知症と間違われる事がある。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳出血では、頭痛に伴って、意識障害・手足の麻痺・言語障害などが出現する事が一般的ですが、側頭葉の一部や角回などの言語や認知機能に関連する脳部位に出血を生じると認知症と間違われる場合があります。<br>脳出血急性期では、適切な血圧コントロールが重要で、見逃すと、出血が拡大してしまう恐れがあります。<br>認知機能障害は出血の消退とともに徐々に改善しますが、ある程度残存する事が多いものです。</div><br><br><h2>まとめ</h2><br><div class="row"><div class="col-lg-4"><img src="img/vol20img03.gif" class="mx-auto img-fluid" alt="認知症とは?"></div><div class="col-lg-8">急激に認知機能障害が出現してきた場合、治療により症状が改善する疾患である可能性があり、頭MRI検査を実施することが重要である。</div></div></div><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 19 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0105 19 19<br />『 頭痛対策のすすめ=緊張型頭痛= 』<br />平成29年07月22日(土)<br /><p class="text-center">今回のテーマは<br>緊張型頭痛の姿勢・運動療法です。</p><br><ul><li><a href="#a1">頭痛の分類</a></li><li><a href="#a3">緊張型頭痛とは</a></li><li><a href="#a8">姿勢・運動療法</a></li><li><a href="#a16">運動時の注意点</a></li></ul><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>頭痛の分類</h2><br><div class="row"><div class="col-lg-4"><strong>[red]◆一次性頭痛[/red]</strong><br />明らかに頭痛の原因となる疾患のない頭痛。大部分の頭痛がこれに含まれる。</div><div class="col-lg-8"><strong>[red]◆二次性頭痛[/red]</strong><br />感染症などの全身疾患、脳腫瘍や脳出血など<br />頭痛の原因となる疾患がある頭痛。</div></div><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />二次性頭痛とは、原因となりうる疾患により発生したもので、頭部や頚部の外傷、脳出血やくも膜下出血などの脳血管障害、脳腫瘍などの頭蓋内疾患、インフルエンザなどの感染症、頚部・眼・副鼻腔・歯などの疾患、などによって生じてきます。<br>これに対し、一次性頭痛とは、これら明らかな原因がないもので、大部分の頭痛がこれに含まれます。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>一次性頭痛の分類(ICHDー3β)</h2><br><ol><li>片頭痛</li><li>緊張型頭痛</li><li>三叉神経・自律神経性頭痛</li><li>その他の一次性頭痛疾患</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頭痛の国際分類は、1988年に初版が発表され、2004年に第2版、2013年に第3版β版が公開されました。これによると一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛・その他の一次性頭痛疾患に分類されています。<br>三叉神経・自律神経性頭痛には、従来の群発頭痛とそれに近いタイプの頭痛が含まれています。<br>また、その他の一次性頭痛には、咳嗽性頭痛・運動時頭痛などが含まれます。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>緊張型頭痛の分類(ICHDー3β)</h2><br><div class="row"><br><div class="col-lg-6"><strong>2.1 稀発反復性緊張型頭痛</strong><br> 2.1.1 頭蓋周囲の圧痛を伴う稀発反復性緊張型頭痛<br> 2.1.2 頭蓋周囲の圧痛を伴わない稀発反復性緊張型頭痛<br><strong>2.2 頻発反復性緊張型頭痛</strong><br> 2.2.1 頭蓋周囲の圧痛を伴う頻発反復性緊張型頭痛<br> 2.2.2 頭蓋周囲の圧痛を伴わない頻発反復性緊張型頭痛</div><div class="col-lg-6"><strong>2.3 慢性緊張型頭痛</strong><br> 2.3.1 頭蓋周囲の圧痛を伴う慢性緊張型頭痛<br> 2.3.2 頭蓋周囲の圧痛を伴わない慢性緊張型頭痛<br><strong>2.4 緊張型頭痛の疑い</strong><br> 2.4.1 稀発反復性緊張型頭痛の疑い<br> 2.4.2 頻発反復性緊張型頭痛の疑い<br> 2.4.3 慢性緊張型頭痛の疑い<br></div></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />以前には筋収縮性頭痛と分類されていた頭痛で、我が国の1年有病率は22.4%、全頭痛の56.3%を占めるという報告もあります。<br>頭痛の頻度・圧痛の有無により、細かく分類されています。<br>稀発反復性緊張型頭痛は、1ヶ月に1日未満の頻度で発現する頭痛。<br>頻発反復性緊張型頭痛は、3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に1〜14日(年間12日以上180日未満)の頻度で発現する頭痛。<br>慢性緊張型頭痛は、3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現する頭痛です。<br>さらに、頭痛の頻度や性状が診断基準(専門的になるためここでは表示しません)の5項目中1項目のみ合致しない場合には、緊張型頭痛の疑いに分類されます。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>緊張型頭痛の病態</h2><div class="row"><div class="col-lg-5"><Strong>1)末梢性感作</strong><br>頭頚部筋群における頭蓋周囲筋膜の痛み<br>感受性増加によって引き起こされた圧痛。</div><br><div class="col-lg-7"><strong>2)中枢性感作</strong><br>長期間にわたる持続する疼痛刺激が誘因となり、<br>扁桃核・視床下部からの下行性疼痛抑制系の機能<br>低下によって生じる痛み。</div></div><p class="text-left" style="margin-top:20px;">※1)2)が相関して頭痛を引き起こす。</p><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />緊張型頭痛の原因は、大きく分けて二つからなります。<br>頭蓋周囲筋膜への刺激が繰り返されると、ちょっとした刺激で痛みが出現する所謂感作の状態となる末梢性感作。<br>そして、長期間の痛み刺激が続くと、疼痛抑制に働く扁桃核・視床下部からの神経活動が何らかの原因で低下してくることにより、軽度の刺激で痛みを生じてしまう中枢性感作です。<br>緊張型頭痛は、この二つの原因が相関して、頭痛が生じやすくなった状態と考えられます。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>緊張型頭痛の誘発因子</h2><ul><li>精神的・社会的ストレス</li><li>不安・抑うつなど心因性要因</li><li>頚椎ヘルニアなどの頚椎病変</li><li>視力障害を有する眼科疾患</li><li>その他、寝不足・疲労・空腹など</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />緊張型頭痛では、頭痛を誘発するような因子が存在します。<br>精神的・心理的ストレスさらには不安などの心因性要因でも、後頚部筋群の緊張を生じ(所謂、首こり・肩こり)、誘因となりやすいものです。<br>また、頚椎にヘルニアなど何らかの障害があると、後頚部筋群に過度の緊張を生じやすく、誘因のひとつとなります。<br>さらには、視力障害・寝不足・疲労・空腹でも、後頚部筋群に緊張を生じやすくなります。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>緊張型頭痛の診断</h2><br><ol><li>頭痛が30分〜7日間持続する<br />*慢性緊張型頭痛では、数時間〜数日間</li><li>以下の4つのうちの2つを満たす<ol style="list-style-type: lower-alpha"><li>両側性</li><li>性状は圧迫感またはしめつけ感(非拍動性)</li><li>強さは軽度〜中等度</li><li>歩行や階段の昇降のような日常的な動作により憎悪しない</li></ol></li><li>ほかに最適なICHD-3βの診断がない。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />緊張型頭痛の診断は、頭痛の性状を中心に判断されます。<br>まず、頭痛の持続時間は30分〜7日間で、その性状は頭の両側で締め付けられる感じのものです。日常生活は通常に行える程度の軽度〜中等度の痛みがほとんどで、日常生活動作による悪化も見られないのが通常です。<br>さらに、片頭痛で見られるような吐き気・嘔吐がなく、光や音に対する過敏状態がないのも特徴です。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>緊張型頭痛の治療</h2><br><div class="row"><div class="col-lg-3"><strong>1)急性期治療</strong><br>  鎮痛薬<br>  筋弛緩薬</div><br><br><div class="col-lg-5"><strong>2)予防治療</strong><br>  抗うつ薬<br>  抗不安薬<small>(筋弛緩作用をもつもの)</small></div><br><br><div class="col-lg-3"><strong>3)その他</strong><br>  理学療法<br>  運動療法<br>  マッサージ</div><div class="col-lg-1"></div></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頭痛が強い急性期には、鎮痛薬内服または筋弛緩薬の内服あるいは両者の併用が効果的です。<br>頭痛の誘因となる状態を改善する予防薬としては、抗うつ薬・抗不安薬が用いられ、筋弛緩に役立ちます。<br>さらに、その他の治療法としては、頚部の牽引や温熱療法などの理学療法、筋力の増強や筋緊張低下を目的とした、姿勢・運動療法。筋肉の緊張を和らげるためのマッサージなどがあり、急性期治療また予防的治療として効果的です。</div><br><br><a name="a8" class="anchor"></a><h2>姿勢を改善しましょう</h2><br><img src="img/vol19img01.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="姿勢を改善しましょう"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><li>パソコンやスマホ、読書をするとき背中、肩が丸まった姿勢になりやすい。</li><li>1日1回は、正しい姿勢にリセットしましょう。</li><li>壁を背に立ち、頭、肩、おしり、かかとが縦一直線になるように立ちましょう。</li></div><br><br><a name="a9" class="anchor"></a><h2>首や肩の筋肉を運動でほぐしましょう</h2><br><img src="img/vol19img02.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="首や肩の筋肉を運動でほぐしましょう"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><li>頭を支えている筋肉は固く緊張しています。</li><li>運動で伸び縮みをすることでほぐれていきます。</li><li>ゆっくりと動かし、伸ばしましょう。</li></div><br><br><a name="a10" class="anchor"></a><h2>首の運動①</h2><div class="row"><div class="col-lg-3"><img src="img/vol19img03.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="首の運動1"></div><br><div class="col-lg-9">●前と後ろへゆっくりと動かし5秒止めましょう。<br>●首の前と後ろの筋肉が、伸びるのを感じましょう。<br>●3回ずつ行いほぐしましょう。<br>※後方への動きで痛みがある場合は深く曲げすぎないようにしてください。</div></div><br><br><a name="a10" class="anchor"></a><h2>首の運動②</h2><div class="row"><br><div class="col-lg-3"><img src="img/vol19img04.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="首首の運動2"></div><br><div class="col-lg-9">●右と左にゆっくりと曲げていきます。<br>●5秒止めて首や肩の左右の筋肉の伸びを感じましょう。<br>●左右3回ずつ行います。</div></div><br><br><a name="a11" class="anchor"></a><h2>首の運動③</h2><div class="row"><br><div class="col-lg-3"><img src="img/vol19img05.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="首首の運動2"></div><br><div class="col-lg-9">●右と左にゆっくりと回しましょう。<br>●5秒間とめて筋肉の伸びを感じましょう。<br>●3回ずつ行いましょう。</div></div><br><br><a name="a12" class="anchor"></a><h2>肩の運動①</h2><br><img src="img/vol19img06.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="肩の運動①"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />●肩と肘が垂直になるように上げ、頭と腰は固定し、肘を前後に出してひねります。<br>●5秒止めます。<br>●左右交互に3回ずつ行いましょう。</div><br><br><a name="a13" class="anchor"></a><h2>肩の運動②</h2><br><img src="img/vol19img07.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="肩の運動②"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />●頭の後ろで手を組む。<br>●上方に腕を伸ばして行きます。<br>●肘をしっかり伸ばしましょう。 5秒止めて頭の後ろに戻します。<br>●3回行います。</div><br><br><a name="a14" class="anchor"></a><h2>肩の運動③</h2><br><img src="img/vol19img08.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="肩の運動③"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />●両肩を5秒間ゆっくり息を吸いながら上げていきます。<br>●息を吐きながら力を抜きます。<br>●3回ずつ行います。</div><br><br><a name="a15" class="anchor"></a><h2>肩の運動④</h2><br><img src="img/vol19img09.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="肩の運動④"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />●肩甲骨を内側に寄せるように肩を下げて行きます。(胸を張るようにします。)<br>●手を後ろ手に組んで行うと行いやすい運動です。</div><br><br><a name="a16" class="anchor"></a><h2>運動時の注意点</h2><br><ol><li>頭の痛みが強いときの実施はお勧めしません。</li><li>動かす方向により強い痛みを感じる場合は、痛みを感じるよりも少し手前で止めましょう。</li><li>腕よりも、背中(肩甲骨)、胸の動きに意識をむけて、胸や背中(肩甲骨)をしっかり、ゆっくり動かしましょう。</li><li>習慣化することで効果が出てきますので、生活の中に上手に取り入れて下さい。</li></ol><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 18 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0100 18 18<br />『 歩行障害を起こす病気 』<br />平成28年07月23日(土)<br />今回のテーマは歩行障害です。<br><ul style="margin-top:8px"><li><a href="#a1">歩行障害を起こす病気</li><li><a href="#a2">脳出血・脳梗塞・慢性硬膜下血腫・パーキンソン病</a></li><li><a href="#a6">腰椎疾患・高齢による歩行障害・その他</a></li><li><a href="#a9">歩行障害の治療・機能訓練・筋力訓練</a></li></ul><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>1.歩行障害を起こす病気</h2>歩行障害は、<br><ul style="margin-top:8px;"><li>片側あるいは両側下肢の運動麻痺または感覚障害</li><li>腰痛</li><li>下肢痛</li><li>平衡機能障害</li></ul>などが原因で生じてきます。<br>外傷を除いても多くの疾患が原因となりますが、今回は、脳疾患・腰椎疾患を取り上げます。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />歩行は大切な身体機能のひとつです。その機能が低下すると日常生活は大きく制限を受けることになります。高齢による影響を除いても、歩行障害を生じる疾患は多数ありますが、その多くが脳および腰椎疾患です。<br>歩行障害が唯一の症状として出現してくることは稀で、腰椎疾患であるならば腰痛や下肢痛が、脳疾患であれば麻痺した下肢と同側の上肢の麻痺や言語障害などの症状を伴っていることが通常です。<br>しかし、加齢による影響や下肢の関節疾患が加わってくると、病状は複雑になり、診断・治療も難しくなってきます。今回のセミナーでは、代表的疾患の歩行障害に主眼をおいて概説するとともに、歩行障害自体に対する治療について紹介していきたいと思います。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>2.脳出血</h2>ほとんどは高血圧が原因で、1ミリにも満たない太さの血管が破れて出血を生じます。<br>大脳・脳幹・小脳などに出血を生じると、その部位・出血量にもよりますが、他の症状ともに歩行障害を生じてきます。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳出血では、手足を動かす働きのある神経路あるいはその近傍に出血することで下肢麻痺が生じ歩行障害が出現します。通常は、同側上肢の麻痺を伴っていますが、小脳出血では、はっきりとした麻痺がなくてもめまい感(平衡機能障害)とともに歩行障害を生じることが多いものです。出血の部位・出血量によって違いはありますが、出血自体が治癒しても、歩行障害が残存することがあり、根気よくリハビリを続ける必要があります。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>3.脳梗塞</h2>脳の血管が何らかの原因で閉塞し、梗塞を生じます。<br>脳出血と同様に梗塞を生じた部位によって違いはありますが、通常は麻痺した下肢と同側上肢の麻痺あるいはめまい感などの平衡機能障害を伴っています。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞は、比較的太い脳血管に血液の固まりが形成され梗塞を生じる脳血栓。心臓や頚部の血管でできた血液の固まりが血管壁から剥がれ、血流に乗って下流にある血管を閉塞してしまう脳塞栓。1ミリにも満たない細い血管が動脈硬化の影響で閉塞して1センチ程度の小さな脳梗塞が形成されるラクナ梗塞に大別されます。脳血栓や脳塞栓では、比較的広い範囲の脳が障害され、歩行障害に加えて片麻痺や言語障害を伴っていることが多いものですが、ラクナ梗塞では歩行障害やめまい感などの症状が単独で出現してくることがあります。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>4.慢性硬膜下血腫</h2>脳を包み込む硬膜と脳の間のスペース<br>(硬膜下腔)に慢性的に血液が貯留・増大してくる疾患で、血腫により脳が圧迫されてくると、歩行障害や片麻痺などの症状が出現してきます。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />柱に頭をぶつけるなど軽微な頭部への外傷が原因で硬膜下腔に少量の出血を生じ、それが徐々に拡大してくるのが、慢性硬膜下血腫です。<br>症状としては、軽度の頭痛や頭重感が主な症状ですが、血腫が大きくなって脳への圧迫が強くなってくると、めまい感や歩行障害さらには片麻痺などの症状が出現してきます。<br>慢性硬膜下血腫は、少量であれば、安静だけで血腫が消失してくれることもありますが、歩行障害や片麻痺などの症状がある場合は手術が必要になります。手術は比較的簡単な手技で90%以上が治癒しますが、反面、再発してしまう場合もあります。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>5.パーキンソン病</h2>脳内の神経伝達物質のひとつであるドーパミンの不足により生じる病気で、<br>1)振戦(手足のふるえ)<br>2)運動緩慢・無動<br>3)筋固縮<br>4)姿勢反射障害<br>を4大症状とする病気です。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />歩きにくくなった、手足がふるえる、などの症状を訴えて、医療機関を受診する方が多いのも特徴です。<br>治療はドーパミンを補う内服薬を中心に行われ、ある程度の効果が認められます。<br>しかし、加齢により症状が徐々に進行することが多く、歩行障害に関しては、下肢筋力強化とともに歩行バランスの改善を図ることも大切です。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>6.腰椎疾患</h2>腰部脊椎管狭窄・腰椎椎間板ヘルニアなどが、代表的疾患です。<br>いずれも、歩行障害に加えて、<br><ul><li>腰痛</li><li>下肢痛</li><li>下肢しびれ感</li></ul>を伴っていることが通常です。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />腰椎椎体骨間にあってクッションの役目を担っているのが椎間板で、これが変性して後方へ突出して神経を圧迫し、疼痛や下肢の症状(運動障害や感覚障害)が出現してくるのが椎間板ヘルニアです。<br>脊髄の通り道である脊椎管を形成する組織(骨・硬膜・靭帯など)の変性で、脊椎管そのものが狭窄し症状が出現してくるのが、腰部脊椎管狭窄症です。<br>両者とも手術的治療が行われなければ、症状が改善しない場合もありますが、多くは内服薬(鎮痛剤・筋弛緩剤など)あるいは神経ブロックなどの除痛治療と理学療法で症状は改善します。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>7.高齢による歩行障害</h2>主な要因として、<br><ul><li>加齢による骨・関節の変形</li><li>関節可動域の低下</li><li>筋力の低下</li></ul>高齢者では若年者に比較して歩行機能が低下してきます。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脊椎骨は加齢による影響で骨粗鬆症を生じ、楔状に変形してくることが多々見られ、脊椎骨全体では前弯の状態に変形してきます。このため、身体の重心も、それまでの人生とは別のところに移動してきます。これだけでも体のバランスを崩しやすい状況になっていますが、これに下肢の関節可動域低下や筋力の低下、さらには視力や聴力の低下なども歩行機能の悪化に拍車をかけます。歩行機能の維持のため、根気良く下肢筋力やバランスの訓練をする必要があります。</div><br><br><a name="a8" class="anchor"></a><h2>8.その他</h2>糖尿病・変形性膝関節症などでも、病状の進行に伴って、歩行障害を生じてくることがあります。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />糖尿病では、両下肢の感覚障害・筋力低下を主な要因として、歩行障害が生じてくることがあります。また、糖尿病では脳血管障害や腰椎疾患を合併することが多く、歩行障害の原因も複数の疾患が絡んでいることがあり、治療を難しくしています。<br>変形性膝関節症は中年以降の女性に多く見られ、変形が進むと、膝の痛みとともに歩行障害が生じてきます。極度に変形した場合は、手術的治療(人工関節置換手術)が必要になります。</div><br><br><a name="a9" class="anchor"></a><h2>9.歩行障害の治療</h2>歩行障害の原因となった疾患の治療と同時に、歩行障害の回復を目指した機能訓練が必要になります。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />歩行障害の原因によっては、ある程度の障害が残存してしまう場合があります。自力での日常生活を維持するためには、根気良く、機能訓練を続ける必要があります。</div><br><br><a name="a10" class="anchor"></a><h2>歩行に必要な機能・能力</h2><img src="img/vol18image210.jpg" class="mx-auto float-right img-fluid" alt="冠動脈の動脈硬化"><br><b>[red]関節の動き[/red]</b><br>体のやわらかさ <br><br><b>[red]筋力[/red]</b> <br>股関節周りの筋力<br>膝を伸ばす筋力<br>つま先を持ち上げる筋力<br>地面をける筋力<br>姿勢を保つ筋力<br><br><b>[red]筋肉の状態[/red]</b> <br>力を入れたり、抜いたりをスムーズに行える状態<br><br><b>[red]バランス[/red]</b><br>手をふる・体を回す・体を回す・倒れそうになった時に手や足が出る反射運動<br><br><b>[red]感覚[/red]</b><br>足の裏の感覚・体の傾きを感じる感覚・体重を感じる感覚<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><span style="margin-left:10px;">歩行に必要な機能を把握しましょう。様々な機能がうまく働いて私たちは安定した歩きを維持しています。</span></div><br><br><a name="a11" class="anchor"></a><h2>脳疾患後の機能訓練(バランス)</h2><img src="img/vol18-barance.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="脳疾患後の機能訓練(バランス)"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>脳梗塞などの脳疾患時のリハビリテーションの流れです。<br>治療開始後すぐからリハビリが始まります。早め早めの離床が今まで持っていた体力、筋力(麻痺していない上下肢)を落とすことなく動けるようになるために大事であると言われています。<br>一人で立ち上がれるようになると、手を伸ばしても倒れないなどのバランスをとる練習を行います。</div><br><br><br><a name="a12" class="anchor"></a><h2>脳疾患後の機能訓練(歩行)</h2><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>立ち上がりが可能になってくると歩行訓練が始まります。<br>平行棒⇒4点杖⇒歩行器やT杖と筋力、バランス力の向上とともに、簡易な支持での自立歩行を目指します。<br>杖なしでの歩行が可能になることもありますが、杖をはずしていくのは慎重に行いましょう。万が一転倒し、骨折などをすると歩くのが難しくなります。</div><br><br><a name="a13" class="anchor"></a><h2>バランス歩行訓練</h2><br><img src="img/vol18baranse2.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="バランス歩行訓練"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>より歩行バランスを向上するために難易度をあげて練習することもあります。<br>疾患によっては、通常の流れと異なる工夫した歩行練習が必要になることもあります。<br>パーキンソン病の症状がある方は、最初の1歩が出にくい、小刻み歩行になるなど運動のプログラムの問題が生じてきます。目印になるものがあると歩きやすくなることがあります。</div><br><br><a name="a14" class="anchor"></a><h2>筋力訓練1(スクワット)</h2><br><br><img src="img/vol18image2.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="筋力訓練1(スクワット)"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>日頃からの運動習慣が、筋力や体力を向上させ脳疾患などの予後にも良い影響を与えます。<br>スクワット運動は体の中心となる体幹や太ももの筋肉をきたえ、歩行機能の重要な機能をバランスよく鍛えることができる運動です。大事なポイントをおさえて取り組んでいくことをお勧めします。<br>腰をさげて、上に戻る単純な動きですが、[red]大事なポイントは股関節をしっかり曲げること[/red]です。<br>効果のない例としては、膝のみを曲げていることがあります。膝に負担をかけるので注意してください。<br></div><br><br><a name="a15" class="anchor"></a><h2>自分の筋力を知り、自分に合った運動を行いましょう</h2><br><img src="img/vol18undou2.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="筋力訓練1(スクワット)"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>立ち上がりで自分の筋力を知り、自分に合った方法でスクワットに挑戦しましょう。<br>★椅子から片足でも立ち上がりが可能[red]⇒[/red]手を胸や頭などにおいてスクワットを行う。<br>★両足で立ち上がりが可能[red]⇒[/red]手すりや安定した机などを軽く支えてスクワットを行う。<br>★支えがあれば立ち上がりが可能[red]⇒[/red]手すりや安定した机などを支えにして椅子からの立ち上がり。<br>回数は10回を目安にきついと感じるまでおこないましょう。慣れてきたら回数を増やします。<br>毎日行っても良いですが、筋肉痛や関節の痛みがあるときは休んでください。</div><br><br><a name="a16" class="anchor"></a><h2>(付録資料)筋力訓練</h2><br><img src="img/vol18image161.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="筋力訓練1(スクワット)"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>その他の下肢の筋力訓練の参考です。<br>手すりや安定した椅子や机などのそばで行いましょう。<br>同じ動きを10回1セットで慣れに従いセット数を増やして行いましょう。</div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 17 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0095 17 17<br />『あわてぃらんねならん胸痛ちけーねん胸痛 』<br />平成27年09月26日(土)<br />今回のテーマは、「胸痛」です。<br><br>沖縄赤十字病院 循環器内科部長 新里讓先生<br><ul><br><li><a href="#a1">胸痛には</a></li><li><a href="#a2">急性心筋梗塞</a></li><li><a href="#a3">大動脈解離</a></li><li><a href="#a4">肺血栓塞栓症</a></li><li><a href="#a5">気胸</a></li><li><a href="#a6">まとめ1・2</a></li></ul> <br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>胸痛には</h2><br><b>心大血管</b>・・・心筋梗塞、(狭心症)・大動脈解離・肺血栓塞栓症 <br><b>肺</b>・・・(緊張性)気胸、癌 <br><b>消化器</b>・・・胃・十二指腸食道・胃腸、胆のう、すい臓<br><b>胸郭</b>・・・皮膚、筋肉、肋間神経、肋骨、胸膜<br><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />胸が痛む病気は命にかかわる場合が少なくありません。<br><b>※こんな胸痛はあぶない!</b><br>・激しい胸痛(でーじなとーん)<br>・ふらふらする(立っていられない)<br>・息が苦しい<br>・冷や汗や嘔吐を伴う<br>・意識がおかしい</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>急性心筋梗塞とは</h2><br><img src="img/vol17image56.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="冠動脈の動脈硬化"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button> <strong>原因</strong>:動脈硬化 <strong>治療</strong>:薬物 <strong>予防</strong>:コレステロールを下げる</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>大動脈解離とは</h2><br><img src="img/vol17image59.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="大動脈解離"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button> <strong>原因</strong>:動脈硬化・先天性 <strong>治療</strong>:手術 <strong>予防</strong>:血圧を下げる</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>肺血栓塞栓症とは</h2><br><img src="img/vol17image60.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="肺血栓塞栓症"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />下肢静脈内にできた血栓(深部静脈血栓症)がはがれ肺動脈に詰まる。<br /><strong>原因</strong>:いろいろ <strong>治療</strong>:血栓を溶かす <strong>予防</strong>:足を動かす(歩く)</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>気胸とは</h2><br><img src="img/vol17image61.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="気胸"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />空気またはガスが胸腔内に異常に存在する状態をいう。<br>・自然気胸<br>・続発性気胸(COPD、他)<br> 最たるものが緊張性気胸(致死的)<br>  治療:脱気・手術<br>  予防:禁煙</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>まとめ その1</h2><br><p class="text-center">命取りの胸痛の原因は<br /><strong>「動脈硬化」</strong></p><img src="img/vol17image58.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="動脈硬化"><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>まとめ その2</h2><br>命取りの胸痛から身を守るには、<span style="font-weight:bold;color:red;">「動脈硬化」</span>を予防する<br><br><ul><li>高血圧 <span style="color:red;"><u>減塩:食卓におかない</u></span></li><li>糖尿病、脂質異常症 <span style="color:red;"><u>腹八分</u></span></li><li>肥満 <span style="color:red;"><u>ウォーキング:30分/回、3/週</u></span></li><li>喫煙 <span style="color:red;"><u>禁煙</u></span></li></ul><br>以下の症状があったら、<ul style="font-weight:bold;"><li>激しい胸痛(でーじなとーん)</li><li>ふらふらする</li><li>息が苦しい</li><li>冷や汗を伴う</li><li>意識がおかしい</li></ul>↓↓↓<br><span style="color:red;"><u>すぐに救急車を呼びましょう!</u></span><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 16 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0090 16 16<br />『 脳腫瘍 』<br />平成26年07月26日(土)<br />今回のテーマは脳腫瘍です。<br><br><ul><li><a href="#a1">症 状</a></li><li><a href="#a2">頭蓋内圧の調整機構1</a></li><li><a href="#a3">頭蓋内圧の調整機構2</a></li><li><a href="#a4">代表的脳腫瘍</a></li><li><a href="#a5">良性脳腫瘍</a></li><li><a href="#a6">治 療</a></li></ul><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>症 状</h2><img src="img/vol16image410.jpg" class="d-block img-fluid"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳腫瘍の症状は、頭蓋内圧亢進による症状と、脳腫瘍が原因で機能低下した脳の局所症状に大別されます。<br> 頭蓋内の圧力(頭蓋内圧)が上昇すると、脳を包む硬膜の一部が刺激を受け、頭痛が生じてきます。早朝覚醒時に生じることが多いとされています。<br>また、延髄の一部が刺激され、吐き気・嘔吐が生じやすくなります。一方、頭蓋内圧が上昇することで視神経そのものあるいは網膜への血流障害が起き、視力障害が生じてきます。この3つが揃うことが頭蓋内圧亢進症状の特徴です。<br> 局所症状は、脳腫瘍そのもので破壊された、あるいは、脳腫瘍による圧迫で一時的に機能が低下した脳の症状が出現します。<br>前頭葉の障害では大部分が無症状ですが、頭頂葉に近い運動野と呼ばれる領域では、反対側の運動麻痺が出現します。優位側半球側頭葉(右利きの人は大部分が左側)では、言語が理解できなくなる感覚性失語が出現します。頭頂葉の前頭葉に近いところでは、反対側の感覚麻痺が出現します。後頭葉の障害では、反対側半分が見えにくくなる半盲が出現します。その他、視神経交叉部では視力障害が、下垂体では内分泌障害(巨人症など)が、小脳半球の障害では失調(運動を円滑に行えず、例えば歩行時のふらふら)が出現します。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>頭蓋内圧の調整機構 1</h2><img src="img/vol16image51.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頭蓋内で最も大きな体積を占めるのは脳で、脳脊髄液・血液が、これに次いでいます。髄液も血液も、流入量・流出量が均衡するように保たれ、頭蓋内圧もほぼ一定に保たれています。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>頭蓋内圧の調整機構 2</h2><img src="img/vol16image52.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="頭蓋内圧の調整機構 2"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />ここに、出血や腫瘍などが発生してくると、その体積の分だけ頭蓋内圧が上昇します。圧力が上昇した分、頭蓋内の血液や髄液量が減少することで、頭蓋内圧はある程度まで一定に保たれます。しかし、出血や腫瘍が一定量の大きさ以上になると、髄液や血液減少の限界を超え、頭蓋内圧が上昇してきます。また、出血・腫瘍の増大スピードが速いと、髄液や血液の減少可能なスピードを超えてしまい、頭蓋内圧が上昇してしまいます。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>代表的脳腫瘍</h2><img src="img/vol16image50.jpg" class="d-block img-fluid" alt="代表的脳腫瘍"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />悪性脳腫瘍では、増大速度が速いため、頭蓋内圧亢進症状が出現しやすくなります。<br>神経膠腫は、脳そのものから発生する腫瘍で、比較的良性のものから最も悪性のものまであります。最も悪性のものでは、どんな治療を施しても、発症してから平均一年程度で死亡してしまいます。<br>胃癌・肺癌・乳癌など、体の他の臓器にできた悪性腫瘍は、脳に転移してくることがあります。一か所ではなく、何か所にも同時に転移してくることもあります。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>良性脳腫瘍</h2><img src="img/vol16image71.jpg" class="d-block img-fluid" alt="良性脳腫瘍"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />良性腫瘍では、腫瘍の発育速度が遅いため、頭蓋内圧亢進症状が出現しにくく、腫瘍ができる部位によっては、驚くほどの大きさになるまで、無症状のこともあります。<br>髄膜腫は、神経膠腫に次いで多い腫瘍で、脳表面を被っている髄膜を発生母地としているため、頭蓋内のどの部位にも発生します。手術困難な部位にできたものでなければ、完全摘出が可能です。診断機器の発達により、最近では無症状で見つかることが多くなっています。<br>下垂体腫瘍では、ホルモン産生腫瘍では、成長ホルモン過剰による巨人症や末端肥大症、プロラクチン過剰による乳汁分泌、副腎皮質刺激ホルモン過剰によるクッシング症候群などが出現します。ホルモン非産生腫瘍では、視力・視野障害が、最も多くみられる症状です。<br>神経鞘腫は、末梢神経を包むシュワン細胞を発生母地とするものです。聴神経に発生するものが最も多く、三叉神経・顔面神経などにも発生します。障害された脳神経の症状が出現します。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>治 療 1</h2><img src="img/vol16image54.jpg" class="d-block img-fluid" alt="治 療 1"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />悪性腫瘍でも良性腫瘍でも、基本的治療は摘出手術です。神経膠腫で最も悪性のものでも、全摘出し、放射線治療と化学療法を行えば、一年以上の生存が期待できます。<br>また、良性腫瘍の場合、全摘出できれば、基本的には再発しません。<br>放射線治療は、悪性脳腫瘍の手術後に標準的に行われおり、生存期間の延長が認められています。<br>また、良性腫瘍でも、摘出困難な場合に用いられ一定の効果が見られます。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>治 療 2</h2><img src="img/vol16image91.jpg" class="d-block img-fluid" alt="治療2"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />特殊な放射線治療であるr-ナイフやサイバーナイフは、脳の一部に一度に大量の放射線を集中的に照射する方法です。転移性脳腫瘍や比較的小さな良性腫瘍に効果的で、腫瘍を消失させることはできなくても、何年もの間、腫瘍の増大を防ぐことができます。<br>化学療法は、悪性神経膠腫に対して、手術後、放射線治療に並行して実施されることが多く、一定の効果が確認されています。<br>また、一部の脳腫瘍(胚細胞腫など)では、劇的な効果が認められることがあります。</div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 15 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0085 15 15<br />『 高齢者のうつ病 』<br />平成25年07月20日(土)<br />今回のテーマは、「高齢者のうつ病」です。<br><br>新垣病院副院長 精神科専門医 大田郁也先生<br><br><ul><li><a href="#a1">高齢者に多い病気</a></li><li><a href="#a2">認知症</a></li><li><a href="#a3">うつ病</a></li><li><a href="#a4">高齢者のうつ病と認知症</a></li><li><a href="#a5">高齢者のうつ病の予防</a></li></ul><br><a name="a1" class="anchor"></a><img src="img/vol15image8.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><a name="a2" class="anchor"></a><img src="img/vol15img10.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><img src="img/vol15image57.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image15.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><h2>うつ病(+躁うつ病)総患者数<a name="a3" class="anchor"></a></h2><br><img src="img/vol15image2.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image48.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><p class="text-center">WHOのDisability Adjusted Life Years(DALYs)に関する研究(2004年)</p>DALYにおいて、健康な生活を障害する疾患として、1995年にうつ病は第4位でしたが2020年には第2位になると予測されています。<br />うつ病は患者さんの生活に重大な影響を及ぼすため、早期の医学的介入が必要になると言えます。<br><hr><img src="img/vol15image3.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><hr><br><img src="img/vol15image19.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image20.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image24.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image25.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image26.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image39.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><img src="img/vol15image4.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image44.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><img src="img/vol15image5.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image6.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><img src="img/vol15image36.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br>うつ病の要因には様々な仮説がありますが、うつ病の素因や病前性格を持つ人に発病状況因が重なった時に、うつ病を発症することが多いと言われています。<br>うつ病の発症につながるような発病状況因としては、以下のようなことがあります。<ol style="font-weight:bold"><br><li>病気やけがなどによる身体的なダメージに対する不安</li><li>子供の独立や失業、退職など、これまで自分を支えてきた人間関係や地位を失うことのむなしさ</li><li>親しい人との死別、離別などの別れることの悲しみ</li><li>結婚、出産、転校、就職などの環境の変化に対するプレッシャー</li></ol>このように、離別や失業などの悲しい出来事以外に、結婚や出産などの喜ばしい出来事でもうつ病を引き起こす可能性があります。<br>しかし、発病の要因がはっきりしている場合は、比較的治りやすいと言われています。<br><hr><br><img src="img/vol15image21.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><img src="img/vol15image9.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image27.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><img src="img/vol15image28.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image29.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image30.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image34.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><img src="img/vol15image37.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br>1998〜2000年の3年間に心療内科を受診した患者さん330例のうち、うつ症状を主訴に認めるか、またはSDSが45点以上を示した161例をうつ症状群として調査検討しました。<br>その結果、うつ症状群の患者さんが初診診療科として受診した科は、内科が最も多く64.7%でした。<br>この調査から分かるように、うつ症状を呈する患者さんの多くが身体症状を主訴に内科を受診しています。<br><hr><br><img src="img/vol15image38.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><a name="a4" class="anchor"></a><img src="img/vol15image40.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><hr><br><img src="img/vol15image41.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="高齢者単独・夫婦世帯"><img src="img/vol15image42.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="人口問題"><img src="img/vol15image43.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="老々介護"><br><hr><br><a name="a5" class="anchor"></a><img src="img/vol15image32.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="高齢者のうつ病の予防"><img src="img/vol15image31.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="高齢者のうつ病の予防リスト"><br><p class="text-center" style="font-size:60px;font-weight:bold;color:red;">↓</p><img src="img/vol15image35.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="ストレスを和らげストレス耐性を上げる"><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 14 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0080 14 14<br />『 頚性神経筋症候群の概念 』<br />平成24年07月21日(土)<br />今回のテーマは、「頚性神経筋症候群」です。<ol><li><a href="#a1">頚性神経筋症候群の概念</a></li><li><a href="#a2">診断</a></li><li><a href="#a3">治療</a></li><li><a href="#a4">当院での取り組み</a></li><li><a href="#a5">めまい予防のための注意点</a></li></ol><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 頚性神経筋症候群の概念</h2>頚筋群の異常が慢性疲労症候群、頭痛、めまい(回転性および動揺性)、自律神経障害、むちうち症を引き起こす。これらの症状は頚筋群の治療により改善する。しかし、頚性神経筋症候群の原因や発症メカニズムについては、不明である。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頭痛や肩こりに回転性めまい(グルグルと回る感のめまい)動揺性めまい(フラフラとするめまい)を伴う事があることは、以前から知られていました。 頚性めまいと称され、その原因については、頚部の自律神経障害、椎骨・脳底動脈系の血行障害が想定されていました。一方ここ7〜8年マスコミやインターネットを中心に頚性神経筋症候群という捉え方が広がり、注目を集めています。 今回はその概念の解説とともに当院での取り組みについて説明します。<br>松井医師らにより提唱された頚性神経筋症候群とは、頚筋群の異常により慢性疲労症候群、頭痛、めまい、自律神経障害、むちうち症などが引き起こされるというもので、その原因や発症メカニズムは明らかでない。しかし、これらの疾患の症状が、頚筋群の異常が改善するとともに、軽快していくというものである。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 診断</h2><ul><li><strong>頚部(頚筋)群の触診</strong><br />圧痛や筋緊張の異常の確認</li><br><li><strong>問診表</strong><br />頸椎X線写真<br />生理的前彎の消失</li><br><li><strong>MRI・CT</strong><br />椎間板の後方突出の確認</li><br><li><strong>対光反射の異常</strong><br />副交感神経の抑制状態</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />診断は診察、質問表への解答項目数、放射線学的診断を総合してなされる。まず、頚筋群の触診を行い、圧痛や筋緊張の異常の存在を確認する。また、対光反射(瞳孔の光に対する反応)を観察するが、本症候群では、この反応に異常を生じている。質問表では該当するものが10項目以上で中〜重症、5〜9項目で軽症、4項目以下では頚性神経筋症候群は否定的である。さらにX線では生理的前彎が消失した直線状の頸椎が特徴的で前屈位・後屈位での異常も指摘されている。MRI及びCT検査では、椎間板の後方への突出が見られることがあり、この場合、治療による症状の改善が遅れたり、あるいは改善に乏しいようである。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 治療</h2><ol><li><strong>物理療法</strong><br />低周波治療<br />温熱療法</li><li><strong>漢方薬による治療</strong></li><li><strong>薬物投与</strong><br />点滴あるいは内服薬</li><li><strong>その他</strong></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />治療は物理的療法が主体となる。まず、異常を認める頚筋群に対して、温熱療法や鍼を用いた低周波治療により頚筋群の圧痛や筋緊張の異常の改善を図る。また、漢方薬あるいはその他の筋弛緩効果のある薬剤の投与。また不眠やめまいなどの症状に対しても内服薬や点滴による治療を行う。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 当院での取り組み</h2><ol><li>頚性神経筋症候群という考え方は、頭痛めまいに関しては有効</li><li>診断に際して、対光反射の異常が存在するか疑問</li><li>治療<ol><li>生活指導</li><li>内服薬(漢方を含む)</li><li>物理療法(牽引、電気治療、マッサージ)</li><li>鍼治療</li><li>ブロック注射(トリガーポイント)</li><li>その他</li></ol></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />当院では同様の観点から、頭痛・めまいの治療を行い、一定の効果を上げている。しかし、慢性疲労症候群、自律神経症候群、むちうち症に対しては、効果が認められた症例はあるものの、一定した効果は見られなかった。治療については、仕事上や家庭内での姿勢、枕などの就眠時の体位を中心とした生活指導を主体とし、筋弛緩剤を中心とした内服薬による治療、牽引、電気治療、マッサージを主として物理療法、鍼治療、ブロック注射などの補助的治療を行っている。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 めまい予防のための注意点</h2><ol><li>座位のまま(ソファや椅子などで)居眠りをしない</li><li>頚部の過剰運動を避ける</li><li>頸椎伸展状態、屈曲状態での就眠を避ける</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />当院では上記の通り指導を行い、一定の効果が得られている。</div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 13 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0075 13 13<br />『 頚部内頚動脈狭窄症 』<br /> 平成23年07月09日(土)<br />今回のテーマは頚部内頚動脈狭窄症です。<ol><li><a href="#a1">動脈の構造</a></li><li><a href="#a2">動脈硬化の危険因子</a></li><li><a href="#a3">動脈硬化のメカニズムと梗塞の発現</a></li><li><a href="#a4">頚部内頚動脈の構造</a></li><li><a href="#a5">頚部内頚動脈狭窄症の症状</a></li><li><a href="#a6">狭窄率の算定</a></li><li><a href="#a7">治療法</a></li></ol> <br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 動脈の構造</h2><br><img src="img/Vol13sem13-01.gif" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />動脈の基本構造は、図のような三層構造になっています。血管の一番内側にある内皮と外側の内弾性板からなる内膜。内皮と内弾性板の間は結合組織でうめられています。内膜の外側は主に平滑筋で構成される中膜。一番外側は、結合組織線維から成る外膜という構造になっています。動脈の中は、心臓から駆出された高い圧力を持った血液が絶えず流れており、それに耐えるために内弾性板および平滑筋が主体の強固な組織になっています。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 動脈硬化の危険因子</h2><br><ol><li>治療不能のもの<ol><li>年令</li><li>性別</li><li>遺伝因子</li></ol></li><li>治療可能なもの<ol><li>高血圧</li><li>糖尿病</li><li>喫煙</li><li>高コレステロール(LDL)血症</li><li>高尿酸血症</li></ol></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />動脈硬化の危険因子には治療不能のものと治療可能なものとがあります。動脈硬化は年齢とともに進行するもので、体の成長期が終わる頃から少しずつ進んでいきます。また、一般的に、男性は女性より十歳程度動脈硬化が進んでいるとされています。さらに未だ解明されていない遺伝的要因があります。治療可能なものには、高血圧・糖尿病・喫煙・高LDL血症・高尿酸血症があり、この順に動脈硬化に与える影響は小さくなります。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 動脈硬化のメカニズムと梗塞の発現</h2><br><img src="img/Vol13sem13-02.gif" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><b>梗塞の発生機序</b><br>塞栓: 血栓ができた場所から剥がれ末梢側へと流れ、細い血管を閉塞。<br />血栓: 内膜肥厚が極端に進み細くなった血管に残存腔内に血栓が形成される。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />動脈硬化のメカニズムはいろいろと想定されていますが、最も解明されているのが高コレステロール血症です。高LDL(いわゆる悪玉コレステロール)血症があると、動脈内皮外側の結合組織にLDLが沈着します。これを処理するため血液中の白血球の一部がこの結合組織に侵入し、LDLを貪食し泡沫細胞になります。この細胞が多くなってくると、様々な物質を放出し平滑筋細胞が増殖し、血管壁が肥厚、動脈が狭窄してきます。一方、LDLを取り込みすぎた泡沫細胞が自壊し、内皮下(内皮外側)の組織にLDLが放出され、コレステロールが蓄積してきます。さらにこのような部位の内皮細胞が障害され剥離していくと、種々の物質が直接血液にさらされ、この部位に血栓が形成されていきます。肺や心臓などの臓器は、血液の供給がある一定レベル以下になると、その血管が支配する領域の組織が死んでしまいます。これを梗塞というわけですが、その発生様式には大まかに二通りあります。ひとつは動脈硬化を生じた部位から剥がれた血栓がその下流にあるより細い血管を閉塞してしまう「塞栓」。もうひとつは、内膜肥厚が極端に進み細くなった血管内に血栓が形成され、完全閉塞になる「血栓」です。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 頸部内頚動脈の構造</h2><br><img src="img/Vol13sem13-03.gif" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳に大量の血液を供給する主要な血管は左右の内頚動脈で、脳の大部分に血液を供しています。大動脈から枝分かれした総頚動脈は、大まかに顎の高さで内頚動脈と外頚動脈にわかれますが、この分岐部は動脈硬化の好発部位です。内頚動脈は脳の中に入ると、まず眼動脈が枝分かれし、前大脳動脈・中大脳動脈などに分かれていきます。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 頚部内頚動脈狭窄症の症状</h2>大きく分けて眼動脈の虚血症状(一過性黒内障など)と 脳虚血症状(対側の麻痺・失語症など)がある。<br><br><ol><li><strong>無症候性</strong><br />60%以上の狭窄では、2〜3%/年、の脳梗塞発症の報告がある。</li><li><strong>症候性</strong><br />70%以上の狭窄で10数%/年、50〜69%狭窄で4〜5%の脳梗塞発症の報告がある。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頚部内頚動脈狭窄は、狭窄率が70%以上の高度となっても、そのほとんどが無症状(無症候性)です。症状が出現する場合(症候性)は、眼症状と脳症状に大別され、さらに一過性のものと永続的なものに分けられます。眼症状としては、一時的に視野が真っ暗になる一過性黒内障や眼動脈閉塞による失明などがあります。脳症状は多彩で、虚血となった脳と反対側の麻痺や、言葉を理解したり喋ったりすることが障害される失語などがありますが、これが一過性のことも永続的に残ってしまうこともあります。無症候性の場合、60%以上の狭窄で年に2〜3%の頻度で、つまり1年で100人中2〜3人が脳梗塞を発症するといわれています。また、症候性の場合では、70%以上の狭窄では年に10数%が、50〜69%の狭窄では4〜5%が脳梗塞を発症するといわれています。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 狭窄率の算定</h2><br><img src="img/Vol13sem13-04.gif" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頚部内頚動脈の狭窄度の判定には、狭窄率が用いられています。脳血管撮影では、NASCETとECSTが主に用いられていますが、MR検査でもしばしば同じ方法が使われています。いずれも、正常の太さを分母に、正常の血管径から開存している血管径を分子にしているため、狭窄率が高いということは間存している血管腔が狭いことを意味しています。また超音波検査を用いたASがありますが、超音波検査では、頚部内頚動脈を正確に捉えることが難しい場合があります。一般的に同じ症例の同じ部位でも計測法によって狭窄率が違い、AS・ECST・NASCETの順に狭窄率が低く算定されます。通常、症候性の場合は脳梗塞や明らかな虚血症状があるため、入院の上、脳血管撮影が施行されます。しかし、何らかの理由で脳血管撮影ができない場合(高齢や腎不全など)、無症候性の場合など、MR検査と超音波検査である程度大雑把に狭窄率を算定します。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 治療法</h2><br><ol><li>内科的治療</li><ol><li>動脈硬化危険因子の管理・治療</li><li>抗血小板剤の内服</li></ol></li><li>外科的治療<br />頚動脈内膜血栓摘出術(CEA)</li><li>頚動脈ステント留置術(CAS)</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />治療の基本は内科的治療です。治療の原則は、前述した動脈硬化危険因子の管理・治療です。また、狭窄率の程度や内膜肥厚の形状にもよりますが、血栓の形成を抑制する目的で、抗血小板剤が使用されます。さらに、狭窄率が70%を超える場合や症候性の場合は、頚動脈内膜血栓摘出術などの手術的治療や頚動脈ステント留置術が行われます。</div> <br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 12 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0070 12 12<br />『 腰椎疾患 』<br />平成22年07月10日(土)<br />今回のテーマは、腰椎疾患です。<br><br><ol><li><a href="#a1">腰椎の解剖</a></li><li><a href="#a2">腰部椎間板ヘルニア</a></li><li><a href="#a3">脊椎分離症・脊椎分離すべり症・変性すべり症</a></li><li><a href="#a4">腰部脊柱管狭窄</a></li></ol><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 腰椎の解剖</h2><br><img src="img/Vol12-n-kosi01-022.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="腰図1〜2"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />腰椎は五個の脊椎骨で構成され、骨盤の上方(頭側)に位置しています(図1)。 <br>立位時・座位時には体重の大部分の荷重を支えています。 一つ一つの腰椎の間には椎間板があり、クッションの役目を担っていて、その中心部は髄核・周辺部は線維輪から成り立っています(図1・図2)。<br>脊椎骨の中央には楕円形の穴が開いており、これが上下に連なり脊椎管(脊柱管)を形成し、胸椎部・頚椎部のものとつながって一続きの管となって頭蓋骨(脳)に到達しています。<br>この脊椎管の中に脊髄が収まっているのですが、脊髄は第一腰椎の高さで終わり、それより下方は馬尾神経という神経の束になります(馬の尻尾に似ていることからこう称される)。<br>神経の一本一本は神経根といわれ、椎間板の後側方(椎間孔)を通って、下肢に分布していきます。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 腰部椎間板ヘルニア</h2><br><img src="img/Vol12-n-kosi03-041.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="腰図3〜4"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />腰部椎間板には前屈時で約300kgの力がかかるとされていて、激しい運動や加齢により線維輪に変性が生じ、その一部に亀裂が生じます。<br>その亀裂を通って髄核が外側に突出し、椎間板の一部あるいは全部が膨隆し、場合によっては髄核が線維輪を破って突出します(図3)。こうなった状態が椎間板ヘルニアです。突出した椎間板によりその周辺の洞神経が刺激され、腰痛が生じてきます。さらに突出が進むと、神経根が圧迫され下肢痛や下肢のしびれ、さらには下肢の運動障害や知覚障害も生じてきます。<br>診断は、Ⅹ線写真・CTあるいはMRIで行われますが、現在ではMRIが主流です。その理由は、突出した椎間板が明瞭に抽出され神経根や馬尾神経への圧迫が明らかになるからです。<br>しかし60歳以下の20%に無症状のヘルニアがあることに注意が必要で、下肢のしびれや運動障害の場合、脳や他の脊髄部位、さらには他の疾患に原因がないかの鑑別も必要です。一方、一度突出した椎間板が2〜6ケ月で縮小することもあり、注意が必要です。<br>腰部椎間板ヘルニアの治療は基本的には保存的治療です。特に発症急性期には安静が必要で、側臥位(横向き)で股関節・膝関節を屈曲し固めの布団に休むことで、椎間板突出による洞神経や神経根への圧迫を和らげます。さらには、中腰の姿勢(前屈位)を避け、重い物を持たないなど、椎間板への荷重の軽減を図ることで突出した椎間板の縮小が期待できます。<br>薬物療法としては、抗炎症薬・筋弛緩剤などの内服。湿布などの外用薬が使用されます。<br>理学療法にはホットパックなどの温熱療法で筋緊張を低下させて疼痛軽減を図る方法。間欠的あるいは持続的に腰部を牽引し、神経根への圧迫を軽減する方法などがあります。さらに、コルセットで腰部の動きを制限して症状の改善を図る方法などがあります。疼痛が強い場合は、局所麻酔薬の注射により症状の改善を図る方法がありますが、これには、圧痛点への局所注射・硬膜外ブロックなどがあります。<br>種々の治療で症状の改善がない場合は、手術治療が適応になります。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 脊椎分離症・脊椎分離すべり症・変性すべり症</h2>脊椎分離症・脊椎分離すべり症・変性すべり症<br><br><strong><u>成因</u></strong> <br><ul><li><strong>脊椎分離症</strong><br />何らかの先天的要因に成長期における過度のスポーツ活動などの反復する負荷が加わり、関節突起間に疲労骨折を生じる。</li><br><li><strong>脊椎分離すべり症</strong><br />脊椎分離症の数%〜20%が長期経過を経て分離すべり症(脊椎骨が前後にずれた状態)に移行。</li><br><li><strong>変性すべり症</strong><br />脊椎分離症がなく、主に加齢による変化ですべりが生じる。</li></ul><br><strong><u>症状</u></strong> <br><ul><li><strong>脊椎分離症のみ</strong><br />腰痛(後屈時に生じることが多い)、臀部痛、大腿部痛</li><br><li><strong>脊椎分離すべり症、変性すべり症</strong><br />神経根が圧迫されると、上記症状に加えて下肢痛、下肢しびれ、歩行障害などが生じる。</li></ul><br><strong><u>診断</u></strong> <br><ul><li><strong>保存的治療</strong><br />腰部椎間板ヘルニアに準じる</li><br><li><strong>手術</strong><br />3〜6ケ月の保存的治療が無効の場合、種々の分離部修復術の適応となる。</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脊椎分離症は、何らかの先天的要因に成長期おける過度のスポーツ活動など反復する負荷が加わり、関節突起間部に疲労骨折を生じるものと考えられています(図4)。<br>脊椎分離だけでは腰痛のみが症状であることが多いのですが、そのうちの数%〜20%が長期経過(数年〜数十年)の中で、分離すべり症に移行するとされています。<br>すべり症とは椎体骨が前後にずれた状態で、そのずれの程度が大きいと、ずれた組織に神経根が圧迫され椎間板ヘルニアと似たような症状を呈してきます。変性すべり症は、加齢による変化で椎間板・後縦靭帯・黄色靭帯などの脊柱を支持する組織の強度が減じ、すべりが生じた状態です。<br><br>脊椎分離症・脊椎すべり症の症状は、すべりの有無やその程度によって違います。分離症のみでは、腰痛・臀部痛・大腿部痛などの痛みのみが主な症状です。しかし、すべりが生じて神経根が圧迫されると、下肢痛・下肢しびれ・歩行障害などの症状が出現してきます。<br>診断はⅩ線写真・CT・MRIが不可欠で、分離部位やずれの程度、神経根の圧迫程度など、詳細な検査が必要になります。治療は椎間板ヘルニアに準じた保存的治療ですが、これで改善しない場合、分離やすべりを修復する種々の手術の適応があります。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 腰部脊柱管狭窄</h2> 腰部脊椎管狭窄 <br><strong><u>成因</u></strong> <br><ul><li>腰部脊椎管を囲む骨あるいは軟部組織(後縦靭帯・黄色靭帯・硬膜など)が肥厚。<br />肥厚した組織により脊椎管が狭窄する。<br />また、この肥厚した組織により、馬尾神経や神経根が圧迫される。<br />椎間板ヘルニアを合併することもある。</li></ul><br><u><strong>症状(圧迫される神経組織によって違う)</strong></u><ul><li><strong>馬尾性</strong><br />下肢、臀部、会陰部の異常感覚、膀胱直腸障害、下肢脱力感、性機能不全など</li><br><li><strong>神経根性</strong><br />下肢の疼痛、下肢の運動障害、下肢の知覚障害など</li><br><li><strong>間欠跛行(歩行により症状が悪化) </strong><br />安静時無症状: 片側あるいは両側の下肢疼痛や歩行障害・異常知覚が歩行後に出現<br />安静時症状のある場合:歩行により症状が広範囲に広がる、あるいは悪化。</li></ul><br><strong><u>診断</u></strong><ul><li>Ⅹ線写真、CT、,MRI </li></ul><br><strong><u>治療</u></strong><ul><li><strong>保存的治療</strong><br />腰部椎間板ヘルニアに準じる</li><br><li><strong>手術的治療</strong><br />除圧術:馬尾神経あるいは神経根を圧迫している骨及び軟部組織を除去し神経組織を圧迫から開放する。<br />(高齢者が多いため,切除する組織は最低限度に抑えることが望ましい) </li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />腰部脊椎管を囲む骨性あるいは軟部組織(後縦靭帯・黄色靭帯・硬膜など)が肥厚し、神経組織が圧迫された状態。椎間板ヘルニアが合併している場合もあります。<br><br>腰部脊椎管狭窄の症状は、圧迫される神経組織によって違ってきます。大きく分けて馬尾性と神経根性です。馬尾神経が障害されると、下肢・臀部・会陰部の異常感覚、膀胱直腸障害(尿失禁・便失禁)、下肢脱力感、性機能不全などの症状が出現します。また、神経根が障害されると、下肢の疼痛・運動障害・知覚障害が生じます。<br><br>腰部脊椎管狭窄では、歩行により症状が悪化し、小休止により回復する間欠跛行が特徴的です。安静時無症状の場合、歩行により片側ないし両側下肢の疼痛や歩行障害が出現し、短い安静により症状が消失します。安静時症状がある場合は、歩行により症状がより広い範囲に広がったり、悪化したりしますが、これも小休止により症状が改善します。<br><br>腰部脊椎管狭窄の診断は、MRIが主流で、必要に応じてⅩ線写真・CTを併用します(骨の変化が著しい場合など)。<br><br>治療は腰部椎間板ヘルニアに準じた保存的治療を行います。やはり3〜6ケ月で改善がない場合は手術適応となります。手術は神経組織を圧迫している骨あるいは軟部組織を除去する除圧術が主となります。高齢者では広範囲に骨や軟部組織を除去すると腰椎の支持性が低下して、脊椎全体の変形・症状悪化を招きかねないため注意が必要です。</div><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 11② http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0065 11② 11②<br />『 鍼灸治療 』<br />平成21年07月11日(土)<br />鍼灸治療ってどんなもの?<br><br><ol><li><a href="#a1">鍼灸はどうして効くの?</a></li><li><a href="#a2">鍼は痛くない?</a></li><li><a href="#a3">鍼はどんなもの?</a></li><li><a href="#a4">鍼はどんな症状に効果があるの?</a></li><li><a href="#a5">鍼を刺すと痛みが取れるのはなぜ?</a></li></ol><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 鍼灸はどうして効くの?</h2>体が本来持っている自然治癒力を正常に働かせる手助けをします。刺激によって、血行や自律神経のバランスが整えば身体は健康な状態に近づきます。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />例えば、ケガをすると出血し、ジクジクしたあと瘡蓋が出来、それが取れて治っていきますね(^・^)!。<br />また打撲したら青あざが出来て、徐々に薄くなって元の色合いや形状に近づいていく様に、体は放っておいても、ある程度までは治そうとします、その自然治癒力を引き出そうとするのが鍼灸治療です。体にあるツボに刺激を加えることによって自然治癒力に働きかけるのです。この場合、患者様の体調はもちろん、施術者の技量にも大きく左右されます。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 鍼は痛くない?</h2>鍼を刺す瞬間、チクッと感じる程度でほとんど痛みはありません。鍼がどうしても怖い、抵抗があるという方には刺さない治療法もあります。<br><br><div class="row"><div class="col-lg-6"><img src="img/vol11kakibari-01.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="かき鍼"><p class="text-center">長さ3㎝ほどの熊手のような鍼</p></div><br><div class="col-lg-6"><img src="img/vol11rorabari-01.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="ローラー鍼"><p class="text-center">ローラー鍼</p></div></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />例えば鍼灸治療の鍼を刺すとするならば、採血や点滴の針は皮膚を切ると言う表現に近いと思います、そのぐらい針の太さに違いがあります。蚊が刺す程度とお考え下さい。また刺さない治療法というのは上記写真のような鍼で、体の表面やツボに弱い刺激を加えて体調を整えようとする方法です。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 鍼はどんなもの?</h2>鍼灸用の鍼は、髪の毛ほどの太さで、直径0.16mm程度です。注射針とは全く別の物とお考え下さい(全て使い捨ての鍼を使用しています。)<br><br><div class="row"><div class="col-lg-6"><img src="img/vol11-CIMG1448.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"alt="トンボ針、注射針、鍼"><p class="text-center">・点滴、採血用 ・注射用 ・鍼灸用</p></div><div class="col-lg-6"><img src="img/vol11-CIMG1449.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="針先 鍼先"><p class="text-center">①注射用の針先 ②鍼灸用の鍼先</p></div></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />点滴や採血用(直径0.7mm)、及び注射針(直径0.5mm)と違って鍼灸用の鍼は直径が0.16mmと非常に細いです。また、鍼灸用の鍼先は注射針などと違って先端が丸に近いです。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 鍼はどんな症状に効果があるの?</h2>肩こり・腰痛・神経痛はもちろん、生理痛や胃もたれ、円形脱毛や不安神経症など多くのつらい症状に効果があります。 <br><br><div class="row"><div class="col-lg-6"><table style="font-size:16px;" class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center" style=" vertical-align:central"><tbody><tr><th>【神経系】</th><td>神経痛、自律神経失調症、頭痛、不眠症、めまい</td></tr><tr><th>【運動器系】</th><td>五十肩、頚肩腕症候群、むち打症、捻挫、坐骨神経痛</td></tr><tr><th>【循環器系】</th><td>高・低血圧症、動脈硬化症、動悸、息切れ</td></tr><tr><th>【呼吸器系】</th><td>風邪、風邪の予防、咳嗽、気管支炎、喘息</td></tr></tbody></table></div><div class="col-lg-6"><table style="font-size:16px;" class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center" style=" vertical-align:central"><tbody><tr><th width="155">【消化器系】</th><td>胃下垂、胃酸過多、 十二指腸潰瘍、下痢、便秘</td></tr><tr><th width="122">【代謝内分秘系】</th><td>糖尿病、痛風、脚気、貧血</td></tr><tr><th>【婦人科疾患】</th><td>更年期障害、生理痛、冷え性、不妊症 、逆子</td></tr><tr><th></th><td><p> </p></td></tr></tbody></table></div></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />一般的に鍼灸治療といえば、肩こりや腰痛などを思い浮かべる方が多いと思いますが、WHO(世界保健機構)が認める鍼灸治療適応疾患には上記表のように多くの疾患があります。中国や日本はもとよりアメリカ・カナダ・オーストラリア・スイス・ポルトガルなど世界各国で鍼灸治療が行われています。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 鍼を刺すと痛みが取れるのはなぜ?</h2>脳から痛みを和らげる(エンドルフィン・ノルアドレナリン・セロトニンなど)物質が大量に産生されるからではないかと言われています。<br><img src="img/vol11-05.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="図-鍼刺激と鎮痛物質"><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />鍼の刺激が脳に伝達され、その刺激が脳内モルヒネ様物質(鎮痛物質)の放出を促進するので痛みが和らぎます。また鍼灸刺激が脊髄の神経を介して痛みを抑制するゲートコントロール説や、ツボ刺激が痛みの閾値を上昇させて結果的に鎮痛効果が期待できる説などがあります。</div><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 11① http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0060 11① 11①<br />『 頸椎疾患 』<br />平成21年07月11日(土)<br />今回のテーマは頚椎疾患です。意外と知られていない事ですが、頚椎に何らかの異常を抱えている人は多数存在します。当院のデータでも後頭部痛の患者さんの46%に何らかの頚椎病変を認めています。そして、その病態を知らないが故に病院受診前に誤った対応をしてしまい、病状を悪化させて来院してくる患者さんも見られます。頚椎疾患の理解を深める事で、そのような事態を回避することが大切です。<br><br><div class="row"><div class="col-lg-5"><ol><li><a href="#a1">頸椎の構造</a></li><li><a href="#a2">頸椎疾患の病態</a><ol><li><a href="#a2-01">頸椎椎間板ヘルニア</a></li><li><a href="#a2-02">脊椎症・脊柱管狭窄症</a></li><li><a href="#a2-02">後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症</a></li></ol></li><li><a href="#a3">頸椎疾患の症状 </a><ol><li><a href="#a3-01">頸椎症状</a></li><li><a href="#a3-02">神経根症状</a></li><li><a href="#a3-03">脊髄症状</a></li></ol></li></div><div class="col-lg-5"><ol start="4"><li><a href="#a4">自然経過</a><ol><li><a href="#a4-01">頸椎椎間板ヘルニア</a></li><li><a href="#a4-02">脊椎症・脊柱管狭窄症</a></li><li><a href="#a4-03">後縦靭帯骨化症</a></li></ol></li><li><a href="#a5">診断</a></li><li><a href="#a6-01">治療</a><ol><li><a href="#a6-01">保存的治療</a></li><li><a href="#a6-02">手術的治療</a></li></ol><li><a href="#a7">頸性めまい</a></li></ol></div><div class="col-lg-2"></div></div><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 頸椎の構造</h2><br><div class="row"><div class="col-lg-2"></div><div class="col-lg-4"><img src="img/Vol11-02n-kubi-011.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="図1-頸椎の構造"></div><div class="col-lg-4"><img src="img/Vol11-02n-kubi-021.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="図2-椎体"></div><div class="col-lg-2"></div></div><br><div class="row"><div class="col-lg-2"></div><div class="col-lg-4"><img src="img/Vol11-02n-kubi-031.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="図3-前後・後根"></div><div class="col-lg-4"><img src="img/Vol11-02n-kubi-042.gif" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="図4-椎間関節"></div><div class="col-lg-2"></div></div> <div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頚椎の骨構造はちょっと複雑です。図1のように頚椎は7ケの骨が積み重なって形成されます。<br>その1ケ1ケは図2のように基本的には五角形の形をしていて、中央に椎孔と呼ばれる大き穴があいていて脊髄の通り道となります。そしてこの五角形の底辺の部分が椎体という部分です。<br>脊椎はこの椎体の間に椎間板という線維性のクッションをはさみ、積み重なっていく構造になっています。上下の骨を支えるのにこれだけでは不十分でもう2ヶ所、左右の椎間関節で支え、頚椎といういわばビルを形成しています。<br>そしてこの椎体と椎間関節の間の骨の半月状の凹みが上下重なってほぼ円形の椎間孔となり(図4)脊髄に出入りする神経(神経根)の通り道になっています。この頚椎々体後面部を、つまり脊髄の前面を縦に長く強固に固定する膜があり、後縦靭帯といいます。また脊髄の後面、椎弓と呼ばれる部位を上下に強固に固定する膜が黄色靭帯です。椎間板・後縦靭帯・黄色靭帯の3つは頚椎の骨同士を強固に固定する役割をもつものですが、加齢による変化や病的変化によって種々の症状を引き起こしもします。<br>脊髄は脳から顔面を除く体のすみずみに到達する神経の通り道であるとともに、体のすみずみから脳に到る神経の通り道でもあります。頚部の脊髄(頚髄)の最上部は四肢に到る神経のすべてを含んでいます。そして少しずつ、一番上の椎間孔から順に後頚部・肩・上肢に到る神経が出ていき、頚椎の一番下部の脊髄では、胸部から腹部・下肢へ向かうあるいは入ってくる神経を含むのみとなります。神経には手足を動かす神経(前根)と感覚を脳に伝える神経(後根)がありますが(図3)、脊髄から出てすぐの所でこれが一緒になって神経根となり、ここから末梢は一本の神経が枝分かれしていくことになります。したがってある高さで脊髄が障害されると、それより下方の運動障害や知覚障害(脊髄症状)、一側の椎間孔の近くで神経根が障害されると、その神経が分布する部位の運動障害や知覚障害が生じます。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02-1 頸椎疾患の病態 頸椎椎間板ヘルニア</h2><ul><li>椎間板の線維輪断裂:頚椎症状</li><li>椎間板の一部が後方へ逸脱:神経根症状・脊髄症状</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />椎間板は髄核とそれを包む線維輪とから成り立っています。髄核は多くの水分を含み椎体同士の衝撃を柔らげるクッションの役目をもっています。これが加齢やその他の原因により線維輪が断裂すると後頭部領域の痛みが生じます。急性に生じた場合は、頚部あるいは肩の激しい痛みが一週間程度続き、やがて慢性の後頭部や肩の凝りに移行していきます。さらに椎間板の一部が後方へ突出し脊髄を圧迫すると、その部位以下の運動や知覚の障害を生じます。また、同じ後方への突出でも外側寄りで突出すると神経根を圧迫し、一側の手の運動障害や知覚障害を生じてきます。</div><br><br><a name="a2-02" class="anchor"></a><h2>02-2 頸椎疾患の病態 脊椎症・脊柱管狭窄症</h2>50歳以上の中高年に多く椎体骨、靭帯などの脊椎全体の変性で頚椎椎間板ヘルニアと同様の症状を生じる。 <div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />50歳以上の中高年になると、加齢による影響で頚椎全体のゆがみが生じてくる場合があります。<br>これに椎間板の変性・突出を中心に後縦靭帯や黄色靭帯の肥厚が加わり、頚椎ヘルニアと同じような症状が出現してくることがあります。これを頚椎症といいます。<br>さらに脊髄の通り道である脊椎管(椎孔が縦につながって形成される)が狭くなった状態が脊椎管狭窄症です。</div><br><br><a name="a2-03" class="anchor"></a><h2>02-3 頸椎疾患の病態 後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症</h2>靭帯骨化により脊髄を圧迫して症状が出現する。 <div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脊髄を支える靭帯は1〜2㎜の厚さで、主に線維成分で組織されています。この線維成分は年令とともに少しずつ減少し、徐々に石灰化していきます。これからさらに骨化して厚みを増し(5〜7㎜)頚椎ヘルニアと同じような症状を呈してきます。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03-1 頸椎疾患の症状 頸椎症状</h2>後頚部痛、頚・肩こり、頚部運動制限。 <div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />前述の3つの病態いずれにも認められます。運動障害や知覚障害などの症状はなく、後頚部から後頭部の痛み、頚部や肩の凝り、頚が回らない、曲げられないなどの運動制限のことを指します。一般的に頚椎ヘルニアでは急激に痛みが出現し、1週間程度で柔らいでくることが多いのに対し、頚椎症では慢性的な痛みとなり易い傾向があります。</div><br><br><a name="a3-02" class="anchor"></a><h2>03-2 頸椎疾患の症状 神経根症状</h2>通常一側上肢への放散痛、しびれ感、知覚鈍磨、脱力。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />椎間孔の部位で神経根が圧迫され、上肢への放散痛(頚部を背屈すると一側上肢へビリビリと痛みが走る)、しびれ感、知覚鈍麻(感覚が鈍くなること)、脱力(手に力が入らない)などの症状が生じます。</div><br><br><a name="a3-03" class="anchor"></a><h2>03-3 頸椎疾患の症状 脊髄症状 </h2>手指巧緻運動障害、歩行障害、膀胱直腸障害、手指を含む体幹・下肢の知覚鈍麻。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脊髄そのものが圧迫障害され、障害された脊髄以下の神経症状が出現します。<br>ボタンがうまくはめられないなどの手指巧緻運動障害。走れない、階段昇降がうまく出来ないなどの歩行障害。尿・便の失禁などを伴う膀胱直腸障害、手指・体幹・下肢の種々の知覚障害などが出現してきます。<br>また極端な場合、障害脊髄以下の完全麻痺や右あるいは左側半分の麻痺が急激に生じ、脳卒中との鑑別が難しい場合があります。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04-1 自然経過 頸椎椎間板ヘルニア</h2>頚椎症状の後、神経根症状、脊髄症状が徐々に出現してくる。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />一般的に後頚部の急激な痛みの後、徐々に神経根症状あるいは脊髄症状が出現してきますが、痛みと神経根症状あるいは脊髄症状がほぼ同時に出現してくることもあります。<br />未治療であれば症状は徐々に悪化しますが、突出したヘルニアが自然に吸収され、症状も消失してしまうこともあります。</div><br><br><a name="a4-02" class="anchor"></a><h2>04-2 自然経過 脊椎症・脊柱管狭窄症</h2>基本的には変性疾患であるため数年〜数十年かけて頚椎症状から神経根症状が出現してくることが多い。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />基本的には年令とともに進行する変性疾患であるため数年〜数十年かけて、頚椎症状から始まり、神経根症状あるいは脊髄症状が出現してきます。</div><br><br><a name="a4-03" class="anchor"></a><h2>04-3 自然経過 後縦靭帯骨化症</h2>上下肢のしびれ感から始まり、数年の後に脊髄症状を生じることが多い。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />上・下肢のしびれ感から始まり、数年の後に脊髄症状を生じてくることが多い。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 診断</h2><ul><li><a href="#a5-01">神経学的診断</a></li><li><a href="#a5-02">エックス線画像</a></li><li><a href="#a5-03">CT</a></li><li><a href="#a5-04">MRI</a></li></u>などから総合的に診断する。 <div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><strong><a name="a5-01" class="anchor"></a>神経学的診断</strong><br />神経学的診察(筋力、腱反射、知覚障害などのチェック)で脊髄あるいは神経根の障害の有無を判断します。<br /><br><strong><a name="a5-02" class="anchor"></a>エックス線画像</strong><br />エックス線撮影で、頚椎の骨の異常や石灰化の有無をチェックします。<br /><br><strong><a name="a5-03" class="anchor"></a>CT</strong><br />頚椎の骨の微細構造や、微少な石灰化の観察ができます。<br /><br><strong><a name="a5-04" class="anchor"></a>MRI</strong><br />椎間板の変形や突出およびその程度、さらに後縦靭帯や黄色靭帯の肥厚程度、脊髄や神経根への圧迫程度を確認します。</div><br><br><a name="a6-01" class="anchor"></a><h2>06-1 治療 保存的治療</h2><ol><li><a href="#a6-01">最も楽な位置での安静臥位(3〜4日)、後屈位は避ける。</a></li><li><a href="#a6-02">カラーによる安静。軽い前屈位での頚椎牽引。歯の治療、美容室でのシャンプーには注意が必要。</a></li><li><a href="#a6-03">薬剤では、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミン剤などが使用される。</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a6-01" class="anchor"></a><li>強い頚椎症状・神経根症状・脊髄症状などの症状があれば安静臥位が原則です。特に脊髄症状の場合は、急激な症状悪化の危険性もあり、入院治療がベストです。 また、後屈位(のけぞる姿勢)は椎間が後方へ突出し、黄色靭帯がたわんで前方に移動し脊髄や神経根への圧迫が強くなる事があるため避ける必要があります。</li><a name="a6-02" class="anchor"></a><li>カラーを装着して、頚椎の不意な運動を避け安静を保ちます。また、軽い前屈位で頚椎の牽引を行い、神経根や脊髄への圧迫を軽減する事で症状の改善を図ります。また、歯の治療や美容室でのシャンプーは後屈位となることが多く注意が必要です。</li><a name="a6-03" class="anchor"></a><li>薬剤では、消炎鎮痛剤・筋弛緩剤・ビタミン剤などを投与し、疼痛の軽減と神経機能の回復を期します。</li></ol></div><br><br><a name="a6-02" class="anchor"></a><h2>06-2 治療 手術的治療</h2>脊髄症状を生じる場合、保存的治療で改善しない神経根症状がある場合が適応となる。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脊髄症状や神経根症状が保存的治療で改善しない場合に、手術的治療が必要となります。症状によって前方や後方から脊髄に到達し脊髄や神経根を圧迫している骨組織・椎間板・黄色靭帯を取り除き、他の部位からもってきた骨を移植、あるいは人口的な器具を用いて脊椎を再建します。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 頸性めまい</h2><ol><li><a href="#a7-01">頚椎の変化で椎骨動脈が圧迫され小脳内耳への循環障害が生じる。</a></li><li><a href="#a7-02">頚部の筋肉の凝りがあり、交感神経の緊張が高まり、脳血管や内耳への血流が減じめまいを生じる。</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頚椎々間板ヘルニア、脊椎症、脊椎管狭窄症、後縦靭帯骨化症などの頚椎疾患が原因で生じるめまいの総称。<br>めまいの性状は歩行時のふらふら感や、船酔いのような感じと表現されることが多い。 下記の要因が原因と考えられています。<br><br><ol><a name="a7-01" class="anchor"></a><li>椎骨動脈は頚椎の横突起孔を下方からつらぬいて上方へ向かい頭蓋内へ到達し、平衡感覚を司る小脳及び内耳への血液を供給しています。骨の変形や椎間板の突出によりこの部で椎骨動脈が圧迫され小脳あるいは内耳への血流不全が生じめまいが出現してきます。</li><a name="a7-02" class="anchor"></a><li>頚椎周辺は交感神経が多数存在します。頚椎部の筋肉の凝りが強くなるとこれら交感神経の緊張が高まり、脳血管や内耳への血流が減少してめまいが生じます。</li></ol></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 10② http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0055 10② 10②<br />『 頭痛②-危険な頭痛の見分け方 』<br /> 平成20年09月27日(土)<br />今回のテーマは危険な頭痛の見分け方<br /><ol><li><a href="#a1">頭蓋内に原因のある頭痛</a></li><li><a href="#a2">頭蓋内に原因のないもの</a></li><li><a href="#a3">一般的な頭痛</a></li><li><a href="#a4">悪化の防止</a></li><li><a href="#a5">危険な頭痛のサイン</a></li></ol><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 頭蓋内に原因のある頭痛</h2><ol><li><a href="#a1-01">クモ膜下出血</a></li><li><a href="#a1-02">高血圧性脳出血</a></li><li><a href="#a1-03">脳梗塞</a></li><li><a href="#a1-04">脳腫瘍</a></li><li><a href="#a1-05">慢性硬膜下血腫</a></li><li><a href="#a1-06">感染(脳炎・髄膜炎など)</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a1-01" class="anchor"></a><li><strong>クモ膜下出血</strong><br />クモ膜と脳の間のスペース(クモ膜下腔)に出血した状態。外傷以外では脳動脈瘤による出血が殆どです。 突然激しい頭痛が生じ『突然ハンマーで殴られた様な痛み』と表現されたりします。 脳動脈瘤破裂は死亡率も高く、救急車搬送の対象です。</li><br><a name="a1-02" class="anchor"></a><li><strong>高血圧性脳出血</strong><br />高血圧のため、脳深部にある細い動脈が破れ出血します。 出血の大きさにもよりますが、通常激しい頭痛を生じます。片側の手足の動きが悪くなる片麻痺を伴っていることが多く、早急な治療を要します。</li><br><a name="a1-03" class="anchor"></a><li><strong>脳梗塞</strong><br />通常の脳梗塞では頭痛は生じません。広い範囲で脳梗塞が起きると頭痛の原因となることがりますが、この場合一般的には意識障害を伴っており、尋常な状態ではないことは一目で分かります。 勿論緊急事態です。</li><br><a name="a1-04" class="anchor"></a><li><strong>脳腫瘍</strong><br />一般的には、悪性脳腫瘍では周囲の脳に腫れ(脳浮腫)を生じ頭痛を伴うことが多く、良性の場合は何らかの他症状(片麻痺や言語障害など)が出現しても頭痛がないことがあります。いずれにしても軽度から中等度の頭痛があることが多いので、気になる症状を伴っているようであれば早めに専門医を受診した方が懸命です。</li><br><a name="a1-05" class="anchor"></a><li><strong>慢性硬膜下血腫</strong><br />硬膜とクモ膜の間のスペースに血腫(血液の塊)が形成された状態です。通常このスペースは広くありませんが、高齢になると脳の萎縮によりこのスペースが広がり、軽微な外傷(壁に頭をぶつけたなど)が原因で小さな出血を生じ、これが時間をかけて(1〜2ヶ月)徐々に大きな血腫となり、脳を圧迫するようになります。症状は、痴呆様の症状が主ですが、軽度の頭痛を伴うことも多々あります。早めに脳神経外科を受診し、治療を受けるべきです(比較的簡単な手術で殆どの方が元の状態に戻ります。)</li><br><a name="a1-06" class="anchor"></a><li><strong>感染(脳炎・髄膜炎など)</strong><br />頭蓋内に細菌やウィルスが侵入し、感染を生じると脳炎や髄膜炎になります。脳炎では発熱とともに激しい頭痛が生じ、やがて意識障害が生じてきます。早急に治療を開始しなければならない状態です。髄膜炎では軽症から重症のものまでありますが、激しい頭痛と発熱が生じます。解熱剤を使用して解熱しても頭痛が続くようであれば、髄膜炎の可能性があります。</li></ul></div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 頭蓋内に原因のないもの</h2><ol><li><a href="#a2-01">片頭痛</a></li><li><a href="#a2-02">筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)</a></li><li><a href="#a2-03">群発性頭痛</a></li><li><a href="#a2-04">緊張性━血管性頭痛</a></li><li><a href="#a2-05">後頭神経痛</a></li><li><a href="#a2-06">三叉神経痛</a></li><li><a href="#a2-07">その他(発熱・高血圧・副鼻腔炎・緑内障など)</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a2-01" class="anchor"></a><li><strong>片頭痛(血管性頭痛)</strong><br />後述</li><br><a name="a2-02" class="anchor"></a><li><strong>筋収縮性頭痛(筋緊張性頭痛)</strong><br />後述</li><br><a name="a2-03" class="anchor"></a><li><strong>群発性頭痛</strong><br />主として男性に見られます。一側の眼の奥及び眼の周りに激しい持続性の痛みが2時間程続き、『燃えるような』あるいは『刺すような』痛みと表現されます。 年に1〜2回程度の発作頻度であることが多く、頭痛と同時に頭痛側の眼の充血・流涙・一側、または両側の鼻閉や鼻汁などが出現します。</li><br><a name="a2-04" class="anchor"></a><li><strong>緊張性‐血管性頭痛</strong><br />後述</li><br><a name="a2-05" class="anchor"></a><li><strong>後頭神経痛</strong><br />後頭部の皮膚に分布する神経の神経痛で後頭部領域の『ピリッ』とした痛みが数秒間続きます。多くは原因不明ですが、頸部脊椎病変や痛風などが原因となる場合もあります。</li><br><a name="a2-06" class="anchor"></a><li><strong>三叉神経痛</strong><br />顔面の知覚を脳に伝える神経が三叉神経です。この神経が過敏状態になるのが三叉神経痛です。三叉神経はその名の通り三つの神経からなり、第Ⅰ枝は眼周囲及び額、第Ⅱ枝は上顎、第Ⅲ枝は下顎の知覚を脳に伝えています。この内第Ⅰ枝領域の痛みは頭痛として自覚されることも多いのです。 頭蓋内に原因の無い頭痛として分類しましたが、実はその原因の殆どは頭蓋内の血管が三叉神経を圧迫することによって生じています。</li><br><a name="a2-07" class="anchor"></a><li><strong>その他(発熱・高血圧・副鼻腔炎・緑内障など)</strong><br />発熱では頭皮の血管が拡張し、拍動性の頭痛を生じることがあります。高血圧単独では頭痛の原因となることは少ないのですが、頚椎病変や他の原因による頭痛を増大させることがあります。さらに副鼻腔炎では前頭部から眼周囲の頭痛を生じることがあります。緑内障でも眼圧の上昇に伴い、前頭部を中心とした激しい頭痛を生じることがあります(多くは眼痛を伴いますが、自覚されないこともあります)。通常、何らかの視力・視野異常を伴います。</li></ol></div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 一般的な頭痛</h2><ol><li><a href="#a3-01"><strong>筋収縮性(緊張性)頭痛</a></strong><br />後頭部〜側頭部の持続する重たい感じの痛み、あるいは一瞬ズキンと痛むが数十秒から数分間後痛みが和らぐ</li><li><a href="#a3-02"><strong>片頭痛</a></strong><br />側頭部あるいは後頭部にある皮膚の血管が異常な拡張をすることにより生じる頭痛、血管の拍動に合わせてズキンズキンとした痛みが、数分〜数十分続き、吐き気・嘔吐を伴いやすい</li><li><a href="#a3-03"><strong>混合型頭痛</a></strong><br /><img src="img/vol10-2-01.jpg"></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a3-01" class="anchor"></a><li><strong>筋収縮性(緊張性)頭痛</strong><br />頭蓋骨は、肩や背中から連続する筋肉によって後頭部から頭頂部まで覆われています。これらの筋肉はさらに薄い腱膜となって前頭部にまで達しています。また側頭部は咬筋から連続する側頭筋に覆われています。これらの筋肉が何らかの原因で緊張度が高まったり、収縮したりすることで生じる頭痛が筋収縮性頭痛です。重たいような鈍い感じの痛み、あるいは一瞬『ズキン』とするような痛みが数十秒から数分間続きます。</li><a name="a3-02" class="anchor"></a><li><strong>片頭痛</strong><br />頭皮には多くの血管が分布しています(このため頭皮の傷では体の他の部位と比較して同程度の傷でも大出血になり易い)。なかでも側頭部と後頭部には太い血管があり、これが収縮後異常な拡張をすることにより頭痛が生じます。血管の拍動に合わせて『ズキンズキン』とした痛みが数分〜数十分続き、吐気・嘔吐を伴うこともあります。多くは遺伝性があり、10才前後から発症する人もいます。実はこの血管の収縮・拡張が頭痛の前あるいは後で脳血管に生じることがあります。星が瞬くような光が視野の一部に見えたり、視野の一部が見えにくくなったりします。</li><a name="a3-03" class="anchor"></a><li><strong>混合型頭痛(緊張性‐血管性頭痛)</strong><br />頭痛の多くは、筋収縮頭痛や片頭痛単独ではなく、両方が混在した形ものです。一人の人にそれぞれが単独でまったく無関係に生じてくることもありますが、多くは筋収縮性頭痛から片頭痛へと移行していきます。さらに筋収縮性頭痛の原因となり易いのが、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎変形などの頚椎疾患です。 慢性的な頭痛が続きながら改善しない場合は、頚椎の検査も受けてみるべきです。また、パソコン作業や細かい手作業でうつむきを強いられる場合も原因になります。さらに精神的ストレスや目の疲れも筋収縮性頭痛を誘発します。</li></ol></div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 悪化の防止</h2><ol><li><a href="#a4-01">就寝姿勢の工夫</a></li><li><a href="#a4-02">作業中の小休止</a></li><li><a href="#a4-03">後頭筋群のマッサージ</a></li><li><a href="#a4-04">ストレス発散</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a4-01" class="anchor"></a><li><strong>就寝姿勢の工夫</strong><br />うつ伏せ寝や極端に首が屈曲・伸展した状態での就寝は首の後ろにある筋肉(後頭筋群)の緊張度を高めます。なるべく首を自然な形(まっすぐか軽く前後左右に曲がる程度)保てるように枕などで工夫します。</li><a name="a4-02" class="anchor"></a><li><strong>作業中の小休止</strong><br />根をつめて前傾姿勢で作業を続けるのではなく、数十秒の間だけでも背筋から首を伸ばした姿勢を維持します。</li><a name="a4-03" class="anchor"></a><li><strong>後頚筋群のマッサージ</strong><br />筋肉は冷えると緊張度が高まります。入浴の時など(シャワーでも可)お湯をあてて数十秒間後頚部をマッサージします。</li><a name="a4-04" class="anchor"></a><li><strong>ストレス発散</strong><br />精神的ストレスの発散法には個人差があります。適度な運動や飲酒でも筋肉の緊張度低下に役立ちます。個々人に合った発散法を見つけていくべきです。</li></ol></div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 危険な頭痛のサイン</h2><ol><li><a href="#a5-01">急激な高血圧を伴うもの(収縮期血圧180㎜Hg以上)</a><br />脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血の可能性あり</li><li><a href="#a5-02">失神後の激しい頭痛</a><br />クモ膜下出血・脳出血の可能性あり</li><li><a href="#a5-03">手足のしびれ感を伴う頭痛</a><br />脳出血・脳梗塞・頚椎椎間板ヘルニアの可能性あり</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a5-01" class="anchor"></a><li><strong>急激な高血圧を伴うもの(収縮期血圧180mmHg以上)</strong><br />それまで正常な血圧を保っていたのに、頭痛とともに血圧上昇が出現した場合は、要注意です。 頭蓋内にある一定以上の大きさのものが急に出現した場合(出血や梗塞など)頭蓋骨内の圧力が上昇します。この時、正常に保たれている脳では血液が不足します(脳に流れ込む血液量は(血圧)-(頭蓋内圧)に比例するから)。このため脳は一定以上の血液を得られるように自律神経を介して血圧を上昇させます。このため急激な血圧上昇が生じるのです。通常の降圧剤や安定剤を使用しても血圧が低下しない場合は、頭痛以外の症状がなくとも、CTやMRIなどの検査を受けた方が無難です。</li><a name="a5-02" class="anchor"></a><li><strong>失神後の激しい頭痛</strong><br />クモ膜下出血や脳出血の一部では、出血後に一時的な意識消失(失神)を生じます。小出血の場合は殆ど血圧上昇が見られない場合もあり、精査が必要です。</li><a name="a5-03" class="anchor"></a><li><strong>手足のしびれ感を伴う頭痛</strong><br />脳出血は手足の運動や知覚を伝える神経の通り道の近くに生じることが多く、頭痛に片側の手と足のしびれ感、あるいは麻痺がある場合は、その存在が強く疑われます。脳梗塞では、通常頭痛を伴いません。しかし、広い範囲の梗塞や出血を伴うもの(出血性脳梗塞)では、頭痛が生じる場合があります。大梗塞の場合、数時間で意識障害まで生じてしまいますので、手足のしびれる範囲が徐々に広がっていったり、麻痺を生じてくるようであれば、早急に医療機関を受診する必要があります。頚椎椎間板ヘルニアやその他の頚椎病変では、後頭部痛とともに片側上肢のしびれ感、痛み、麻痺を生じてくることがあります。適切な治療を受けないと症状が悪化してくる可能性がありますので注意が必要です。</li></ol></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 10① http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0050 10① 10①<br />『 メタボリックシンドロームと脳梗塞 』<br />平成20年09月27日(土)<br /><ol><li><a href="#a1">メタボリックシンドロームとは?</a></li><li><a href="#a2">メタボリックシンドロームの診断基準</a></li><li><a href="#a3">メタボリックシンドロームの頻度</a></li><li><a href="#a4">虚血性心疾患・脳梗塞に対するリスク</a></li><li><a href="#a5">発生機序</a></li><li><a href="#a6">運動療法</a></li><li><a href="#a7">食事療法</a></li><li><a href="#a8">脳梗塞予防のために必要な検査</a></li></ol><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 メタボリックシンドロームとは?</h2><ol><li>内臓肥満を基礎・背景として糖質・脂質の代謝異常あるいは、高血圧を併せ持つ病態</li><li>虚血性心疾患や脳梗塞を発症する危険率が2〜3倍高くなる</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />メタボリックシンドロームは、内臓肥満に糖尿病や高中性脂肪・高血圧が複数合併した状態です。 高血圧や糖尿病の患者で意外に心臓や脳の血管の障害を持たないグループが存在することは以前から知られていました。逆に高度の障害を持つグループも存在し、高血圧や糖尿病に肥満や高中性脂肪が加わると、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などの合併症が多くなることも分かってきました。ここからメタボリックシンドロームという概念が生まれてきたのです。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 診断基準</h2><ol><li>呼気終末・臍周囲径<br />男 ≧ 85㎝、  女 ≧ 90㎝<br />*内臓脂肪量は、男女とも≧100㎠</li><li>高血圧(収)≧130㎜hg かつ/または(拡)≧85㎜hg</li><li>空腹時血糖値 ≧110㎎/dl</li><li>脂質、中性脂肪 ≧150㎎/dl かつ/またはHDLコレステロール<40㎎/dl<br />①+②〜④のうちの2項目の該当があれば、メタボリックシンドロームと診断。<br />*②〜④で薬剤治療を受けていれば、その項目は満たすものと判断する。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />まず、臍囲を測りますが、立位で臍を起点として呼気終末(息を吐き終わった時点)で計測することが大切です。 男性では85㎝以上、女性では90㎝以上の時に内臓脂肪がCT計測上の100c㎡を超えていることが多く、内臓脂肪が蓄積していると判断します。呼気の時に測ると10〜20%高めになるので注意が必要です。 また、腹囲を測るよりCTでの計測が正確です。<br />この内臓脂肪蓄積(内臓肥満)に加えて①高血圧(収縮期血圧130㎜Hg以上あるいは拡張期血圧85㎜Hg以上)②空腹時血糖110㎎/dl以上③高中性脂肪(150㎎/dl以上)またはHDLコレステロール低値(40㎎/dl未満)の①〜③のうちの二つがあればメタボリックシンドロームと診断されます。<br />*HDLコレステロールは、いわゆる善玉コレステロールで動脈硬化を抑制する働きがあります。</div><br><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 メタボリックシンドロームの頻度</h2><div class="row"><div class="col-lg-5"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center" style="vertical-align:middle"><tbody><tr><th></th><th>男</th><th>女</td></tr><tr><th>30代</th><td>7.4%</td><td>0.6%</td></tr><tr><th>40代</th><td>16.5%</td><td>4.0%</td></tr><tr><th>50代</th><td>22.1%</td><td>6.2%</td></tr><tr><th>60代</th><td>27.4%</td><td>14.1%</td></tr><tr><th>70代</th><td>34.4%</td><td>18.8%</td></tr></tbody></table><p class="text-right" style="margin-top: -14px;">平成16年 国民健康調査</p></div><div class="col-lg-7"><ul><li style="margin-bottom:8px;">国際現在の腹囲測定基準での日本人の有病率<br />男=26.4% 女=12.4%</li><li>国際糖尿病学会のアジア人メタボリックシンドローム基準(男90㎝以上、女80㎝以上)では、男=12.4% 女=18.2%</li></ul></div></div><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />メタボリックシンドロームと診断される割合(有病率)は年令とともに増加する。<br />現在の日本の腹囲測定基準では年令を平均すると男性26.4%、女性12.4%となる。しかしこれを国際糖尿病基準学会アジア人メタボリックシンドローム基準の腹囲にあてはめると(男性90㎝以上、女性80㎝以上)有病率は男性12.4%、女性18.2%となります。現在の日本メタボリックシンドローム診断基準は日本動脈硬化学会など国内8学会で作成されましたが、腹囲基準に関しては、今後変更される可能性があります。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 虚血性心疾患・脳梗塞に対するリスク</h2><div class="row"><div class="col-lg-4"><img src="img/metaborikku-1_clip_image002.gif"></div><div class="col-lg-8">喫煙・糖尿病・高血圧・メタボリックシンドロームは、それぞれ虚血性心疾患、脳梗塞発症の危険性を2〜3倍高めると言われる。<br />仮に2倍とすると相乗効果によりリスクは図のようになる。</div></div><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />メタボリックシンドロームでは虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)、脳梗塞を発症する危険性が2〜3倍に増加しますが、喫煙・糖尿病・高血圧などもそれぞれ危険性を2〜3倍増加させます。仮に2倍とすると高血圧・糖尿病・喫煙・メタボリックシンドロームの4つを持つ場合、その危険性は2×2×2×2で16倍になります。<br />メタボリックシンドロームは、糖尿病や高血圧を含むものではなく、あくまでも一つの病態あるいは疾患だということを認識する必要があります。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 発生機序</h2><ul><li>人体内に余分に摂取されたエネルギーは、脂肪細胞(特に内臓脂肪)、肝臓、骨格筋に中性脂肪として蓄積される。</li><li>肥満になると脂肪内組織にある脂肪細胞が肥大化し、アディポサイトカイン分泌が増大。</li><li>インスリンの骨格筋や肝臓での働きを阻害する(インスリン抵抗性)</li><li>インスリン抵抗性の増大が、糖尿病・高脂血症・高血圧を発症あるいは悪化させる。</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />食物としての人体内に余分に摂取されたエネルギーは、脂肪細胞(特に内臓脂肪)、肝臓、骨格筋に中性脂肪として蓄積されます。脂肪組織内にある脂肪細胞の数が増してくるとともに脂肪細胞の一つ一つが肥大化していきます。<br />一方、血液中のブドウ糖(血糖)を低下させる働きをもつインスリンは、骨格筋や肝臓での血糖取り込みを促進しています。肥大化した脂肪細胞からは盛んにアディポサイトカインという物質が分泌され、インスリンの働きを阻害するようになります。このため血液中に十分なインスリン量があるにもかかわらず血糖が十分に低下しない状態すなわちインスリン抵抗性が生じます。<br />インスリン抵抗性が存在すると血液中の血糖を上げるため、膵臓からさらにインスリンが分泌され、高インスリン血症の状態になります。 これにより糖尿病・高脂血症・高血圧を発症あるいは悪化させる結果になります。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 運動療法</h2><ul><li>内臓肥満の軽減には運動療法が効果的。運動強度は、最大酸素摂取量の50%程度、脈拍数では120/分が目安。 3〜5分間運動後、中止して15秒間脈を測る。<br />推定脈拍数=15秒間の脈拍数×4+10 </li><li>1日の運動時間は、30分以上で200Kcalのエネルギー消費量、1週間で180分以上を目標、最低でも3回/週。<br />肥満者では、関節痛が生じやすく、水中歩行・固定式自転車による自転車漕ぎが良い。</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />人が運動などでエネルギーを消費する時には、まず血中や骨格筋中のブドウ糖をエネルギー源として消費しますが、運動が20分を超えてくると骨格筋や内臓脂肪に蓄えられた中性脂肪をエネルギー源として活用するようになり、肥大化した脂肪細胞が縮小し、内臓肥満の改善に役立ちます。<br />運動強度は最大酸素摂取量の50%程度が効果的です。その指標としては脈拍数が簡便で、120回/分が目安になります。これには個人差があるため、実際に3〜5分間運動をして(例えばジョギングなど)中止し、15秒間脈拍を測り、脈拍数を推定します。 15秒間の脈拍数×4+10(これは運動中止中の影響を補正するための数字)で計算します。<br />運動療法の頻度は前述した理由もあって、30分以上、200Kcalのエネルギー消費量を目標にします。一週間では、合計180分以上3回/週にします。運動によるインスリン抵抗性改善の効果は2〜3日しか持続しないため、3回/週を目標にするのです。また、肥満者では関節痛が生じやすいため、水中歩行や固定式自転車による自転車漕ぎが適しています。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 食事療法</h2>BMI(kg/㎡)25以下を目指して減量に努める。 <br><ol style="margin-top:5px;"><li>エネルギー摂取量 一般的な摂取エネルギー 設定値(25〜30kcal/kg標準体重)より低めに設定。</li><li>炭水化物:脂質:蛋白質の摂取エネルギー比を5〜6:3〜2.5:2〜1.5にする。</li><li>トランス型脂肪酸食(マーガリン、ビスケット)を控える。</li> <li>GI(Glycemic Index:血糖上昇係数)の高い炭水化物(単純糖質、白パン、パンケーキなど)をさけ、GIの低い炭水化物(玄米、胚芽パン、豆類など)摂取を心がける。</li><li>食物繊維は摂取エネルギーやGIを低くする効果があり摂取を心がける。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />エネルギー摂取量は身長から標準体重を割り出し(身長(m)×身長(m)×22)一般的な摂取量(25〜30kcal/kg)より低めに設定します。 摂取するエネルギー比は、炭水化物:脂質:蛋白質の比を5〜6:3〜2.5:2〜1.5にするのが一般的です。また、トランス脂肪酸食(マーガリン、ビスケットなど)はLDLコレステロール(悪玉コレステロール、動脈硬化を促進する)を増加させ、HDLコレステロールを低下させるため、摂取を控えます。<br />炭水化物には食後の高血糖の生じやすさの指標として血糖上昇係数(Glycemic Index:GI)があります。 GIが高いと食後の急な高血糖から高インスリン血症を招き、糖尿病・高脂血症・高血圧を助長します。 このためGIの高い炭水化物(単純糖質(砂糖など)白パン、パンケーキなど)を避け、GIの低い炭水化物(玄米、胚芽パン、豆類など)の摂取を心がけることが大切です。<br />さらに食物繊維は、満腹感を味わいながら摂取エネルギーやGIを低く抑える効果があり、20〜30g/日の摂取を心がけることも大切です。</div><br><br><a name="a8" class="anchor"></a><h2>08 脳梗塞予防のために必要な検査</h2><ol><li><strong>頚部内頚動脈エコー検査</strong><br />動脈硬化の程度を観察し、狭窄の有無を確認します。</li><li><strong>頭部MRI検査</strong><br />脳内のラクナ(小さな脳梗塞)の有無、脳内主要血管狭窄の有無を検査します。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳梗塞の根底にある病態は動脈硬化です。 したがって心臓から出て脳に至るまでの血管を検査することが大切です。<br>頚部内頚動脈は心臓から脳に血液を送る重要な血管で、超音波エコーを用いた検査で動脈硬化の程度や血管の狭窄の程度を観察することが出来ます。<br>頭部MRI検査では、脳内のラクナ(小さな脳梗塞)の有無や脳内主要血管狭窄の有無を確認することで脳梗塞発症の危険性をある程度予測し、予防に役立てることが出来ます。<br>メタボリックシンドロームでは動脈硬化が進行することで脳梗塞や虚血性心疾患の危険性が増大します。 脳のみならず、心臓や他の臓器の血管系の検査も有用と考えていいと思います。</div><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 09 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0045 09 09<br />『 良性脳腫瘍1 髄膜腫 』<br />平成17年06月25日(土)<br />体のどの部位でもそうですが、腫瘍には悪性のものも良性のものもあります。一般的には、一度手術で完全に摘出できれば再発しないのが良性腫瘍。完全に摘出できても再発してくる可能性が高いものが悪性腫瘍ということになります。したがって悪性腫瘍では、手術後も放射線治療や抗癌剤投与などの治療が必要になります。髄膜腫は脳腫瘍の中でも代表的な良性腫瘍のひとつです。<br><br><ol><li><a href="#a1">髄膜腫とは?</a></li><li><a href="#a2">髄膜腫の好発部位</a></li><li><a href="#a3">髄膜腫の症状</a></li><li><a href="#a4">髄膜腫の診断</a></li><li><a href="#a5">髄膜腫の治療・手術</a></li><li><a href="#a6">髄膜腫の治療・ガンマーナイフ</a></li><li><a href="#a7">無症候性髄膜腫</a></li></ol><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 髄膜腫とは?</h2><br><ol><li>脳を被うクモ膜の表層細胞から発生する最も良性な腫瘍のひとつ。</li><li>全脳腫瘍中約20%を占め、40〜59才に好発。女性に多い(男女比1:2)</li><li>稀に悪性のことがあり、肺・肝・骨に転移する。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳は、クモ膜という内側の膜と硬膜という外側の膜でほぼその全周を包まれています。この二つの膜を総称して髄膜と呼びますが、髄膜腫はこの髄膜の一部が腫瘍化したものです。<br />したがって、腫瘍が大きくなってくると、脳を外側から圧迫するようになります。脳腫瘍の中で最も多いのは、神経膠腫と呼ばれる脳そのものから発生する腫瘍ですが、髄膜腫はこれに続いて二番目に多い腫瘍です。<br />神経膠腫が良性のものから悪性のものまで幅広い性質をもつのに対し、髄膜腫はほとんどは良性腫瘍です。<br />中年の女性に多く見られますが、高齢者や子供でも発生してくることがあります。基本的に髄膜腫は良性腫瘍ですが、悪性のことがまれにあり(1〜3%)、その場合平均生存期間は5年以内とされています。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 髄膜腫の好発部位</h2><br><img src="img/vol09gazou11.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="図-髄膜腫の好発部位"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />髄膜は脳のほぼ全周を被っており、どの部位からでも発生してきます。最も多い部位は左右の大脳半球を分ける大脳鎌近傍、ついで大脳半球外側部(円蓋部)で、両者を併せて全体の約50%近くに達します。その他、頭蓋底部(脳は頭蓋底と呼ばれる骨の土台の上に乗った状態になっています)、脳室内などがあります。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 髄膜腫の症状</h2>髄膜腫の症状は、頭痛を除いて、髄膜腫に圧迫される脳の機能低下による症状として出現します。手足の麻痺・知覚異常(シビレ感など)・歩行障害・精神症状など、腫瘍のできる部位によって違ってきます。良性腫瘍のため、腫瘍の発育が遅く、腫瘍発生から症状出現まで、数年〜数十年を要すと考えられています。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頭痛は、どこにできる髄膜腫にでも見られる一般的な症状です。脳そのものから発生し脳を破壊して成長する腫瘍とは違って、髄膜腫は外側から脳を圧迫します。したがって、その他の症状は圧迫される脳の部位によって違ってきます。<br />前頭葉の前方部では精神症状が、後半部では脳とは反対側の手足の麻痺が出現します。頭頂葉では反対側の知覚異常や精神症状が、後頭葉では視覚の異常が、側頭葉では言語障害などの症状が出現します。<br />また頭蓋底部では種々の働きをもつ脳神経があるため、様々な症状が出現します。例えば、視神経であれば視力低下が、顔面神経であれば顔面筋の麻痺が出現します。<br />髄膜腫は良性のため発育が遅く、部位によっても違いますが、腫瘍発生から症状が出現する大きさになるまで、数年〜数十年かかると考えられています。見つかった時には、驚くほどの大きさになっていることも珍しくありません。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 髄膜腫の診断</h2>頭部CT検査やMRI検査で診断できます。特にMRI検査では、脳を覆い包む膜(硬膜)側から脳内に突出する腫瘍がはっきりと描出されます。造影剤を注射して検査を行うと腫瘍全体がほぼ均一に造影されることが特徴的です。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />髄膜腫の診断は、CTやMRIなどの頭の検査であれば、比較的簡単です。頭蓋骨に接する硬膜側から脳へと向かって突出する腫瘍が認められます。造影剤を注入するとほぼ均一に造影されます。<br />また、脳血管撮影で硬膜の血管から腫瘍内に入り込む血管の発達が著しく、特徴的な所見です。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 髄膜腫の治療・手術</h2>髄膜腫ができる部位によって若干の違いはありますが、手術治療が原則です。大部分が良性腫瘍のため、完全に摘出できれば再発はありません。しかし、部位によっては部分摘出しかできない場合もあり、この場合は再拡大してくる危険性があり、定期的に検査をし、必要に応じて再手術の必要があります。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />髄膜腫の治療は手術による摘出が原則です。しかし、腫瘍内に重要な動脈や静脈・神経などが巻き込まれているような場合では部分摘出を余儀なくされることもあります。特に頭蓋底にできる場合は、内頚動脈や視神経・その他の脳神経が巻き込まれ、全摘出が困難になります。<br />このような場合、神経や血管の温存のため、やむなく部分摘出に終わることがあります。このような場合では、残存した腫瘍が再び大きくなってくる可能性があり、定期的に検査して腫瘍の大きさを確認する必要があり、場合によっては再手術する必要があります。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 髄膜腫の治療・ガンマーナイフ</h2>髄膜腫のできる部位によっては、手術が極めて困難で、また高齢・心臓病などの理由で手術が不能な場合もあります。このような場合特殊な放射線治療(ガンマーナイフ)で治療することがあります。髄膜腫の直径が3cm以下のものであれば、ある程度の効果はありますが、完全に消失させることはできません。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />摘出が困難な部位にある髄膜腫や、高齢者・心臓疾患などの理由で全身麻酔が不可能な場合は、特殊な放射線治療(ガンマーナイフ)が行われることもあります。しかし、ガンマーナイフは治療効果がない場合もあり、また効果があっても、髄膜腫の縮小や増大傾向の停止にとどまり、髄膜腫が完全に消失することはありません。治療後も定期的に検査して効果を見極める必要があります。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 無症候性髄膜腫</h2>症状がなく、小さい髄膜腫の場合は、CTあるいはMRIで定期的に観察する必要があります。約30%の症例では、腫瘍は増大します。症状が出現してくる場合や腫瘍の増大速度が速い場合は、治療する必要があります。 <div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />MRI検査の普及に伴い、無症候性(症状のない)髄膜腫が発見されることが多くなりました。1センチにも満たない小さな段階で見つかることもあり、このような場合は経過観察となります。しかしこのような髄膜腫でもそのうちの約30%が増大してくると言われています。一般的に、髄膜腫が大きくなればなるほど手術は難しくないりますので、このような場合は手術治療あるいはガンマーナイフによる治療が必要となってきます。</div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 08 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0040 08 08<br />『 脳動脈瘤 』<br />平成16年12月11日(土)<br />日本では、MRI(MRA)検査が普及するにしたがって、無症状・未破裂の脳動脈瘤が見つかることが多くなってきています。破裂する以前に安全に治療できるのがベストですが、いろいろと問題があることも事実です。また、正確な知識を持たないがために、いろいろと悩まれている方もいます。今回は、主に未破裂脳動脈瘤についてお話します。<ol><li><a href="#a1">脳動脈瘤とは?</a></li><li><a href="#a2">脳動脈瘤(図解)</a></li> <li><a href="#a3">脳動脈瘤破裂の危険率</a></li><li><a href="#a4">脳動脈瘤の治療(1)</a></li><li><a href="#a5">脳動脈瘤の治療(2)</a></li><li><a href="#a6">未破裂脳動脈瘤治療の問題点</a></li><li><a href="#a7">解離性脳動脈瘤</a></li></ol><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 脳動脈瘤とは?</h2>脳動脈壁の脆弱な部分が、加齢・高血圧・その他の原因により膨隆した状態。破裂するとクモ膜下出血を生じ、死亡率が高い(約50%)。<br>脳動脈瘤は、一部の例外を除いて、血管が枝分かれする部分(分岐部)に発生する。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳動脈瘤は、生まれつき(遺伝性)あるいは動脈硬化に伴ってできた動脈壁の弱い部分が加齢・高血圧・その他の原因により膨隆した状態です。<br />膨隆した動脈壁は弱く、破裂しやすい状態になっています。破裂すると脳を包むクモ膜下のスペース(クモ膜下腔)に出血し、クモ膜下出血となります。<br />クモ膜下出血時の症状は、突然始まる頭痛で、『ハンマーでいきなり殴られたような痛み』などと表現されます。脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血は死亡率が高く(約50%)、外傷やその他の原因によるものとは病態が異なります。<br />脳動脈瘤のほとんど(約90%以上)は、ウィリス動脈輪といわれる大脳の底部にあたる部分と、脳幹の前面に沿ってウィリス動脈輪に至る椎骨・脳底動脈系の、比較的太い動脈が枝分かれする部分にあります。この部はMRI(MRA)検査で充分に把握できるところで、2ミリ以上の大きさであれば多くが発見できます。<br />欧米のデータでは(解剖した人のデータ)、脳動脈瘤は人口の7%前後に見られるというのがありますが、これは1ミリ以下から数センチのものまで含んでおりデータとしてはあまり参考になりません。日本の脳ドックやその他のデータでは、検査した人の1%前後というのがほとんどです。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 脳動脈瘤(図解)</h2><br><br><img src="img/vol08gazou11.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="脳動脈瘤"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />簡単に脳動脈瘤を図示してみました。<br />1本の血管(親血管)が枝分かれする部分に多く発生するのは前述したとおりです。枝分かれするところは、親血管内を流れてきた血流の衝撃が血管壁に直接あたり、ここの血管壁が脆くなっていると膨らみやすいためです。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 脳動脈瘤破裂の危険率</h2>脳動脈瘤破裂の年間発生率は、おおよそ1%前後。大きくなるにつれて破裂する可能性は高くなると考えられており、10mmくらいのものでは2%ぐらいとされている。<br />多発性のもの・家族性のもの・喫煙者・高血圧患者で破裂率が高い。<br />また、除々に大きくなるものでは破裂の可能性が高くなる。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳動脈瘤の年間破裂率はおおよそ1%前後と考えられています。大きさが増すにつれて破裂率は高くなり、10ミリくらいのものでは2%程度とされています。沖縄県の人口は約130万人、動脈瘤をもつ人が1%とすると1万3千人、1年間では130人がクモ膜下出血を生じていることになります。はっきりとしたデータはありませんが、これはほぼ実数に一致していると考えられます。<br />動脈瘤のうち破裂した脳動脈瘤に伴うもの(多発性)・家族性のもの・喫煙者・高血圧患者では、破裂の危険が高いとされています。家族性のものの頻度はさほど高いものではありませんが、親・兄弟姉妹に脳動脈瘤破裂を起こした人がいれば、念のためMRI検査を受けておくべきだと考えられます。<br />脳動脈瘤は急にできあがるものではありません。当初は顕微鏡でしか確認できないほどのサイズであったものが、徐々に大きくなるものと考えられます。脳動脈瘤の血管壁の強さには個人差がありますが、一定の大きさになって内部の圧力に耐えられなくなった時点で破裂します。この大きさは一部の例外を除いて、最小で3〜4ミリ程度と考えられています。3〜4ミリになったら確実に破裂するというわけではなく、このサイズになると破裂する危険性が出てくるということです。<br />MRI検査で脳動脈瘤が見つかり、いろいろな理由で治療をせずに経過を見る場合でも、サイズが大きくなるということは破裂する危険性が高いと考えられます。これは風船が膨らむのと同じ理由で、脳動脈瘤が大きくなるにつれて血管壁が引き伸ばされて薄くなり、破裂しやすくなると考えられるからです。<br />また、動脈瘤が破裂するとその壁に穴があいた状態になっていますが、ここは一時的に血液の固まりで塞がれます。しかし、この状態では再度出血する可能性が高く、クモ膜下出血後早期に破裂の予防治療が行われるのはそのためです。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 脳動脈瘤の治療(1)</h2><b>開頭手術</b><br>顕微鏡下で直接脳動脈瘤を観察し、動脈瘤頚部にクリップをかける手術を行う。<br>最も確実な方法であるが、高齢者や心臓などの重要臓器に障害がある人では、合併症を起こす危険性が高くなる。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><b>開頭手術</b><br>全身麻酔下で、頭蓋骨を開き(開頭手術)、脳動脈瘤の頚部(血液が親動脈から動脈瘤に入る入り口)に外側から金属製のクリップをかける方法。手術用顕微鏡を使いながら行われます。これにより動脈瘤内への血液流入はなくなり、動脈瘤はしぼみ、破裂しなくなります。脳動脈瘤破裂を予防する治療法としては、最も確実な方法です。<br />しかし、全身麻酔で行うため、高齢者や心臓疾患をもつ人では術後合併症の危険性が高くなる場合があります。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 脳動脈瘤の治療(2)</h2><b>血管内手術</b><br />血管内から動脈瘤内にコイルを詰める治療法。高齢者や全身状態の悪い人でも、比較的安全に治療ができる。しかし動脈瘤の完全閉塞が80〜95%と低く、また一度閉塞した部分が再度動脈瘤になる場合もあり、定期的に血管撮影を要することが難点。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><strong>血管内手術</strong><br>脳血管撮影の手法を用いて、通常は大腿部の動脈から脳動脈瘤内まで細いカテーテルを通し、レントゲン透視下で確認しながら動脈瘤内に金属製のコイルを詰める方法です。局所麻酔下でも可能なため、また開頭手術と比較して他臓器への悪影響も少なく、高齢者や全身状態の悪い方でも治療が可能です。<br />最近では日本でも脳動脈瘤の約30%の人がこの治療を受けています。しかし、動脈瘤を完全に閉塞できるのが80〜95%と低く、また一度閉塞した部分が再度動脈瘤になることもあり、治療後も定期的な血管撮影が必要になるなどの問題があります。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 未破裂脳動脈瘤治療の問題点</h2>開頭手術、血管内手術いずれもある程度の合併症を起こす可能性がある。<br />一般的には双方とも死亡率1%前後、何らかの合併症5%前後と報告されている。<br />しかし破裂(クモ膜下出血)による死亡率は50%、後遺症は20〜30%に達するのも事実であり、日本全国で年間約1万5千人がクモ膜下出血を生じている。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />開頭手術・血管内手術のいずれも、治療に伴い合併症を引き起こす危険性があります。一般的には双方とも死亡率1%前後、手足の麻痺や言語障害などの合併症が5%前後とされています。これはあくまでも脳動脈瘤全体の平均であり、椎骨・脳底動脈系の動脈瘤、動脈瘤の大きさが25ミリ以上のいわゆる巨大動脈瘤で危険性は高くなります。<br />しかし、動脈瘤が破裂しクモ膜下出血を起こすと、死亡率は50%前後、後遺症を残す人は20〜30%に達します。後遺症というのは、いわゆる植物状態から自立生活が可能な軽度の障害を含みます。日本では年間約1万5千人がクモ膜下出血を生じており、破裂予防の治療ができれば、それにこしたことはありません。<br />未破裂脳動脈瘤が見つかった場合。治療を受けるかどうかは、患者さん本人が決めることです。主治医と良く相談し、自分自身で納得のいく選択をするのがベストです。治療せずに経過をみる場合でも、定期的に(半年〜1年毎)MRI(MRA)検査を受け、動脈瘤が拡大していないか確認すべきです。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 解離性脳動脈瘤</h2>血管壁そのものに解離が生じて、その空間に血液が流入・貯留するようになり、クモ膜下出血や脳梗塞の原因になる。<br><img src="img/vol08gazou21.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" style="margin-top:13px;" alt="解離性脳動脈瘤""><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳動脈瘤の特殊なものとして、解離性脳動脈瘤があります。最近までは、稀なものと考えられていましたが、MRIやその他の診断技術の向上に伴い発見されることが多くなりました。<br />これは、血管壁内側に何らかの原因で亀裂が部分的に生じ、血管壁内に血液が流入するようになった状態です。この動脈瘤より外側の血管壁が弱ければ、クモ膜下出血を生じます。<br />また、動脈瘤が膨らんで血管腔内へ突出して血管を閉塞すると脳梗塞を生じます。クモ膜下出血と脳梗塞の頻度は、解離性脳動脈瘤ができる部位によって違いもありますが、ほぼ同程度です。もちろん、無症状のこともあります。治療は、開頭手術による親動脈の結紮(糸あるいはクリップで閉塞すること)あるいは血管内手術による親動脈の閉塞です。稀と考えられていますが、自然に消失することもあります。</div><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 07 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0035 07 07<br />『 脳出血 』<br />平成16年11月13日(土)<br />かつて日本では脳卒中(脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血)死亡率が高く、1965年頃では世界一で、そのうち脳出血の占める割合が高率でした。しかし、高血圧治療の普及・食生活の改善により高血圧治療が進み、これとともに1975年には脳出血死亡率は脳梗塞死亡率よりも低下。脳出血死亡率は1980年代までは低下しましたが、その後はほぼ横ばいの状態が続いています。<br />年間脳出血発症率も同様に低下し、現在では人口千人対で1人前後になっています。しかし、出血する部位によっては死亡率も高く、障害が残る可能性も高いことから、可能な限り予防すべき疾患であることに変わりはありません。<br><br><ol><li><a href="#a1">脳出血とは?</a></li><li><a href="#a2">高血圧性脳出血 </a></li><li><a href="#a3">脳の解剖(1)</a></li><li><a href="#a4">脳の解剖(2)</a></li><li><a href="#a5">高血圧性脳出血の分類(1)</a></li><li><a href="#a6">高血圧性脳出血の分類(2)</a></li><li><a href="#a7">高血圧性脳出血の分類(3)</a></li><li><a href="#a8">その他の原因による脳出血</a></li><li><a href="#a9">脳出血の治療</a></li><li><a href="#a10">MRIの役割</a></li></ol><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 脳出血とは?</h2>脳実質内に出血し、血腫(血液の塊)を形成することを脳出血という。その大部分は高血圧が原因で、この場合は高血圧性脳出血と称す。高血圧以外では、脳血管の異常があって出血することがある。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳の内部(実質内)に出血する場合、脳(内)出血と総称します。脳の血管に異常があって出血する場合もありますが、その多くは高血圧に伴う高血圧性脳出血です。症状としては、突然始まる頭痛・意識障害・手足の麻痺(右あるいは左半身が動かなくなる片麻痺が多い)などで、これら症状が一つあるいは重複して出現します。稀に無症状のものが、MRI検査で見つかることもあります。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 高血圧性脳出血</h2>長期にわたり高血圧の状態が続くと、脳実質内の小動脈の血管壁が変性して脆くなり、小動脈瘤(血管の壁の一部が風船状に膨らむこと)が形成され、これが破れて出血する。<br>出血する部位により症状や予後(後遺症の程度)に違いがあり、五つに分類されている。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />高血圧性脳出血は、脳の表面を走る太い血管から枝分かれした小動脈(1ミリ以下)にできた小さな動脈瘤が破裂することが原因です。<br>出血量は出血部位にもよりますが、一般的には血圧が高いほど大きくなります。出血は30分程度で止まりますが、強固な止血が完成するには6時間程度を要するとされています。しかし、出血した時点では、普段よりさらに血圧が高い状態になります。これは、出血により頭蓋内の圧が高まり、普段の血圧では出血部以外への健康な脳への血流が低下するため、人間の体はこれを防ごうと血圧を上昇させるからです。ですから、出血を最小限度に抑えるためには血圧を適度にコントロールする必要があります 。<br>一昔前は、『脳卒中患者は倒れた場所にそっと寝かせ、動かさない方が良い』とされていましたが、これは効果的な血圧降下剤がない時代の話です。<br>現在は即効性の優れた降圧剤がいくつもあり、脳卒中患者は速やかに救急車で医療施設に収容するのが一番です。<br>ただ、動かさないということにも一理あります。それは、『そっと寝かせておく』という部分です。脳卒中早期で意識がある場合、患者さん自身は急に手足が動かなくなったことに戸惑い、焦り、興奮して、血圧が上昇しがちです。周りにいる家族まで一緒になって焦り・興奮すると、患者さんの血圧もさらに上昇します。ご家族の誰かに突然手足の麻痺が出現したら、焦らず、騒がず、落ち着いて救急車を要請し、患者さん本人にも優しく・落ち着けるように接してあげてください。</div><br><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 脳の解剖(1)</h2><br><img src="img/vol07gazou11.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="脳の解剖1"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />高血圧性脳出血の好発部位を図示します。手足を動かす神経線維の通り道である内包を取り囲む『被殻』・『視床』はそれぞれ1位・2位の好発部位です。脳出血の多くが麻痺を伴うのもこのためです。また、図示してはいませんが、脳表面の脳皮質の下方(皮質下)も好発部位です。<br></div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 脳の解剖(2)</h2><br><img src="img/vol07gazou21.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="脳の解剖2"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳から出た神経線維は、後頭部にある橋を通って脊髄の中を走り、手足に分布していきます。この『橋』およびその後方にある小脳も脳出血の好発部位です。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 高血圧性脳出血の分類(1)</h2><ol><li><a href="#a5-01">被殻出血(全体の約60%)</a><br />最も多いタイプ。被殻は、手足を動かす神経線維が通る内包のすぐ側にあるため、出血と反対側の手足の麻痺や知覚障害が出現しやすい。</li><li><a href="#a5-02">視床出血(約10数%)</a><br />二番目に多いタイプ。小さな血腫でも意識障害が出現しやすい。知覚障害が必発で、時に麻痺も出現する。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />高血圧性脳出血は、その出血部位により5種類に分類されています。<br><ol><a name="a5-01" class="anchor"></a><li><strong>被殻出血</strong><br />最も多いタイプ。血腫(出血した血の塊)が大きくなるにつれて死亡率が高くなります。また、内包まで出血が及ぶと、後遺症として出血とは反対側の麻痺が残ってしまいます。</li><br><a name="a5-02" class="anchor"></a><li><strong>視床出血</strong><br />2番目に多いタイプ。視床は、知覚を手足から脳に伝える中継地点であるため、知覚障害が出現します(後遺症としても残存)。また、内包に出血が及ぶと、被殻出血と同様に麻痺が出現します。さらに視床の近くには、人間の意識の維持に関連した神経線維が走っており、意識障害が出現することもあります。もちろん、出血量が多いと、死亡率も高くなります。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 高血圧性脳出血の分類(2)</h2><ol start="3"><li><a href="#a6-01">橋(脳幹)出血</a><br />最も重症。発症早期から意識障害・四肢麻痺が生じ、死亡率も高い(約50%)</li><li><a href="#a6-02">小脳出血</a><br />急激なめまい・頭痛・嘔吐で発症することが多い。血腫の大きさにもよるが、発症時には意識清明でも、徐々に意識障害が出現してくることが多い。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />以下の3部位の頻度は、各々約10%程度です。<br /><ol start="3"><a name="a6-01" class="anchor"></a><li><strong>橋(脳幹)出血</strong><br />最も重症なタイプです。橋は意識を保つ神経線維・手足を動かす神経線維・手足の知覚を伝える神経線維の通り道であり、意識障害・手足の麻痺はほぼ100%出現します。死亡率もほぼ50%と高く、生存しても重度の後遺症を残すことがほとんどです。ごく稀に、少量の出血で済み、後遺症無く回復する人はいます。</li><br><a name="a6-02" class="anchor"></a><li><strong>小脳出血</strong><br />小脳出血は、出血量が少量であれば、ごく軽い後遺症(めまいなど)を残すだけで、一人暮らしも可能なまでに回復します。しかし、出血量が多くてその前方にある橋まで障害が及ぶと、死亡率も高くなり、手足の麻痺などの後遺症を残す可能性も高くなります。</li></ol></div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 高血圧性脳出血の分類(3)</h2><ol start="5"><li><a href="#a7-01">皮質下出血</a><br />大脳皮質の下方数mm〜数cmのところに血腫が形成されるタイプ。<br>血腫ができる部位により、麻痺や視野障害などの症状が出現するが、最も一般的な症状は、頭痛・けいれんである。生命予後に関しては最も良好である。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol start="5"><a name="a7-01" class="anchor"></a><li><strong>皮質下出血</strong><br />皮質下出血の症状は一定しません。大脳皮質は神経細胞が存在する厚さ約10ミリくらいの層で、神経細胞からは神経線維が出て脊髄やその他の領域に分布しています。<br />皮質下出血ではこの神経線維が障害されるため、その上にある大脳皮質の持つ機能が障害されます。大脳皮質はその部位により機能が決まっています。例えば、後頭葉であれば視覚、左側頭葉であれば言語、頭頂葉であれば知覚、前頭葉後部では運動、の機能があり、皮質下出血ではそれぞれの障害が出現する可能性があります。<br />しかし、最も一般的な症状は、頭痛・けいれんです。これは、大脳皮質は意外と広く、あまり機能を持たない部分も多く存在するからです。<br />死亡率は高血圧性脳出血の中では最も低く、後遺症の有無は出血の部位・大きさによって違ってきます。</li></ol></div><br><br><a name="a8" class="anchor"></a><h2>08 その他の原因による脳出血</h2><ol><li><a href="#a8-01">脳動静脈奇形、海綿状血管腫など</a><br />脳内にできる異常血管が原因で出血。</li><li><a href="#a8-02">モヤモヤ病</a><br />内頚動脈の閉塞が原因で微小なモヤモヤした血管が多数形成され、これより出血。</li><li><a href="#a8-03">脳アミロイドアンギオパチー</a><br />高齢者に発症する。脳血管へのアミロイド沈着が原因。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><a name="a8-01" class="anchor"></a><li><strong>脳動静脈奇形、海綿状血管種など</strong><br />脳動静脈奇形は、先天性の血管の異常です。通常、血液は動脈→毛細血管→静脈の順に流れ、毛細血管は細く、この部で血液の流れも遅くなります。脳動静脈奇形では、この毛細血管がなく異常血管が存在している状態です。このため血液の流れはスピードが落ちることなく異常血管・静脈に流れこみます。異常血管壁・静脈壁ともに過度の圧力には弱く、何らかの拍子に破れ、脳出血の原因になります。 <br />海綿状血管種も血管奇形の一種です。薄い血管壁をもつ異常血管が密に集まり、通常は数ミリの塊となって脳内に存在し、脳出血の原因になります。脳内に単発することもあれば、多発性に存在することもあります。</li><br><a name="a8-02" class="anchor"></a><li><strong>モヤモヤ病</strong><br />脳血管撮影で、『モヤモヤ』した異常血管が見られることから、このように命名されましたが、『ウィリス動脈輪閉塞症』ともいいます。はっきりとした原因は不明ですが、脳内内頚動脈が閉塞〜強度狭窄し、これを補う形で『モヤモヤ』した異常血管が形成されます。この異常血管の血管壁は脆く、出血することがあります。</li><br><a name="a8-03" class="anchor"></a><li><strong>脳アミロイドアンギオパチー</strong><br />高齢者に発症する皮質下出血の中には、脳血管へのアミロイド沈着が原因で出血する場合があります。他に出血しやすい原因がないのに短期間に脳出血を繰り返し、気づかれる場合が多く、これといって効果的な予防法もありません。アミロイドの沈着の原因については不明です。</li></div><br><br><a name="a9" class="anchor"></a><h2>09 脳出血の治療</h2><ol><li><a href="#a9-01">外科的治療</a><br />血腫が大きい場合や異常血管がある場合には手術的血腫除去の必要がある。水頭症合併の場合にはドレナージを行う。</li><li><a href="#a9-02">内科的治療</a><br />再出血防止のため高血圧管理。出血に伴う頭蓋内圧亢進を改善するため、脳圧降下剤の点滴などを行う。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a9-01" class="anchor"></a><li><strong>外科的治療</strong><br />血腫が大きくて生命に関わるような場合、モヤモヤ病以外の異常血管が原因の場合は、基本的には開頭手術が行われます。前者は放っておくと周囲脳の障害から脳ヘルニアが出現してくることを予防するため、後者は再出血予防のためです。また、皮質下出血の場合、ある程度血腫が大きくて手術によるメリットが大きい場合は手術が行われます。<br>また、脳深部にある比較的大きな出血、命に関わる程ではないが早期回復の目的で、定位的血腫吸引術が行われることがあります。これは頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細い管を血腫内に挿入し、血腫を吸引する方法です。さらに、皮質下出血を除く出血では脳室(側脳室・第3脳室・第4脳室)に近く、この中に出血することがあります。脳室の中は脳脊髄液が流れており、出血によりこの流れがブロックされると、水頭症の状態になることがあります。この治療のため、ドレナージ手術が行われます。</li><br><a name="a9-02" class="anchor"></a><li><strong>内科的治療法</strong><br />脳出血の多くは内科的に治療されます。まず、血圧を正常血圧に近い値に管理し、再出血の予防につとめます。<br />脳出血が起きると、血腫の圧迫により周囲の健康な脳に浮腫が生じてきます。脳浮腫が高度になると頭蓋内圧が亢進し、脳ヘルニアを生じて死亡する可能性が高くなります。これを予防するため脳圧降下剤の点滴を行います。脳浮腫は出血後3〜4日目をピークに、血腫が自然に吸収されるまで続きます。浮腫の程度が強いと周囲の脳まで障害されてしまうので、脳圧降下剤の点滴は1〜2週間続けられますが、脳浮腫が完全に消失するには数ヶ月を要します。</li></ol></div><br><br><a name="a10" class="anchor"></a><h2>10 MRIの役割</h2><ol><li><a href="#a10-01">脳出血早期の診断には、CTが優れているが、MRIでも診断可能。</a></li><li><a href="#a10-02">症状のない脳動静脈奇形やモヤモヤ病の診断に非常に優れている。</a></li><li><a href="#a10-03">無症候性(症状のない)の脳出血があり、これの診断に有効。出血後何年を経ても診断が可能。</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br /><ol><a name="a10-01" class="anchor"></a><li>脳出血そのものの診断には、CTが優れています。しかし、高血圧以外に原因のある脳出血の診断にはMRIが優れています。個人的な意見ですが、高血圧性脳出血の場合でも、合併する脳内の異常を発見できるため、可能な時期にMRI検査を行うべきだと思います。</li><br><a name="a10-02" class="anchor"></a><li>数ミリ以下のものを除けば、無症候性の脳動静脈奇形の発見が可能ですし、モヤモヤ病の診断も可能です。診断できれば、出血を防ぐ治療が可能な場合もあります。</li><br><a name="a10-03" class="anchor"></a><li>ごく稀に、MRI検査で無症候性の脳出血が見つかります。また、ごく少量の出血を除けば出血後何年経っても診断が可能です。何年も経った慢性期のCT検査では、出血と梗塞の鑑別は難しいものですが、MRIでは可能です。脳出血と脳梗塞では治療方針も違ってきますので、いわゆる脳卒中(脳出血・脳梗塞・クモ膜下出血)後の人にとって、定期的なMRI検査は重要です。</li></ol></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 06 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0030 06 06<br />『 糖尿病と運動療法 』<br />平成16年10月09日(土)<br />糖尿病を患っている人は年々増加する傾向にあります。しかし、糖尿病に関する知識は浅く、糖尿病患者ですら誤った考え方をしたりしています。<br>糖尿病の運動療法に対する認識もその代表的なもので、食事制限を無理に行わなくても、運動療法で体重を落とせば良い、と考えたりしています。<br>現実には、食事制限は糖尿病の治療上どうしても必要なものですし、通常の運動では体重を減少させるほどの熱量消費はできません。今回は、糖尿病の運動療法にはどんな意義があるか、それがテーマです。 <br><br><ol><li><a href="#a1">栄養素の働き</a></li><li><a href="#a2">糖尿病</a></li><li><a href="#a3">糖尿病の症状</a></li><li><a href="#a4">糖尿病の診断</a></li><li><a href="#a5">健常者のインスリン分泌動態</a></li><li><a href="#a6">糖尿病の成因分類</a></li><li><a href="#a7">糖尿病の治療</a></li><li><a href="#a8">血糖コントロール状態の評価</a></li><li><a href="#a9">糖尿病の運動療法</a></li></ol><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 栄養素の働き </h2><br><div class="table-responsive"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center" style=" style="vertical-align:central""><thead><tr><th scope="col">栄養素<th scope="col">主な貯蔵物質<th scope="col"> <th scope="col">主な作用物質<tbody><tr><th scope="row">糖質<td>グリコーゲン<br> (肝臓・筋肉)<td>⇔<td>グルコース<br> (エネルギー源<tr><th scope="row">脂質<td>トリグリセリド<br> (肝臓・各種臓器)<td>⇔<td>遊離脂肪酸<br> (エネルギー源)<br> コレステロール<br> (細胞膜構成成分)<tr><th scope="row">蛋白質<td>蛋白質<br> (各種臓器)<td>⇔<td>各種アミノ酸<br> (蛋白質構成成分)</table></div><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>人間は食物を摂取し、それが腸管から吸収されて、エネルギー源となったり、体の構成要素になったりします。<br>糖質は最も重要なエネルギー源で、腸管から吸収された糖質は肝臓や筋肉に蓄えられ(グリコーゲン)、各臓器の必要に応じて血液中に放出され(グルコース)、消費されていきます。<br>各種臓器は、グルコースが枯渇してくると、脂肪酸をエネルギー源として利用します。しかし、脳はグルコースのみしか利用できず、このため低血糖になると集中力が途切れたり、頭がボーッとした感じになったりします。<br>血糖値が70mg/dl以下では脳細胞の機能異常が出現し、20mg/dl以下では意識消失し、これが長時間に及ぶと不可逆的な変化が脳に生じてしまいます。<br></div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 糖尿病</h2><br><ul><li>糖尿病罹患率は、40歳以上では5〜10%に達すると推定されている</li><li>インスリンは膵臓のベータ細胞から分泌されるホルモンであるが、これが不足あるいはその作用が低下(インスリン抵抗性)することによる、生体内での代謝障害</li><li> インスリンの主な働き<br />1.肝臓でのグリコーゲン合成促進<br />2.骨格筋や脂肪組織で、グルコースの細胞内取り込み促進</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>糖尿病患者は年々増加する傾向にあります。<br>日本では第二次世界大戦後、食生活が激変し、欧米型の高カロリー食を食べるようになったことと関連しています。<br>元々、人間は一度摂取した栄養素を体に貯留する構造になっています。<br>人類は、はるか昔からいつ食物にありつけるかも分からない狩猟生活が長く続き、数日の間食物にありつけなくても活動できるようになっています。<br>そういう構造の体に毎日三度三度しかも高カロリーの食事をしていると、いろいろと不都合が生じてくるのも理解できると思います。<br>糖尿病では、膵臓から分泌されるインスリンの量が不足あるいは各臓器での作用が低下しています。<br>インスリンは、血液中のグルコースを肝臓や筋肉内に取り込み血糖値を低下させる働きを持つ唯一のホルモンです。<br>これに対し血糖値を上昇させるホルモンには種々あり、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンの増加)、クッシング症候群(副腎皮質ホルモン増加)などでも高血糖になります。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 糖尿病の症状</h2><br><ol><li>高血糖による症状<br />全身倦怠感、口渇、多飲、多尿、体重減少、易感染性</li><li>急性合併症による症状<br />ケトアシドーシス、非ケトン性高浸透圧性昏睡</li><li>慢性合併症<br />1.糖尿病性網膜症(成人中途失明原因第1位)<br />2.糖尿病性腎症(人口透析患者の原疾患で第2位)<br />3.糖尿病性神経症</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>糖尿病ではインスリンの働きが悪くなり、各種臓器での糖利用が障害されてエネルギー不足の状態となり全身倦怠感が出現してきます。また、免疫力も低下して細菌やウィルスに感染しやすくなります(易感染性)。加えて糖をエネルギー源としてうまく利用できないため、替わりに体にある脂肪分を利用するようになり、これに伴い体重が減少します。一方、血糖が高くなると血漿膠質浸透圧(血管内に水を引き込む力)が高くなり脱水傾向のため激しい喉の乾きを覚え、口渇・多飲・多尿となります。<br>脂肪分をエネルギー源として利用するようになると、体の中でケトン体という物質が生成されます。糖尿病ではこれが異常に高くなり、血液が酸性に傾き(ケトアシドーシス)、脳や各種臓器の働きが障害され、意識障害が出現してくることがあります。またこのケトン体が高くなくとも、異常な高血糖状態が続くと血液中の浸透圧が高くなり、全身の細胞内の水分が血液中に奪われ、脱水状態となります。これにより脳を含むあらゆる臓器が障害され、昏睡状態となることがあります(非ケトン性高浸透圧性昏睡)。いずれの状態も重篤で死亡率も高く、糖尿病のコントロールが悪い場合は注意が必要です。<br>糖尿病では大小の血管が動脈硬化を生じ、慢性的な血流不全からいろいろな臓器に障害が出現してきます。特に、網膜・腎臓・末梢神経が障害されやすく、神経障害では手足の末梢の知覚障害(シビレ感)が最も多くみられる障害です。</div><br><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 糖尿病の診断</h2><br><div class="table-responsive"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center"><thead><tr><th scope="col"> <th colspan="3" scope="col">診 断 基 準<tbody><tr><th scope="row">空腹時血糖<th>糖尿病型<th>正常型<th>境界型<tr><th scope="row"> <td>126以上<td>110未満<td>いずれにも属さない<tr><th scope="row">糖負荷試験<td> <td> <td> <tr><th scope="row">2時間値<td>200以上<td>140未満<td> <tr><th scope="row">随時血糖値<td>200以上<td> <td> <tr><th scope="row"> <td>上記のいずれかを満たす<td>上記の両者を満たす<td> </table></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>糖尿病の診断は、血糖を基に行われます。空腹時の血糖が126mg/dl以上では明らかな糖尿病、110〜125mg/dlでは境界型、110mg/dl未満が正常と判定されます。<br>また、糖負荷試験(75gブドウ糖内服)後2時間目の血糖が200mg/dl以上は糖尿病、140〜199mg/dlが境界型、140mg/dl未満が正常と判断されます。また食事に関係なく採血した場合でも200mg/dl以上では糖尿病と診断されます。</div><br><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 健常者のインスリン分泌動態</h2><br><img src="img/vol06gazou11.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="健常者のインスリン分泌動態"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>食事を始めると血液中の血糖が徐々に上昇し、それに合わせてインスリン分泌も増加してきます。朝・昼・夕の食事量によって多少違いはありますが、通常表のような変動を示します。<br>糖尿病では血糖が高い状態が続きますが、インスリン量は糖尿病の原因によって違いがあります。インスリンの分泌が低い場合は低値を、インスリンの働きが弱い場合(インスリン抵抗性)は高値を示します。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 糖尿病の成因分類</h2><br><ol><li>1型 (膵ベータ細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る)</li><li>2型 (インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある)</li><li>その他の特定の機序、疾患によるもの <br />A. 遺伝子異常が同定されたもの<br />B. 他の疾患に伴うもの</li><li>妊娠糖尿病 </li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>糖尿病はその原因によっていくつかに分類されています。1型では膵臓そのものが破壊されインスリン分泌量が絶対的不足になった状態で、治療にはインスリンを補充するしかありません。このタイプの糖尿病は、小児や若年者に多くみられます。膵臓の破壊の原因は、免疫の異常により体内で膵臓そのものを攻撃する抗体が造られ、膵臓が破壊されてしまう自己免疫性のもの、それに原因不明のものもあります。<br>糖尿病の多くは、成人以降に発症する2型です。これにはインスイリン分泌低下がある場合と、インスリン分泌は保たれていても、各種臓器でのインスリンの働きが低下(インスリン抵抗性)する場合とがあります。<br>その他の原因としては遺伝子異常に伴うもの、他の疾患(甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモン増大を起こす病気など)に伴うものがあります。<br>また、妊娠中に糖尿病になった場合は妊娠糖尿病として扱われますが、出産後に糖尿病状態を脱しても、その後しばらくしてから2型糖尿病を発症する人が多いといわれています。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 糖尿病の治療</h2><br><ol><li><a href="#a7-01">食事療法</a><br />一般的には、標準体重(身長×身長×22)1Kgあたり、30カロリーの摂取。糖質50〜60%、蛋白質15〜20%、脂質25〜30%に割り振りする。</li><li><a href="#a7-02">運動療法</a><br />適度な運動により、インスリン抵抗性の改善を図る。</li><li><a href="#a7-03">経口糖尿病薬</a></li><li><a href="#a7-04">インスリン療法</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br><ol><a name="a7-01" class="anchor"></a><li><strong>食事療法</strong><br />糖尿病に食事療法は不可欠です。経口糖尿病薬やインスリン療法をしていても、食事療法で摂取カロリーをコントロールしていないと、糖尿病の悪化を招きます。また逆に、食事量が落ちた時に低血糖を生じる危険性も高くなるため、気をつけなければなりません。</li><br><a name="a7-02" class="anchor"></a><li><b>運動療法</b><br />特に重大な合併症(腎不全や網膜の障害など)がなければ、運動療法が可能です。適度な運動によりインスリン抵抗性が改善します。糖尿病でも正常でもないいわゆる境界型の人達を、運動を習慣的に行っている人とそうでない人とのグループに分けると、その後の糖尿病の発症率に数倍の違いがあることも分かっています。</li><br><a name="a7-03" class="anchor"></a><li><strong>経口糖尿病薬</strong><br />糖尿病治療薬は、その作用からいくつかに分けられます。まず、食物から入った糖質が腸から吸収される状態(グルコース)になるまでの反応を抑えて、食後の高血糖を抑えるαグルコシダーゼ阻害薬。膵臓からのインスリン分泌を促進するナテグリニドやスルホニル尿素薬。インスリン抵抗性を改善するチアゾリジン誘導体。インスリン分泌促進とインスリン抵抗性改善の両方に効果があるとされるビクアナイド系薬剤。などがあります。それぞれを単独であるいは併用して治療に使います。</li><br><a name="a7-04" class="anchor"></a><li><b>インスリン療法</b><br />1型では体内のインスリンが欠乏した状態にあり、どうしてもインスリンの補給を行わなければなりません。<br>また、2型でもインスリンが欠乏状態にある人や、コントロールが悪い場合は、インスリン療法を行います。専用の注射器で、皮下にインスリンを注射しますが、インスリンの作用時間の違いから、超速効型・速効型・中間型・持続型に分かれます。また、作用時間の違うものを組み合わせた混合型もあります。糖尿病の状態によって使い分けられています。</li></ol></div><br><br><a name="a8" class="anchor"></a><h2>08 血糖コントロール状態の評価</h2><br><div class="table-responsive"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center"><tbody><tr><th scope="row">コントロールの評価</th><th>優</th><th>良</th><th>可</th><th>不可</th></tr><tr><th scope="row">空腹時血糖値(mg/dl)</th><td>100未満</td><td>110〜119</td><td>120〜139</td><td>140以上</td></tr><tr><th scope="row">食後2時間血糖値(mg/dl)</th><td>120未満</td><td>120〜169</td><td>170〜199</td><td>200以上</td></tr><tr><th scope="row">HbA1c(%)</th><td>5.8未満</td><td>5.8〜6.5</td><td>6.6〜7.9</td><td>8.0以上</td></tr></tbody></table></div>*HbA1c6.5以上では、大血管症(心筋梗塞・脳梗塞など)のリスクが、7.5以上では細小血管症(網膜症・腎症・神経症)のリスクが増大するとされている。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>血糖コントロール状態の評価は、空腹時・食後2時間値で行われます。食後2時間とは、食事を開始してから2時間のことです。少なくとも可以上の状態にコントロールすべきです。<br>血糖値と並んで、コントロールの評価に良く用いられるのにHbA1cがあります。赤血球に含まれるヘモグロビンは酸素を運搬する役目を担っていますが、これに糖(グルコース)もくっついていています。<br>このグルコースは赤血球が造られてから壊れるまでほとんど変化しないため、これを計測することはすなわち過去1〜2ヶ月の血糖値の状態を良く反映したものになります。<br>HbA1cが6.5%を超えると、血管合併症を生じる危険性が高くなるといわれています。<br>しかし、70歳以上では治療薬剤が効きすぎて低血糖発作を起こす危険性が高いことから、HbA1cは7%前後が最良とされています。</div><br><br><a name="a9" class="anchor"></a><h2>09 糖尿病の運動療法</h2><ol><li><a href="#a9-01">効果</a><br />インスリン抵抗性の改善(筋組織でのグルコース取り込み促進)、および体重減少。</li><li><a href="#a9-02">注意点</a><br />空腹時血糖200mg/dl以上のコントロール不良例では、薬物療法などにより血糖コントロールが良好となった後に運動療法を開始する(ケトアシドーシスを生じる危険性が高い)。また、網膜症・腎症・神経症がある場合は、症状が悪化する場合がある。</li><li><a href="#a9-03">頻度・強度</a><br />30〜60%VO2max程度の有酸素運動を20〜30分、3回/週以上行うことが望ましい(運動療法で獲得したインスリン感受性の増加は3日中断で減少)。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><li><strong>効果</strong><br />有酸素運動(ジョギングやウォーキングなど持続的な軽めの運動)をすると、筋肉組織では酸素とともに血液中の糖(グルコース)を取り込み、エネルギーとして消費します。血液中のグルコースが低下してくると、肝臓や筋肉内に貯蓄されたグリコーゲンからグルコースが造られて血液中に放出されます。この筋肉組織(細胞)へのグルコース取り込みにはインスリンが強く関与しており、この取り込みが悪くなることがインスリンの作用低下(インスリン抵抗性)です。運動中、血中インスリン濃度は低下しますが、筋肉組織でのグルコース消費は高まり、インスリンの作用が増大することになります。<br />15〜20分以上運動をすると、蓄えられたグリコーゲンの大部分が消費されます。このため、筋肉組織は血中の脂肪酸や体の脂肪組織からエネルギーを得るようになります。つまり体重減少になります。しかし、1時間程度の運動でも数百g程度の減量にしかならず、体重減少には食事療法が不可欠です。</li><br><li><strong>注意点</strong><br />コントロールが悪い糖尿病の場合、運動中の発汗やホルモンの影響(血糖を増加させるカテコールアミンの分泌増加)でさらに高血糖になったり、脱水が生じてケトアシドーシスを起こしたりします。少なくとも空腹時血糖を200mg/dl以下にしておく必要があります。また、網膜症・腎症・神経症などの慢性合併症がある場合は、運動そのものが病状を悪化させる場合があり注意が必要です。<br />さらに、経口糖尿病薬を内服中の人では空腹時の運動で低血糖を起こす可能性があります。インスリン皮下注射をしている人でも筋肉運動によりインスリンが急速に体内に吸収され、低血糖を起こす可能性があります。手軽に摂取できる糖分(アメ玉やブドウ糖など)を携行して運動する方が安全です。</li><br><li><strong>頻度・強度</strong><br />あまりに激しい運動は血圧を上昇させ、高血圧症の合併が多い糖尿病患者には適切な運動ではありません。30〜60%Vo2max(高血圧と運動療法の回参照)程度の有酸素運動(ジョギングやウォーキングなど)が最適です。時間は20〜30分程度、合併症などがなく食事療法のみで血糖コントロールが良好な場合は1時間以上の運動も問題ありません。また、運動で得られるインスリン感受性の増加(インスリン抵抗性の改善)は、2〜3日しか持続しないため、週に3回以上の運動が望ましいとされています。</li></ol></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 05 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0025 05 05<br />『 めまい 』<br />平成16年09月11日(土)<br />めまいとは、自分の体や周囲は動いていないにもかかわらず、動いているように感じることを総称しています。何らかの病気に関連している場合もあれば、解熱・鎮痛剤などの内服薬で出現する場合もあり、また単なる乗り物酔いということもあります。一概にめまいといっても、その性状にも違いがあり、その原因も一般に思われているよりも意外と複雑で、ある意味医者泣かせの症状です。<br><br><ol><li><a href="#a1">めまいの原因</a></li><li><a href="#a2">めまいの種類</a></li><li><a href="#a3">回転性めまい</a></li><li><a href="#a4">動揺性めまい</a></li><li><a href="#a5">失神・たちくらみ</a></li><li><a href="#a6">めまいの対処法</a></li></ol><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 めまいの原因 </h2>人間は、体の各部位の位置感覚、内耳の前庭神経の感覚、眼から入る視覚などの情報を、主として小脳で処理して体のバランスを維持している。<br>この経路のいずれの障害でもめまいを生じうるが、内耳や小脳の障害で回転性めまいが、その他では動揺性めまいが生じやすい。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>人間は無意識に自らのバランスを保って行動しています。起立時や歩行時には体の重心は常に移動しており、また手足や頭部を動かすだけでも重心は変化します。<br>こういった状況の中でよろけたり転倒するのを防止するため、体のバランスを取る機構が存在します。<br>手足や体幹部の位置覚・視覚・内耳にある三半規管からの情報などが主に小脳に送られ、そこからまた体の各部位へ情報が送られ四肢の筋力などを調節して体のバランスが保たれます。<br>これら一連の反応は、大部分が無意識に行われています。<br>この機構のどこかに異常が生じるとめまいを感じるのです。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 めまいの種類</h2>めまいとは、実際は自分の体や周囲が動いていないにもかかわらず、動いているように感じること。<br><br><ol><li>回転性めまい</li><li>動揺性めまい</li><li>失神・たちくらみ</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>めまいはその性状から大きく分けて三つに分類されます。周囲があるいは自分自身がぐるっと回転しているように感じる回転性めまい。座位時あるいは歩行時に体が左右に揺れているように感じる動揺性めまい。以上二つが代表的なものですが、これに加えて、気が遠くなるあるいは一瞬くらっとする失神や立ちくらみもめまいとして自覚されたりするため、めまいのひとつに数えられます。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 回転性めまい</h2><ol><li><a href="#a3-01">小脳出血</a></li><li><a href="#a3-02">1以外の小脳半球障害(腫瘍・梗塞・変性疾患など)</a></li><li><a href="#a3-03">メニエール病</a></li><li><a href="#a3-04">前庭神経炎</a></li><li><a href="#a3-05">内耳炎</a></li><li><a href="#a3-06">良性発作性頭位性めまい</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>回転性めまいは、主に内耳や小脳の病気で生じます。<br><br><ol><a name="a3-01" class="anchor"></a><li><strong>小脳出血</strong><br>突発性のめまい・頭痛・嘔吐で発症します。出血の程度にもよりますが、多くは数分から数時間で意識障害が出現してきます。</li><a name="a3-02" class="anchor"></a><li><strong>1.以外の小脳半球障害</strong><br>小脳は真ん中にある虫部と左右の半球に分かれます。小脳は体のバランスを保つ中枢で、この半球の障害では、体動時や歩行時に回転性めまいが生じます。腫瘍や変性疾患では、病気が徐々に進行し、次第にめまいの程度も悪化してきます。小脳梗塞では、突発性の頭痛・嘔吐・めまいが出現し、小脳出血と似たような症状が出現することもあれば、腫瘍や変性疾患と同じような経過をとる場合もあります。</li><a name="a3-03" class="anchor"></a><li><strong>メニエール病</strong><br>低音性の耳鳴や難聴の前駆症状があり、ある日突然回転性の激しいめまいが生じてきます。めまい発作は数分から2時間程度続きます。</li><a name="a3-04" class="anchor"></a><li><strong>前庭神経炎</strong><br>何の前兆もなくある日突然激しいめまい・嘔吐で発症します。耳鳴や難聴を伴わず、症状は数日間続きます。</li><a name="a3-05" class="anchor"></a><li><strong>内耳炎</strong><br>内耳炎は、中耳炎から炎症が波及してくるものが多く、激しい回転性めまいと耳鳴を伴った高度難聴となります。</li><a name="a3-06" class="anchor"></a><li><strong>良性発作性頭位性めまい</strong><br>最も頻度の高いものです。原因には諸説ありますが、内耳の機能障害が疑われています。ある朝起床時に激しい回転性めまいが生じ、しばしば嘔吐。いったん起立してしまうとめまいは消失。しかし、歩行時に動揺性めまいを感じ、頭位を変えると(首を動かすと)再び回転性めまいが生じるというのが、典型的な症状です。</li></ol></div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 動揺性めまい</h2><ol><li><a href="#a4-01">乗り物酔い</a></li><li><a href="#a4-02">脳血管障害</a></li><li><a href="#a4-03">薬物の影響・副作用</a></li><li><a href="#a4-04">体感覚の障害(糖尿病)</a></li><li><a href="#a4-05">下肢筋力の低下</a></li><li><a href="#a4-06">小脳虫部の障害(腫瘍や梗塞など)</a></li><li><a href="#a4-07">神経症</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br><ol><a name="a4-01" class="anchor"></a><li><strong>乗り物酔い</strong><br>乗り物(飛行機・船・自動車など)の振動により内耳にある三半規管が過剰に刺激されてめまいを感じる。個人差が大きく、真の病ではありません。</li><a name="a4-02" class="anchor"></a><li><strong>脳血管障害</strong><br>脳血管障害(出血や梗塞)が広い範囲に生じると、意識障害や手足の麻痺がほぼ確実に出現します。しかし小さな梗塞(ラクナ)や出血、あるいは脳梗塞に至らない程度の脳虚血ではめまいのみが症状のこともあります。日常生活に支障がでる程ではないが、非回転性のめまいがなかなか消失しない場合は、脳血管障害を疑ってみる必要があります</li><a name="a4-03" class="anchor"></a><li><strong>薬物の影響・副作用</strong><br>解熱剤や鎮痛剤あるいは精神安定剤による中枢神経抑制作用によりめまいが生じることがあります。たいていは、倦怠感や眠気を伴っています。</li><a name="a4-04" class="anchor"></a><li><strong>体感覚の障害(糖尿病など)</strong><br>糖尿病あるいはその他の原因による知覚(特に手足の位置覚や深部知覚)が障害されると、無意識に行われているバランス保持が困難になり体の動揺に伴ってめまいを感じます。特に歩行時や立位時に症状が増強します。</li><a name="a4-05" class="anchor"></a><li><strong>下肢筋力の低下</strong><br>加齢やその他の原因により下肢筋力が低下すると、歩行時の足の運びが悪くなり、スタンスが広く歩幅の狭い歩行となります。歩行に合わせて体幹も左右に揺れ、めまいを感じることがあります。</li><a name="a4-06" class="anchor"></a><li><strong>小脳虫部の障害(腫瘍や梗塞など)</strong><br>小脳の中央部に位置する小脳虫部は、特に体幹部の平衡機能と密接な関係があり、この部の障害(腫瘍や梗塞など)では、常に体が動揺します(座位でも立位でも)。歩行時にはより顕著となり、酔ったようにふらふらと歩行し、めまいを訴えます。</li><a name="a4-07" class="anchor"><li></a><strong>神経症</strong><br>神経症ではいろいろな症状が出現しますが、めまいが主症状のこともあります。特に過換気症候群(心理的な要因で速い呼吸が突発性に出現すること)では、血液中の炭酸ガス低下により脳血管が収縮し、脳血流が低下してめまいを生じることがあります。その他、うつ病でも、めまいのみが主症状であることがあります。</li></ol></div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 失神・たちくらみ </h2><ol><li><a href="#a5-01">起立性低血圧</a></li><li><a href="#a5-02">貧血</a></li><li><a href="#a5-03">低血糖</a></li><li><a href="#a5-04">内頚動脈閉塞(狭窄)椎骨動脈閉塞(狭窄)、脳底動脈狭窄</a></li><li><a href="#a5-05">不整脈</a></li><li><a href="#a5-07">その他(てんかんなど)</a></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>*失神(一瞬気を失うこと)・たちくらみ<br><br><ol><a name="a5-01" class="anchor"></a><li><b>起立性低血圧</b><br />起立時には、重力の影響で血液が下半身に集まります。通常は、自律神経の働きで血管が収縮し、下肢への血流を減じて血圧を上昇させて脳への血流が保たれますが、中にはこの反応が弱く、脳への血流が低下すると、起立時のめまいが出現します(クラッとする、一瞬気が遠くなるなどと表現される)。</li><a name="a5-02" class="anchor"></a><li><b>貧血</b><br />赤血球が不足した状態が貧血です。赤血球は体内のあらゆる臓器へ酸素を運ぶ役目をしており、これが不足すると、脳の酸素不足からめまい(フラフラするという訴えが多い)を生じることがあります。</li><a name="a5-03" class="anchor"></a><li><b>低血糖</b><br />脳は、エネルギー源としてグルコース(糖)しか利用できません。低血糖状態では脳へのエネルギー供給が滞り、脳機能の低下からめまい(フラフラ感や気が遠くなる感じ)が生じることがあります。</li><a name="a5-04" class="anchor"></a><li><b>内頚動脈閉塞(狭窄) 椎骨動脈閉塞(狭窄)</b><br />脳への血液供給は、左右の内頚動脈および椎骨動脈の計4本から供給されています。いずれかの血管に閉塞や狭窄があると、何かの拍子に脳への血液量が低下し、めまい(回転性であったり動揺性であったりします)が生じることがあります。これに他の神経症状(手足の麻痺や意識障害)がある場合は、脳梗塞である可能性が極めて高くなります。</li><a name="a5-05" class="anchor"></a><li><b>不整脈</b><br />徐脈(1分間あたりの脈が少ないこと)あるいは一定時間心臓が収縮しないタイプの不整脈では、脳への血流が低下して気が遠くなるようなめまいを感じることがあります(重度では失神)。</li><a name="a5-06" class="anchor"></a><li><strong>その他(てんかんなど)</strong><br />てんかん発作は、全身けいれんを起こすタイプのものばかりではなく、気を失うタイプのてんかん発作もあります。</li></ol></div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 めまいの対処法</h2><br><ol><li><strong>めまい(回転性・動揺性)に続いて意識障害が出現</strong><br> 重症の脳血管障害の可能性あり、救急車要請<br><b>[green]→救急医療機関[/green]</b><li><strong>激しい頭痛・嘔吐・回転性めまいが、ほぼ同時刻に出現</strong><br> 小脳出血の可能性あり、救急車要請<br><b>[green]→救急医療機関[/green]</b><li><strong>意識障害はないものの、めまい(回転性および動揺性)に、半身の脱力(麻痺)・しびれ感・言語障害などを伴う場合</strong><br> 軽い脳血管障害(梗塞や出血)の可能性あり、できるだけ早期に医療機関受信<br><b>[green]→脳神経外科[/green]</b><li><strong>回転性めまい・嘔吐のみ</strong><br> 安静・臥床し、改善なければ医療機関受診<br><b>[green]→耳鼻咽喉科あるいは脳神経外科[/green]</b><li><strong>めまい(動揺性)のみ</strong><br> 数日で改善なく、持続性であれば、医療機関受診<br><b>[green]→脳神経外科あるいは内科[/green]</b><li><strong>失神</strong><br> なるべく早期に医療機関受診<br><b>[green]→内科受診[/green]</b><li><strong>立ちくらみ</strong><br> 数日で改善なければ医療機関受診<br><b>[green]→内科受診[/green]</b></ol><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 04 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0020 04 04<br />『 高血圧と運動療法 』<br />平成16年08月14日(土)<br />40歳以上成人の10〜20%が高血圧といわれています。最近ではスポーツ施設が充実し、運動で血圧を低下させようとする方が多くなってきています。運動療法である程度の血圧低下が期待できます。しかし、安易に運動で血圧を下げようとすると危険な場合があります。<br>今日は、高血圧への理解を深めるとともに、運動が血圧に与える影響を考える。それがテーマです。<br><ol><li><a href="#a1">血圧</a></li><li><a href="#a2">血圧の測定法</a></li><li><a href="#a3">血圧の判定基準</a></li><li><a href="#a4">高血圧</a></li><li><a href="#a5">高血圧による臓器障害</a></li><li><a href="#a6">高血圧の治療</a></li><li><a href="#a7">運動時の血流分布</a></li><li><a href="#a8">運動様式による循環機能の変化</a></li><li><a href="#a9">運動による血圧の変化</a></li><li><a href="#a10">体力年代別の各種運動強度に対する脈拍数</a></li><li><a href="#a11">高血圧における運動療法</a></li></ol> <br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 血圧</h2> 血圧=心拍出量×末梢血管抵抗<br><div style="margin-top:8px;"><strong>心拍出量増加因子</strong><br>食塩過剰摂取による体液量増加や交換神経興奮による心収縮力の増加など<br><br><strong>末梢血管抵抗増加因子</strong><br />糖尿病や高血圧に伴う動脈硬化など</div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>心臓は胸の中央やや左寄りにあり、ほぼ大人の手拳大の大きさです。1回の心臓の拍動で60〜80mlの血液を心臓内から大動脈へ駆出します。したがって1分間では4500〜5500mlの血液を送り出していることになります。人の血液量はほぼ体重の7%とされていますから、60㎏の人では4200mlで、1分足らずで全血液が全身を駆け巡っている計算になります。<br>血圧は1回の心拍出量が多くなるほど、また抹消血管抵抗が上がるほど高くなります。運動に伴い心拍出量は増加しますので血圧は上昇します。また、血管抵抗が高くなる最大の要因は加齢による動脈硬化です。ですから、個人差はありますが、年齢とともに血圧は少しずつ上がってきます。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 血圧の測定法</h2><ol><li>測定前30分は喫煙・カフェインの摂取を禁じる</li><li>最低5分間安静にしたのち測定する</li><li>肌を露出させ、心臓の高さで支え測定する</li><li>2分間隔で2回以上測定し、その平均値をとる</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>血圧は左右いずれかの上腕をマンシェットで巻き、加圧して徐々に圧を下げていきます。肘のところで血管音を聴取し、最初に雑音が聞こえた圧を収縮期血圧、雑音が消失した圧を拡張期血圧とします。<br>血圧はいろいろな要因で上下することから、測定に際してはいろいろな決まりがあります。血圧の判定基準もこの条件下で測定したものを原則としていますので、これを守って測定しなければなりません。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 血圧の判定基準</h2><div class="table-responsive"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center"><thead><tr><th scope="col"> <th scope="col">収縮期血圧<th scope="col"> <th scope="col">拡張期血圧<tbody><tr><th scope="row">正常血圧<td>130mmHg未満<td>and<td>85mmHg未満<tr><th scope="row">正常高値血圧<td>130〜139<td>or<td>85〜89<tr><th scope="row">高血圧<td> <td> <td> <tr><th scope="row">ステージ1<td>140〜159<td>or<td>90〜99<tr><th scope="row">ステージ2<td>160〜179<td>or<td>100〜109<tr><th scope="row">ステージ3<td>180以上<td>or<td>110以上</table></div><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>血圧の判定基準は年々厳しくなる傾向にあります。これは、測定した血圧をいくつかのグループに分け、明らかに脳卒中や心臓疾患が増加してくる値を元に作成されています。<br>ステージ1〜3は、降圧剤による高血圧治療を開始すべきレベルです。特にステージ3は脳出血を起こす危険性があり、早急に治療を開始すべきレベルです。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 高血圧</h2>高血圧の頻度は全成人人口の20%前後といわれている<br><br><b>本態性高血圧</b><br>他の臓器に高血圧の原因となる異常がない高血圧。遺伝や環境因子が複雑にからんで発症してくるもので、高血圧症の大部分(90〜95%)<br><br><b>二次性高血圧</b><br> 腎実質性高血圧や腎血管性高血圧などの腎臓疾患が原因で生じる高血圧(5%前後)、原発性アルドステロン症・褐色細胞腫・クッシング病などの内分泌疾患(ホルモン過剰分泌)(1%以下)、などがある。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>本態性高血圧の方の多くは、両親のどちらかあるいは片方の親が高血圧であるという遺伝的素因をもっています。これに、塩分摂取量が多いなどの環境因子も加わって高血圧になってきます。また腎臓に問題があると、血圧を上昇させる物質が血中で増加し、高血圧となることがあります。さらに、アルドステロン・カテコールアミン・コルチゾールなど血圧上昇作用のあるホルモンが異常に増加する病気では高血圧となります。</div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 高血圧による臓器障害</h2><ul><li>心臓:狭心症、心筋梗塞、心不全</li><li>脳:脳出血、脳梗塞</li><li>眼: 眼底出血</li><li>腎臓:腎不全</li><li>血管:解離性大動脈瘤</li></ul><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>高血圧による臓器障害は、いずれも高血圧により血管壁が傷害され、動脈硬化が進行することが原因です。脳出血・眼底出血・解離性大動脈瘤では、血管が脆くなり壁の一部が何らかの誘因で瞬時に破綻することにより生じます。 これに対し、脳梗塞・心筋梗塞・腎不全などでは、動脈硬化が徐々に進行し血管内が細くなって、充分な血液が行きわたらなくなることが原因です。症状が出現するまで気づかれずに進行していき、気づいた時には手遅れということもありえます。</div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 高血圧の治療</h2><ol><li>生活習慣の改善<br>(収縮期血圧10mmHg、拡張期血圧7mmHg前後の血圧低下が得られることが多い)<ol><li>体重制限<br> 理想体重を10%以上上回っている人では減量により血圧が下がることが多い<li>アルコールの摂取制限<br> ビール大瓶1本以上のアルコールを7日間連続摂取で血圧の上昇が確認されており、これ以下に抑える<li>規則的な運動<br> 1日に30〜40分間歩くことにより血圧低下が期待できる<li>食塩の摂取制限<li>禁煙</ol><li>薬物治療</ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>生活習慣の改善である程度の血圧低下が期待できます。食塩の過剰摂取は循環血液量の増加を招き、高血圧の原因になります。食塩摂取は少なくとも10g/日に以下(なるべく7g以下)に抑える必要があります。また、喫煙は動脈硬化を促進し、抹消血管抵抗の増大から高血圧の原因になります。<br>高血圧の治療薬には種々のものがあり、その作用機序から、利尿薬・Ca拮抗薬・ACE阻害薬・ARB・βブロッカーなどに分類されています。それぞれ降圧の程度・可能性のある副作用についても違いがあり、個々人に適した薬剤を選択して用いるのが最良の方法です。</div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 運動時の血流分布</h2><br><img src="img/vol04gazou11.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>安静時・軽い運動時・激しい運動時の心拍出量はそれぞれ1分間に5,800ml・9500ml・17500mlになります。グラフを見ればお分かりのように。これは主に激しく筋肉を動かすために必要な血液が著明に増大するためです。これだけ多くの血液を全身に駆け巡らせるためには心拍数を上げ、心ポンプ機能を増大させなければなりません。この心拍数の増加が血圧の上昇を招きます。ですから運動中は確実に血圧が高くなるのです。</div><br><br><a name="a8" class="anchor"></a><h2>08 運動様式による循環機能の変化</h2><br><div class="table-responsive"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center"><thead><tr><th scope="col"> <th scope="col">動的運動<th scope="col">静的運動 <tbody><tr><th scope="row">心拍出量<td>++++<td>+<tr><th scope="row">心拍数<td>++<td>+<tr><th scope="row">1回拍出量<td>++<td>0<tr><th scope="row">末梢抵抗<td>−−−−<td>+++<tr><th scope="row">収縮期血圧<td>+++<td>++++<tr><th scope="row">拡張期血圧<td>0 or +<td>++++</table></div><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>動的運動とはジョギングやウォーキングなど、持続的で軽度の筋肉運動のことです。静的運動とは、急激に筋肉の最大限の力を発揮する運動で、ウェイトリフティングや格闘技が代表的です。すべてのスポーツが動的運動と静的運動に完全に分類できるわけではありません。サッカー・バレーボールなどは、動的運動が主体で、時々静的運動が加わることになります。<br>動的運動と静的運動に分類して心拍数や血圧の変動をみてみると、両者にかなりの違いがあることが分かります。動的運動では心拍出量・心拍数・1回(心)拍出量の増加を認めますが、これは全身の筋肉に大量の血液が供給されるためです。しかし抹消(血管)抵抗の増加はほとんど認めず、結果として収縮期血圧は上昇しますが、拡張期血圧はさほど上昇しません。<br>これに対し、静的運動では抹消(血管)抵抗が著明に増大し(ウェイトリフティングで力をこめた時に体の表面の血管が浮き上がるのはこのためです)、収縮期・拡張期ともに血圧が上昇します。以上の理由から両タイプの運動ともに運動中の血圧は上昇しますが、高血圧の人の場合は、動的運動の方が血圧上昇の度合いが少なく安全ということになります。</div><br><br><a name="a9" class="anchor"></a><h2>09 運動による血圧の変化</h2><ol><li><a href="#a9-01">運動中</a><br />交感神経活動が活発となり血圧は上昇する。</li><li><a href="#a9-02">運動直後(個人的見解)</a><br />発汗やその他の影響により循環血液量が低下。また、交感神経活動が低下して副交感神経活動優位となり、血圧は低下する。</li><li><a href="#a9-03">慢性的効果</a><br />交感神経に作用するカテコールアミンが減少し、血圧は低下する。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br><ol><a name="a9-01" class="anchor"></a><li>運動中は交感神経活動が活発になり、心拍出量の増加から血圧が上昇します。</li><a name="a9-02" class="anchor"></a><li>運動直後、まだ心拍数が速い時期では交感神経活動が活発で血圧が高い状態が続いていますが、脈拍数の低下とともに血圧も低下してきます。これは、発汗による体液量(循環血液量)低下に伴って心拍出量が低下してくるからです。</li><a name="a9-03" class="anchor"></a><li>運動により交感神経活動が刺激され続けると、交感神経に作用するホルモンであるカテコールアミンが効果的に消費されていきます。このため、運動後しばらくの間は副交感神経の働きが優位となり血圧は低い状態になります。しかし、このような効果は2〜3日しか持続しません。</li></ol></div><br><br><a name="a10" class="anchor"></a><h2>10 体力年代別の各種運動強度に対する脈拍数</h2><br><div class="table-responsive"><table class="table table-striped table-bordered table-hover table-condensed text-center"><thead><tr><th scope="col">%(VO2max)<th scope="col">100<th scope="col">80<th scope="col">60<th scope="col"> 40<th scope="col">20<tr><th scope="col"> <th scope="col">最強度<th scope="col">強度<th colspan="2" scope="col"> 中等度<th scope="col">軽度<tbody><tr><th scope="row">20歳代<td>186<td>161<td>136<td>110<td>85<tr><th scope="row">30歳代<td>179<td>155<td>131<td>108<td>84<tr><th scope="row">40歳代<td>172<td>150<td>127<td>105<td>82<tr><th scope="row">50歳代<td>165<td>144<td>123<td>102<td>81<tr><th scope="row">60歳代<td>158<td>138<td>119<td>99<td>80<tr><th scope="row">運動強度<td>非常にきついもうダメ<td>かなりきつい<td>ジョギングの程度<td>少し運動になる程度<td>楽に感じる</table></div><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>運動の強度は、%VO2maxで表されます。<br>可能な運動量(運動能力)には個人差が大きいため、運動強度はその人個人で可能な最大強度の運動で消費される酸素量(酸素摂取量)を100として%で表示します。酸素摂取量の計測は難しいため、一般的には脈拍数で運動強度の度合いとします。 表はそれを示したものですが、心臓に問題がない限り、また不整脈がない限り、良く一致します。<br>人間の心臓の拍動数にも限界があり、20歳代で190以下くらいで年齢とともに低下します。このため年齢とともに指標となる脈拍数も全体的に低下してきます。</div><br><br><a name="a11" class="anchor"></a><h2>11 高血圧における運動療法</h2><br><ol><li><a href="#a11-01">適応</a> <br> <ol><li>薬物療法開始前でステージ1以下の血圧<br />収縮期血圧159mmHg以下、拡張期血圧99mmHg以下</li><li>薬物療法で上記レベル以下に血圧が下降心臓・腎臓・脳に障害がないことが原則</li></ol></li><li><a href="#a11-02">運動強度および回数</a><ol><li>VO2max40〜60%、運動時間は30〜60分、1週間の頻度は3回程度。<br />ウェートリフティングや格闘技は血圧が上昇するため,避ける。</li><li>継続することが大切</li></ol></li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><a name="a11-01" class="anchor"></a><li>運動中は血圧が上昇するため、普段の安静時血圧が高い人では危険が伴います。高血圧の人の場合は収縮期血圧が159以下かつ拡張期血圧が99以下になるように内服薬で調整する必要があります。また、重要臓器に傷害があると運動により悪影響が出ることがあります。</li><a name="a11-02" class="anchor"></a><li>運動強度は%VO2maxが40〜60%程度の動的運動が最適です。高血圧の場合はジョギングやウォーキングを30〜60分程度として、週に2〜3回程度が適切です。ウェイトリフティングや格闘技などの静的運動は血圧が上昇しやすいため避けた方が無難です。週に2〜3回のトレーニング時間が取れない場合でも、運動によりある程度の血圧降下が期待できるため、定期的な運動習慣を身につけましょう。</li></ol></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 03 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0015 03 03<br />『 痴呆とその予防 』<br />平成16年07月10日(土)<br />誰もが肉体的・精神的に健康な老後を送りたいと思っていることでしょう。今回は、痴呆とはどんな状態か、どのような原因でおきるのか、また予防法はあるのか、それがテーマです。<br><ol><li><a href="#a1">痴呆とは?</a></li><li><a href="#a2">大脳の機能分化</a></li><li><a href="#a3">痴呆の診断</a></li><li><a href="#a4">痴呆診断(補助検査)</a></li><li><a href="#a5">痴呆の原因疾患</a></li><li><a href="#a6">痴呆の治療</a></li><li><a href="#a7">痴呆の予防</a></li></ol><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 痴呆とは?</h2>痴呆とは、『一旦完成された』脳が、何らかの病変で広範囲に障害され、そのために認識・了解・判断・機転・決断などの脳の神経心理機能がうまく働かなくなり、その結果、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態』と、定義される。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>要するに、痴呆とは判断力が鈍って家族や周囲の人に迷惑をかけてしまう状態です。しかし、当の本人にとっては、自分自身の判断力が低下しているとは、決して思えないのです(判断力が低下しているから当然ですが)。ここにトラブルの元があります。元々立派な大人として生活していた人が、自分の子供や家族に理解できない理由でいろいろと文句をつけられたり注意されたりするからです。社会人としてのプライドもありますから、我慢できなくなって腹をたてたりします。日常生活を自力で送ることができないほどの痴呆では、幼児程度の判断力しかないものです。家族としては、幼児に接するように優しく対応していくしかありません。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 大脳機能分化</h2><br><img src="img/vol03gazou11.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid" alt="大脳の機能分化"><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>大脳の働きは、部位ごとにある程度決まっています。痴呆を考える上で、簡単に大脳の機能分化を理解しておく必要があります。<br>人間の大脳は、他の哺乳類と比較して前頭葉が大きいのが特徴です。前頭葉の後端は、手足を動かす運動領野になっています。その前方の前頭前野は、前頭葉の大部分を占め、人間の知的活動上、重要な役目を担っています。<br>一方、前頭葉以外の部では、外から入る情報(嗅覚・視覚・知覚・聴覚など)がまず認識されます(感覚受領野)。それら情報が前頭葉に送られ、そこで情報処理がなされ、次に何をすべきか瞬時に判断し、他の領域に指令を出し、具体的な行動がとられます。<br>例えば、ボールが自分に向かってきた場合。後頭葉の視覚野でそれを捉え、その情報が前頭葉へと送られます。前頭葉でこれを避ける必要があるかどうか瞬時に判断され、体の各部位を動かすように運動野へ指令が送られます。この運動野からの指令が体の各部位に伝わり、手足を動かして回避行動がとられるのです。つまり、前頭前野は脳の中にある司令部そのものです。<br>痴呆にはいろいろなタイプがありますが、おおまかに分けると、前頭前野の機能がまず低下するタイプ(アルツハイマー型痴呆)と、感覚受領野そのものやそこから前頭前野への経路に障害が生じ、いわば前頭前野が情報不足に陥って機能不全となるタイプがあります(脳梗塞後など)。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 痴呆の診断</h2>痴呆の診断は、種々の知能評価スケール(テスト)に基づいて行われる。ただし、言語機能に障害がある場合は、痴呆と判断される可能性があり、判断にあたっては注意しなければならない。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br>痴呆の診断に用いられるテストには、MMS・長谷川式簡易知能評価スケールなどがあります。<br>いずれも言語を用いたテストであるため、失語などで言語機能に障害がある場合、正確な判断ができません。<br>失語があって周囲の人との意思疎通がほとんどできない場合でも痴呆だとは限らないのです。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 痴呆の診断(補助検査)</h2><ol><li><a href="#a4-01">頭部MRI検査</a><br />痴呆に特徴的なのは、脳萎縮である。しかし、痴呆の早期には萎縮は見られない。<br>脳梗塞や主要血管閉塞が痴呆の原因のことがあり、その有無を検索する。</li><li><a href="#a4-02">採血検査</a><br>甲状腺ホルモンの欠乏、電解質異常、低血糖などで、痴呆様の症状が出現することがある。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><a name="a4-01" class="anchor"></a><li><b>頭部MRI検査</b><br>痴呆が進行してくると脳萎縮がみられるようになります。アルツハイマー型痴呆の早い段階では脳萎縮は認めず、症状の進行とともに前頭葉・側頭葉の萎縮がみられるようになり、最終的には大脳全体に及ぶ広範な萎縮がみられるようになります。<br>痴呆の中には脳梗塞やその他病変が原因の場合があり、MRI検査ではこれら病変に加えて、脳血管の異常(狭窄や異常脳血管)の検出も可能です。</li><br><a name="a4-02" class="anchor"></a><li><b>採血検査</b><br>甲状腺ホルモンは、人の活動性に影響を与えるため、その低下では痴呆様の症状が出現します。またNa(ナトリウム)などの電解質異常、低血糖でも同様に痴呆様症状が出現します。採血検査でこれら異常の有無をチェックします。</li></ol></div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 痴呆の原因疾患</h2><ol><li><a href="#a5-01">アルツハイマー型痴呆</a><br />40歳代で発症する何らかの遺伝子異常が疑われるものと、60歳代以降で発症し緩徐に進行するものとがある。<br>後者については、原因がはっきりしていないが、廃用(使わないこと)による大脳機能低下が主要な原因との見方もある。</li><li><a href="#a5-02">脳血管性痴呆</a><br>主要脳血管の閉塞あるいは狭窄により、大脳の広範囲な領域で血液供給の不足が生じ、大脳全体の機能低下が痴呆症状を引き起こす。</li></ol><div class="kaisetu"><a name="a5-01" class="anchor"></a><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><li><strong>アルツハイマー型痴呆</strong><br>最も多いタイプの痴呆です。40歳代のものは稀でほとんどが60歳代以降で発症します。発症した人達の背景をみてみると、定年を迎えて社会的活動が減り、数年かけて痴呆になる場合や、それまで長い年月生活していた地域から遠隔地へ引越しして数年を経て痴呆が生じてくる場合があります 。<br>こういったことから、社会的活動が減って、ぼんやりとして日常生活を送ることで、前頭前野を使用する機会(物事を判断したり、計画・立案・創意工夫すること)が減ることで機能が衰えていくという考え方もあります(足・腰を使わないことで筋力が落ち、歩行能力が低下することと同じ)。</li><br><a name="a5-02" class="anchor"></a><li><b>脳血管性痴呆</b><br>脳細胞は血液から供給される酸素とグルコース(糖)をエネルギー源として活動しています。この血液供給が一定レベル以下になると脳梗塞になります。脳細胞が正常に活動できる状態と脳梗塞の間には、脳細胞が正常に働くためには血液供給が足りない状態(虚血)が存在します。これが大脳の広い範囲で生じると、手足の麻痺がない急性の痴呆症状が出現することがあります。通常、頚部内頚動脈の閉塞あるいは高度の狭窄がある場合に出現します。早期に脳への血液供給を再構築する手術(バイパス手術)を行うことで、元の状態に復することが可能です。</li></ol></div><br><br><ol start="3"><li><a href="#a5-03">慢性硬膜下血腫</a><br>軽微な頭部外傷後2〜3ケ月を得て、硬膜下腔に血液が貯留し、大脳を広範囲で圧迫することにより、痴呆症状が出現する。</li><li><a href="#a5-04">正常圧水頭症</a><br>脳脊髄液が脳室内に貯留し、周囲脳(特に前頭葉)を圧迫することにより、痴呆症状が出現する。通常はクモ膜下出血後に出現する。</li></ol><div class="kaisetu"><a name="a5-03" class="anchor"></a><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol start="3"><li><strong>慢性硬膜下血腫</strong><br>軽く頭をぶつけた(柱にコツンと頭をぶつけるなど)後2〜3ヶ月を経て、脳の外側にある硬膜下腔に血腫が形成された状態です。血腫により大脳の広い範囲が圧迫され機能低下が生じ、痴呆症状が出現してきます。通常左右どちらかの片麻痺を伴っています。比較的簡単な手術で90%の人が元の状態に戻ります。</li><br><a name="a5-04" class="anchor"></a><li><strong>正常圧水頭症</strong><br>脳は脳脊髄液で満たされ、頭蓋内に浮かんでいるような状態です。この脳脊髄液は、一定量が毎日生産されて一定のルートを流れ、静脈から吸収されています。このルートのどこかで流れが悪くなり、脳室が拡大してくる状態が水頭症です。通常は、頭蓋内の圧力が上昇し高圧となるのですが、これがあまり高くないタイプの水頭症があり、これを正常圧水頭症と称します。クモ膜下出血後に出現することが多いのですが、原因不明の特発性といわれるものもあります。痴呆・尿失禁・歩行障害が三大症状です。早期に手術を行い、水頭症が改善すれば、症状が良くなる可能性も大です。</li></ol></div><br><br><ol start="5"><li><a href="#a5-05">多発梗塞性痴呆</a><br>多発性脳梗塞そのものだけで、大脳全体の機能低下(痴呆)を生じるのは、広範囲に大脳が障害される場合か、重要な部位に梗塞が生じる 場合に限られ、一般的なことではない。脳梗塞に廃用が加わって生じてくることが多く、この場合、厳密にはアルツハイマー型痴呆とすべきとの意見もある。</li><li><a href="#a5-06">その他</a><br>甲状腺機能低下症やうつ病では、痴呆症状がみられることが多い。</li></ol><div class="kaisetu"><a name="a5-01" class="anchor"></a><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol start="5"><a name="a5-05" class="anchor"></a><li><strong>多発梗塞性痴呆</strong><br>脳梗塞により大脳の広範囲の機能が失われ、痴呆症状が出現してくることがあります。脳梗塞そのものに原因があって発症後急速に痴呆に陥る場合もありますが、片麻痺や失語のため社会活動ができなくなり、前頭前野領域の機能が次第に低下し、数年かけて徐々に痴呆になる場合もあります。この場合、アルツハイマー型痴呆と考えるべきとの意見もあります。</li><br><a name="a5-06" class="anchor"></a><li><b>その他</b><br>甲状腺機能低下でホルモンが欠乏すると、痴呆様の症状が出現することがあります。うつ病でも、特に老人ではボーッとしていることが多いため、痴呆と間違われることがあります。いずれも内服薬により回復する可能性が高いものです。</li></ol></div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 痴呆の治療</h2><ol><li><a href="#a6-01">対症療法</a><br>中等度〜重度の痴呆では、不穏・異常行動などが出現することがあり、精神安定剤・睡眠剤などで症状の安定を図る。</li><li><a href="#a6-02">アルツハイマー型痴呆治療剤の投与</a><br>軽症・早期の痴呆であれば、ある程度の効果が期待できる。</li><li><a href="#a6-03">原因疾患の治療</a></li></ol><div class="kaisetu"><a name="a6-01" class="anchor"></a><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br><ol><a name="a6-01" class="anchor"></a><li><strong>対症療法</strong><br>痴呆が進行して中等度〜重度の痴呆になると、一般家庭での生活が困難になります。尿意・便意が分からず失禁しやすく、また尿意を我慢できず、あるいはトイレの位置が分からずに所構わずに排尿したりします。また、食物と間違えて固形石鹸やティッシュを食べたりします。夜間に不穏状態になって大声を出したり、暴れたりすることもあります。これは、幼児あるいは乳児レベルにまで判断力が低下しているからです。症状によっては、家族あるいは周囲の人達の生活にまで悪影響がでてくることもあり、そのような場合には精神安定剤や睡眠剤などで症状をコントロールします。</li><br><a name="a6-02" class="anchor"></a><li><strong>アルツハイマー型痴呆治療剤の投与</strong><br>軽症・早期であればアルツハイマー型痴呆治療剤の内服で効果が期待できます。内服にあたっては、副作用として時に失神・徐脈(脈が遅くなる)があるので注意を要します。</li><br><a name="a6-03" class="anchor"></a><li><strong>原因疾患の治療</strong><br>治療により回復の可能性が高い病気もあり、前述したように外科的・内科的治療を行います。</li></ol></div><br><br><a name="a7" class="anchor"></a><h2>07 痴呆の予防</h2><ol><li><a href="#a7-01">前頭前野の機能維持</a><br>アルツハイマー型痴呆では、まず痴呆症状に先立って前頭前野の機能が低下し(早期痴呆)、ついで大脳全体の機能が低下(痴呆)してくるパターンが多い。この早期痴呆の段階で、脳の活性化訓練を行い、痴呆への伸展を予防する。</li><li><a href="#a7-02">動脈硬化伸展の予防</a><br>脳の動脈硬化は、脳血流量の低下を招き、痴呆を生じる原因のひとつとなる。禁煙・基礎疾患(高血圧や糖尿病など)の治療・適度な運動などにより、動脈硬化の伸展予防に努める。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br><a name="a7-01" class="anchor"></a><ol><a name="a6-01" class="anchor"></a><li><strong>前頭前野の機能維持</strong><br>早期痴呆(前頭前野領域の機能低下)の段階で診断を受けることが重要です。<br>一般的な症状としては創意工夫する能力が低下してきます。<br>例えば、それまでは好奇心旺盛だった人が、新しいものにチャレンジすることができなくなり、今まで経験のない料理を作ったり、経験したことのない作業(ガーデニングなど)ができなくなったりします。また、同時にふたつのことを行うことができなくなります。例えば、お湯を沸かしながら洗濯していると、どちらかが疎かになり、やかんを焦がしたりします。こういった状況が長く続くと、治療になかなか反応しにくい中等度〜重度の痴呆になります。<br>脳の活性化訓練は、この前頭前野の機能を維持する目的で行います。<br>考え方としては、ちょうど足腰の筋力低下を防ぐためにウォーキングやジョギングをするのと同じ発想です。<br>具体的には、計画・立案・実行・反省などの一連の作業を行うことで、興味をもってできる趣味があれば、それが最適です。与えられた作業をこなしていくだけでは駄目で、自分自身で考えて創意工夫することが大切です。ガーデニング・俳句・囲碁など決まりきった展開にならないものが良いと考えられています。</li><br><a name="a7-02" class="anchor"></a><li><strong>動脈硬化伸展の予防</strong><br>脳の動脈硬化が進むと、脳細胞が健康に生きていくために必要な血液量が充分に供給できない状態になります。<br>これにより脳細胞が死滅していき、痴呆になる可能性が高くなります。<br>動脈硬化を促す要因としては、高血圧・糖尿病・喫煙・高脂血症があり、これらを正常化することで動脈硬化の予防、ひいては痴呆の予防につながります。</li></ol></div><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 02 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0010 02 02<br />『 頭痛 』<br />平成16年06月12日(土)<br />頭痛を経験したことのない人はほとんどいないでしょう。頭痛はごくありふれた症状のひとつで、二日酔いや風邪の時にも出現します。その他にも、いろいろな原因で頭痛は出現してきますし、慢性的な頭痛に悩まされている人も大勢います。どのような頭痛の場合に医療機関を受診すべきか? 一般的な症状だけに、判断もつけ難いものです。<br><br><ol><li><a href="#a1">頭痛とは?</a></li><li><a href="#a2">頭蓋の構造</a></li><li><a href="#a3">頭蓋内に原因のある頭痛</a></li><li><a href="#a4">頭蓋内に原因のないもの</a></li><li><a href="#a5">頭痛の治療</a></li><li><a href="#a6">MRIの役割</a></li></ol><br><br><a name="a1" class="anchor"></a><h2>01 頭痛とは?</h2>頭痛とは、ある一定時間続く頭部領域の痛み、あるいは数秒間の痛みが短時間内に反復することをさします。<br>様々な原因により頭痛は生じますが、大きく分けて、頭蓋内(頭の骨の中)に原因がある場合と、それ以外に原因がある場合に分かれます。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />痛みは知覚神経が刺激され、この興奮が脳に伝わることで痛みとして認知されます。<br />頭部領域では、皮膚や筋肉内では多くの知覚神経が存在します。しかし頭蓋内は、脳をつつむ硬膜や太い血管周囲には知覚神経が多く存在しますが、脳内にはほとんど存在しません。<br />意外に思われるかもしれませんが、脳そのものは痛み刺激に対して鈍感なのです。<br />また、頭蓋内には、その内部の圧を一定に保とうとするシステムが存在します。ゆっくりと大きくなる良性の脳腫瘍の場合では、このシステムが充分に機能する時間的余裕があり、腫瘍が驚くほどの大きさになるまで頭痛が生じないこともしばしばあります。<br />一方、脳内出血やクモ膜下出血の場合では、このシステムが働く時間的余裕がなく頭蓋内圧は急激に上昇し、激しい頭痛が生じます。頭蓋内圧が上昇することで、硬膜や血管周囲の知覚神経が刺激されるためです。<br />また、頭部前方部の痛みや頭蓋内の痛み刺激の多くが、三叉神経を通して脳内に伝わりますが、この神経は顔面にも広く分布しています。<br />このため顔面領域の痛みが頭痛として知覚されることもあります(アイスクリーム頭痛や副鼻腔炎など)。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"></a><h2>02 頭蓋の構造</h2><img src="img/vol02gazou12.jpg" class="mx-auto d-block img-fluid"><br><br><a name="a3" class="anchor"></a><h2>03 頭蓋内に原因のある頭痛</h2><ol><li>クモ膜下出血</li><li>高血圧性脳出血</li><li>脳梗塞</li><li>脳腫瘍<li>慢性硬膜下血腫</li><li>感染</li></ol><br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br><ol><li><strong>クモ膜下出血</strong><br>クモ膜下腔に出血した状態。外傷以外では、脳動脈瘤破裂による出血がほとんどです。突然激しい頭痛が生じ、『突然ハンマーで殴られたような痛み』と表現されたりします。脳動脈瘤破裂は死亡率も高く、救急車搬送の対象です。</li><br><li><b>高血圧性脳出血</b><br>高血圧のため、脳深部にある細い動脈が破れ出血します。出血の大きさにもよりますが、通常は急激に頭蓋内圧が上昇するため頭痛が生じます。片側の手足の動きが悪くなる片麻痺を伴っていることが多く、早急な治療を要します。救急車搬送の対象者です。</li><br><li><b>脳梗塞</b><br>通常の脳梗塞では頭痛は生じません。広い範囲で脳梗塞が起きると、脳浮腫が生じて頭蓋内圧が高くなり、頭痛の原因となることはありますが、この場合一般的には意識障害を伴っており、尋常な状態ではないことは一目で分かります。勿論、緊急事態です。</li><br><li><b>脳腫瘍</b><br>良性・悪性を問わず、腫瘍のできる場所によっては、比較的小さい段階から頭痛を生じることがありますが、この場合、多くは水頭症(脳内の脳室というところに脳脊髄液が過剰に貯留した状態)を伴っています。頭痛は激しく、嘔気・嘔吐を伴うことも多いものです。<br>一般的には、悪性脳腫瘍では周囲の脳に浮腫が生じて頭蓋内圧が高くなり、頭痛を伴うことが多く、良性の場合は何らかの他症状(片麻痺や言語障害など)が出現しても頭痛のないことがあります。いずれにしても、軽度から中等度の頭痛であることが多いので、気になる症状を伴っているようであれば、早めに専門医を受診した方が賢明です。</li><br><li><b>慢性硬膜下血腫</b><br>硬膜とクモ膜の間のスペースに血腫(血液の塊)が形成された状態です。通常、硬膜とクモ膜の間にはあまりスペースがありませんが、高齢者になると脳は萎縮しこのスペースが広がることがあります。この広くなったスペースに、軽微な外傷(壁に頭をぶつけたなど)が原因で小さな出血が生じ、これが時間をかけて(通常1〜2ヶ月)徐々に大きな血腫となり、脳を圧迫するようになります。症状は、痴呆様の症状が主ですが、軽度の頭痛を訴えることも多々あります。早目に脳神経外科を受診し、治療を受けるべきです(比較的簡単な手術でほとんどの方が元の状態に戻ります)。</li><br><li><b>感染</b><br>頭蓋内に細菌やウィルスが侵入し、感染を生じると脳炎や髄膜炎になります。脳炎では、発熱とともに激しい頭痛が生じ、やがて意識障害が出現してきます。早急に治療を開始しなければいけない状態です。髄膜炎では軽症から重症のものまでありますが、激しい頭痛と発熱が生じます。解熱剤を使用して解熱しても頭痛が続くようであれば、髄膜炎の可能性があります。</li></div><br><br><a name="a4" class="anchor"></a><h2>04 頭蓋内に原因のないもの</h2><ol><li><a href="#a4-01">片頭痛(血管性頭痛)</a></li><li><a href="#a4-02">筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)</a></li><li><a href="#a4-03">群発性頭痛</a></li><li><a href="#a4-04">緊張性-血管性頭痛</a></li><li><a href="#a4-05">後頭部神経痛</a></li><li><a href="#a4-06">三叉神経痛</a></li><li><a href="#a4-07">その他 (発熱・高血圧・副鼻腔炎)</a></li></ol><div class="kaisetu"><a name="a4-01" class="anchor"></a><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><li><b>片頭痛(血管性頭痛)</b><br>頭皮にある動脈に強い血管拡張が生じ、血管拍動に一致した『ズキンズキン』とした頭痛が生じます。痛みは、側頭部ついで後頭部に多く、通常一側性で持続時間は4〜24時間。家族歴も濃厚です。頭痛に伴って光視症(フラッシュライトのような光が視野の一部に出現する状態)が出現することが多く見られます。</li><br><a name="a4-02" class="anchor"></a><li><strong>筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)</strong><br>ほとんどが両側性で、主に後頭部に圧迫されるような張ったような鈍痛が持続します。女性に多く、精神的ストレスとの関連もみられます。後頚筋群(首から後頭部にかけての筋肉)の持続的収縮が主因です。慢性頭痛の多くはこのタイプで、アルコール飲用で頭痛は改善します(血管性頭痛では悪化)。</li><br><a name="a4-03" class="anchor"></a><li><strong>群発性頭痛</strong><br>主として男性にみられ、一側の眼の奥および眼の周りに激しい持続性の痛みが2時間程続き、『燃えるような』あるいは『刺すような』痛みと表現されます。年に1〜2回程度の発作頻度であることが多く、頭痛と同時に頭痛側の眼の充血・流涙・一側のまたは両側の鼻閉や鼻汁などが出現します。</li><br><a name="a4-04" class="anchor"></a><li><strong>緊張性一血管性頭痛</strong><br>上記の1)と2)が混在するタイプの頭痛。緊張性頭痛の1/4は片頭痛の症状も有し、両者の性格をもつ混合型と考えられています。</li><br><a name="a4-05" class="anchor"></a><li><strong>後頭神経痛</strong><br>後頭部皮膚に分布する神経の神経痛で、後頭部領域の『ピリッ』とした痛みが数秒間続きます。多くは原因不明ですが、頚部脊椎病変や痛風などが原因となる場合もあります。</li><br><a name="a4-06" class="anchor"></a><li><strong>三叉神経痛</strong><br>顔面の知覚を脳に伝える神経が、三叉神経です。この神経が過敏状態になるのが三叉神経痛です。三叉神経はその名の通り三つの神経からなり、第Ⅰ枝は眼周囲および額、第Ⅱ枝は上顎、第Ⅲ枝は下顎、の知覚を脳に伝えています。この内、第Ⅰ枝領域の痛みは、頭痛として自覚されることも多いのです。</li><br><a name="a4-07" class="anchor"></a><li><strong>その他(発熱・高血圧・副鼻腔炎・緑内障など)</strong><br>発熱では頭皮の血管が拡張し、拍動性の頭痛を生じることがあります。<br>また、高血圧でも後頭部や側頭部領域の鈍痛が起きることがあります。<br>さらに、副鼻腔炎では前頭部から眼周囲の頭痛を生じることがあります。<br>緑内障でも、眼圧の上昇に伴い前頭部を中心とした激しい頭痛を生じることがあります(多くは眼痛を伴いますが自覚されないこともあります)。通常、何らかの視力・視野異常を伴います。</li></ol></div><br><br><a name="a5" class="anchor"></a><h2>05 頭痛の治療</h2><ol><li><a href="#a5-01">頭蓋内に原因のある頭痛</a><br />原因疾患の治療</li><li><a href="#a5-02">片頭痛・群発性頭痛</a><br />種々の鎮痛剤、血管作動性薬剤の投与</li><li><a href="#a5-03">筋収縮性頭痛</a><br />・種々の鎮痛剤・筋弛緩剤の投与 ・物理療法による頭頚部筋群の緊張状態改善</li><li><a href="#a5-04">その他</a><br />原因疾患の治療、あるいは鎮痛剤投与</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><a name="a5-01" class="anchor"></a><li><strong>頭蓋内に原因のある頭痛</strong><br>原因疾患治療の治療を行うことで、多くの頭痛が改善します。ただ、複数の疾患がある場合は一方が治癒しても頭痛が続くことがあります。</li><br><a name="a5-02" class="anchor"></a><li><strong>片頭痛・群発性頭痛</strong><br>いずれもいわば体質的なものであるため、根本的な治療法はない。痛い時には、鎮痛剤あるいはトリプタン製剤(血管拡張を防ぐ薬)内服で、多くの場合頭痛は消失します。<br>頭痛を繰り返す場合は、予防薬の連日内服で頭痛発作の頻度が抑えられる場合もあります。<br>日常生活上では、皮膚の血管に影響を与えるような食物や嗜好品(アルコール・コーヒー・煙草など)を避ける。<br>温度差の激しい環境(夏場のクーラー・サウナなど)を避けることで頭痛発作の頻度を低下させることも可能です。</li><br><a name="a5-03" class="anchor"></a><li><strong>筋収縮性頭痛</strong><br>後頚部筋群の過緊張状態が原因ですので、これをやわらげることが頭痛軽減に役立ちます。睡眠時に筋肉は休息するので、不眠が続くと頭痛の原因になります。<br>また、高枕をすると後頚部の緊張がなかなか取れず、頭痛が長引く原因になります。<br>さらに、筋肉は冷やすと硬くなります。クーラーが直接首のあたりにあたると後頚部筋群の緊張が増大します。筋肉を和らげるためには、温めてマッサージすることが最も効果的です。<br>普段の日常生活では上記のことに注意し、それでも痛みが続くようであれば筋肉を和らげるお薬(筋弛緩剤や安定剤)や睡眠薬の内服で頭痛がおさまることもあります。それでも痛みが続くようであれば、鎮痛剤の内服を行います。<br>やっかいなのは、混合型頭痛で、片頭痛がよくなっても筋収縮性頭痛が残ったり、逆の場合もあります。自分自身である程度頭痛の性状を見極め、適切な対応をできるようにすることが理想的です。</li><br><a name="a5-04" class="anchor"></a><li><strong>その他</strong><br>副鼻腔炎や緑内障では、現疾患の状態の改善とともに頭痛も消失します。<br>緑内障は、失明の原因になりますので早急な眼科的治療が必要です。</li></ol></div><br><br><a name="a6" class="anchor"></a><h2>06 MRIの役割</h2><ol><li><a href="#a6-01">頭蓋内疾患の有無の検索</a><br />頭痛の多くは、頭蓋内に原因のないものである。<br />一方、頭蓋内疾患の症状で一番多いのも頭痛である。</li><li><a href="#a6-02">治療法の選択</a><br />頚椎病変を含めた検索で、確実な治療法を選択する。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><ol><a name="a6-01" class="anchor"></a><li><strong>頭蓋内疾患の有無の検索</strong><br>頭痛を訴える方の多くは、先述したとおり頭蓋内に原因のない方が大多数です。しかし、頭蓋内疾患の症状で一番多いものも頭痛です。慢性頭痛の方でも、今までと性状の違う頭痛がしたら、あるいは麻痺やめまいなどの他の症状を伴っていたら、早急に脳神経外科専門医の診察を受け、MRI検査を受けた方が賢明です。</li><br><a name="a6-02" class="anchor"></a><li><strong>治療法の選択</strong><br>頚椎 病変が原因で筋緊張性頭痛が起きることがあります。MRI検査は頚椎 病変の診断にも最も役立つものです。</li></ol></div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00 01 http://clinic-kuda.com/seminar/index.cgi?pg=0005 01 01<br />『 脳梗塞 』<br />平成16年05月26日(土)<br />梗塞は、虚血(細胞が生きていくために必要な血液が足りない状態)が原因で生じます。脳梗塞や心筋梗塞が有名ですが、肺・腎臓・肝臓などの臓器でも生じます。<br />臓器によっては梗塞によって死滅した細胞が再生されることもありますが(肝臓など)、脳では梗塞になって死滅した細胞が再生することはありません。<br><br><ul><li><a href="#a1"> 01 脳梗塞とは?</a></li><li><a href="#a2-1"> 02 脳梗塞の病型</a><ul><li><a href="#a2-1"> 1.アテローム血栓性脳梗塞</a></li><li><a href="#a2-2">2.ラクナ梗塞</a></li><li><a href="#a2-3">3.心原性塞栓症</a></li></ul></li><li><a href="#a3">03 脳梗塞の治療</a><ul><li><a href="#a3-1">1.内科的治療</a></li><li><a href="#a3-2">2.脳梗塞の予防</a></li></ul></li><li><a href="#a4">04 MRI検査の役割</a></li></ul><br><a name="a1" class="anchor"> </a><h3>01 脳梗塞とは?</h3>頭蓋内血管あるいはその根元にあたる頚動脈や椎骨動脈が、動脈硬化のために閉塞(完全に詰まること)、または狭窄(血管内が細くなること)し、脳細胞を栄養する血液量が不足し、細胞死に至ること。 障害される脳の範囲により、出現する症状や重症度に違いがあり、広範囲の場合は死に至ることもある。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />頭蓋内(脳内)血管は、大脳前半部に血液を供給する左右の内頚動脈系と大脳後半部・小脳・脳幹に血液を供給する椎骨動脈系に分かれます。<br />顎の部分で総頚動脈が内・外の頚動脈に分かれ、内頚動脈が頭蓋骨を貫いて脳に達します。その後、前大脳動脈・中大脳動脈に枝分かれして脳に分布します。<br />椎骨動脈は、頚椎に沿って上行して頭蓋骨底部に達し、左右が合して一本の脳底動脈になって脳幹・小脳の血管を枝分かれした後、最終的には左右の後大脳動脈になります。<br />脳梗塞では、血管の閉塞がどの部位で起きるかにより、症状や重症度が違ってきます。一般的に、閉塞する血管が太いほど重症となる傾向があります。<br />たとえば、中大脳動脈は大脳の約2/3に血液を供給しており、これが根元に近い太いところで閉塞すると、死亡率が高く、生存しても重度の障害が残ることがほとんどです。<br />また脳底動脈が閉塞すると脳幹が障害され、意識障害・四肢麻痺が生じ、極めて死亡率の高い状態となります。</div><br><br><a name="a2" class="anchor"> </a><h3>02 脳梗塞の病型</h3><a name="a2-1" class="anchor"> </a><b>1.アテローム血栓性脳梗塞</b><br>頭蓋外あるいは頭蓋内の主幹動脈(太い血管)に動脈硬化が生じ、血管壁に血栓(血の固まり)が形成され、それが血管を閉塞することにより生じる脳梗塞。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />動脈硬化は、動脈壁に脂質や血栓が堆積して壁が厚くなる状態で、進行すると血液が通過する血管内腔が狭くなってきます。これが一定レベル以上となると、脳が必要とする血液が不足し、脳梗塞になります</div><br><br><a name="a2-2" class="anchor"> </a><b>2.ラクナ梗塞</b><br />脳内の主幹動脈から枝分かれした細い穿通枝動脈が閉塞することにより生じる小梗塞。最も多いタイプの脳梗塞で、無症状のことが多い。血管閉塞の原因は、加齢・高血圧・糖尿病を背景にした動脈硬化である。<br /><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />ラクナ梗塞は、脳の深いところにできる小さな梗塞で、大きさは1センチ以下のことがほとんどです。<br />梗塞ができる部位にもよりますが、多くは症状のない無症候性脳梗塞です。脳内の太い血管から脳を貫く細い動脈(通常1ミリ以下)が、動脈硬化が原因で閉塞して生じるものです。<br />このタイプの動脈硬化に最も悪影響を与えるのは、年齢・高血圧・糖尿病・喫煙・高コレステロール血症で、動脈硬化に与える影響の強さもこの順になっています。<br />したがって、年齢とともにラクナ梗塞の頻度は高くなり、80歳代ではほぼ100%、70歳代で50%、60歳代で20〜30%に認められるようになります。</div><br><br><a name="a2-3" class="anchor"> </a><b>3.心原性塞栓症</b><br />心臓弁膜症や不整脈などが原因で、心臓内に血栓(血の固まり)ができ、それが血流に乗って脳内の血管を閉塞することにより生じる脳梗塞。急激に発症し、重症となることが多い。<div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />心臓にある弁の動きに異常があると、弁そのものや心臓内に血栓ができやすくなります。 また不整脈があると、心臓の一部の動きが悪くなり、血栓が生じやすくなります。<Br />この心臓内や弁にできた血栓が何らかの原因で剥がれ、血液の流れに乗って脳内の血管を閉塞させてしまうのが心原性塞栓症と言われるタイプの脳梗塞です(脳塞栓ともいいます)。<br />一般的に、脳内の太い血管(内頚動脈や中大脳動脈)が突然に閉塞するため、意識障害や重度の片麻痺などが急激に出現し、重症となります。</div><br><br><a name="a3" class="anchor"> </a><h3>03 脳梗塞の治療</h3><a name="a3-1" class="anchor"> </a><b>1.内科的治療</b><br />血管閉塞の原因となっている血栓を溶解(溶かす)目的で、薬剤の点滴を行ったり、脳神経細胞保護の目的で点滴を行う。 また、脳浮腫(脳の腫れ)を軽減するための薬剤を点滴する。また、状況によっては、直接閉塞した血管に薬剤を注入。<br><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />一旦、脳梗塞が起こってしまうと内科的治療が主体となります。発症後早期(3時間以内)であれば、血栓溶解剤(血栓を溶かす薬)を直接動脈内に注入、あるいは点滴することで、死滅しかけた脳細胞を救うことも可能です。<br />また、脳保護薬の投与もある程度の効果があるといわれています。<br />また、脳梗塞が生じると、周囲脳に浮腫を生じたり、血管内の血栓が広がる場合もあり、抗浮腫薬・抗凝固剤・抗血小板療法なども行われます。</div><br><br><a name="a3-2" class="anchor"> </a><b>2.脳梗塞の予防</b><br />血栓ができるのを防ぐ目的で、各種の内服薬を使用。また、高血圧や糖尿病があると、動脈硬化が進みやすく、これらの治療も重要。<br /><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳内血管や頚部内頚動脈に狭窄性病変(血管の細くなった所)がある場合、脳梗塞を起こす危険性が高くなります。<br />このような場合、抗血小板剤や抗凝固剤を内服することで、血栓ができるのを防ぎ、脳梗塞を予防します。<br />また、高血圧・糖尿病・高コレステロール血症では、動脈硬化が進みやすく、これらの治療も重要です。無論、禁煙もすべきです。</div><br><br><a name="a4" class="anchor"> </a><h3>04 MRI検査の役割</h3><ol><li>脳内の無症候性脳梗塞をチェック<br />60歳以上になるとラクナがある可能性が高くなります。状況によっては、治療の必要があります。</li><li>脳内主要血管に閉塞や狭窄がないかをチェック<br />脳内主要血管が狭窄してくると、血栓が形成され脳梗塞を起こす可能性が高く、治療が必要な状態です。</li></ol><div class="kaisetu"><button type="button" class="btn btn-primary" disabled><i class="far fa-thumbs-up"></i> 解 説</button><br />脳は意外に広いもので、小さなラクナが数箇所あっても無症状(無症候)のことが多いものです。<br />しかし、これが数十箇所となると、何らかの症状(麻痺やシビレなど)がほぼ必発となってきます。無症状の時期にラクナを見つけ、必要な予防策をとることで、症状の出現する脳梗塞の予防になると考えられています。<br />またラクナ以外の脳梗塞で比較的広範囲に脳梗塞があっても無症状のこともあります。<br />この場合も、原因を究明し、予防策をとることが重要です。MRIでは、脳内主要血管の描出が可能で、2〜3ミリ程度の太さの血管であれば、閉塞や狭窄の有無の判断がある程度可能です。<br />血管に閉塞や狭窄があると、脳梗塞を起こす危険性が高く、抗血小板剤や抗凝固剤内服による予防が重要です。</div><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br /><br /> 2024-04-28T14:34:00+09:00